ロバート・フリップの初ソロ・アルバムである 『 Exposure 』 は難産な作品だった。
契約の問題でヴォーカルを差し替えたり、楽曲自体を完成させる過程でジョン・ウェットンやイアン・マクドナルドの演奏を除いたりと、本来フリップが意図したのと異なる作品としてリリースされたと言っても良い。 それが故に、フリップは edition を追加しながら再発をし、最終的には 『 Exposures 』 というボックスでその全過程を発表している。
本ページでは、その 『 Exposures 』 リリース前から DGM Live からダウンロード販売されていた 『 Exposure 』 関連音源をまとめている。
ただ、DGM Live でのリリースされた単位でまとめているものの、そこに記載されている日付は必ずしも正しくないと推測される。 特に1977年12月以降については、12月に6日、1月に1日しかレコーディングしていないとは思えず、「その辺りの数日間」と捉えるのが妥当だと思う。
また 『 Exposures 』 での演奏者のクレジットと、DGM Live からのリリース作品では演奏者のクレジットが異なっているところがある。 具体的には DGM Live ではジョン・ウェットンの演奏とクレジットされていた多くの楽曲が、トニー・レヴィンによる演奏とクレジットされている。 DGM Live の解説にこの2人のどちらの演奏か判断に迷っている旨の記載があるのは1977年12月1日の ” Disengage ” だけなのだが、『 Exposures 』 ではその12月1日に加え、12月5日の4テイクの ” Disengage ” と12月16日の全曲が、ウェットンではなくトニー・レヴィンとクレジットしている。
このように日付と演奏者に曖昧なところがあるのだが、DGM Live でのリリース内容に準拠して本ページはまとめていく。
February 6, 1977 Mary
Robert Fripp - Guitar
『 Exposure 』 の為のセッションに入る10ヶ月前、フリップが自宅で録音したテイクで、後の ” Mary ” の元となるギターを演奏している。
『 Exposure 』 関連の最初期の音源である。
本楽曲は、Mr Stormy's Monday Selections Vol.2 にも収録されている。
(追加:2022年8月25日)
July 15, 1977 Frippertronics
Robert Fripp - Guitar
フリッパートロニクスの初期音源
『 Exposure 』 の為にレコーディングしたかというと、その辺りの確証は無い。 ループ音も、ギター・ソロもそこはかとない演奏で手探り感が強い楽曲である。
本楽曲は、Mr Stormy's Monday Selections Vol.1 にも収録されている。
(追加:2022年8月25日)
December 1, 1977 Early Exposure Rehearsals
Robert Fripp - Guitar
John Wetton - Bass
Phil Collins - Drums
DGM Live の解説にはこの2曲のベースがトニー・レヴィンの可能性があると触れているが、ここではクレジット通りベースはウェットンとして話を進めていく。
ウェットンのベースとしてジョン・ウェットンとフィル・コリンズという組み合わせ自体は始めてではないが、この後のセッション程の丁々発止はされておらず、未だ手探りの状態に思える。
” Disengage ” は 『 Exposure 』 収録のオリジナルとの関連性は殆どないが、” Red ” を意識したであろうウェットンのベースが面白い。 ” North Star ” もオリジナルに近いところもあるが、どちらかと言えば3人の音合わせに近い内容である
2曲とも Mr Stormy's Monday Selections Vol.1 にも収録されている。
(追加:2022年8月25日)
December 2, 1977 Early Exposure Rehearsals
Robert Fripp - Guitar
John Wetton - Bass
Phil Collins - Drums
” North Star ” に近いタイトルの ” Northish Star ” を含め3曲とも、3人による音合わせに近い内容
ただ、” Riff And Roll ” だけはテンションの高い演奏で、20秒程度の短さが残念である。 唐突に始まって終わるところから、セッションの中の一断片なのかもしれない。
3曲とも Mr Stormy's Monday Selections Vol.2 にも収録されている。
(追加:2022年8月25日)
December 3, 1977 Monitor Mixes
Robert Fripp - Guitar
John Wetton - Bass
Phil Collins - Drums
” Groove ” というタイトルを後付けしたのも納得できる7分超のセッション音源
最低限の決め事だけで始めたであろうこのセッションから曲を創り上げようとする意図は感じられないが、3人の間にケミストリーが発生していることがよく判る。 フリップ自身もソロ・アルバムの為の楽曲のことよりも、3人で演奏することの楽しさが優先したのではないかと思える。
ウェットンとコリンズのスケジュール上無理だったに違いないが、このトリオでのライヴは観たかった。
本曲は Mr Stormy's Monday Selections Vol.3 にも収録されている。
(追加:2022年8月25日)
04 December 1977, Monitor Mixes
John Wetton - Bass
Phil Collins - Drums
ウェットンとコリンズによる、” Bass And Drum Groove” 。 クレジットにフリップの名前は無いが、時折微かにギターの音も聴こえる。
コリンズに挑発されたウェットンが異型のうねりを展開する楽曲である。 挑発するといっても爆音ドラムでリズム・チェンジを繰り返すのではなく、テンポも早くなく派手さもないシンプルな演奏を執拗に続けて、「ほらほら、このリズムに合わせて俺のこと唸らせてみろよ。 地を這うようのベース・ソロなんかで誤魔化すんじゃねぇぞ」と仕掛けているように思える。 そしてウェットンは「こんな感じ軽く合わせればいいんでしょ」といった爽やかな笑顔を見せながら怒涛の演奏を続けたに違いない。
本曲は Mr Stormy's Monday Selections Vol.4 にも収録されている。
(追加:2022年8月25日)
04 December 1977, Monitor Mixes
Robert Fripp - Guitar
John Wetton - Bass
Phil Collins - Drums
トリオによる3分弱の短い楽曲
息をつかせぬリズム・チェンジ、隙間を埋めきって余りあるベース・ソロ、そしてテクニカルなフリップのギター。 この3人なら絶対凄いことをやるだろう、と想像するフォーマットでの演奏なのだが、その期待を大きく上回る内容である。
本曲は Mr Stormy's Monday Selections Vol.2 にも収録されている。
(追加:2022年8月25日)
December 5 1977, Monitor Mixes
Robert Fripp - Guitar
John Wetton - Bass
Phil Collins - Drums
同じベースのモチーフを使った、タイトル通り遅い楽曲と早い楽曲
『 Exposure 』 に使われることは無かったが、曲作りを意識したような演奏である。
2曲とも Mr Stormy's Monday Selections Vol.3 にも収録されている。
(追加:2022年8月25日)
5 December 1977 Disengage
Robert Fripp - Guitar
John Wetton - Bass
Phil Collins - Drums
前作品まではフリップ、ウェットン、コリンズによる音合せ、セッションであったが、本作品は『 Exposure 』 収録曲の初期音源となる。
I、II、III の次が IV と V を飛ばして なのは仮タイトルだけにそれほど意味が無いと思うが、4曲は曲の進化形態を収録しているのではなく、ある程度こなした後、別アレンジを試しているように思える。
個人的にはフリップのソロをフィーチャーした II が好みである。
なお、これ以降の楽曲は Mr Stormy's Monday Selections に収録されなくなる。
(追加:2022年8月25日)
16 December 1977
Robert Fripp - Guitar
John Wetton - Bass
Narada Michael Walden - Drums
ドラムがフィル・コリンズからナラダ・マイケル・ウォルデンに代わった音源集。
『 Exposure 』 に収録されている ” Breathless ”、” I May Not Have Had Enough Of Me But I've Had Enough Of You ”、” NYC ” を構築していく上での演奏がそれぞれ複数テイク収録されている。 徐々にアルバム・テイクに近づいていく、という過程はみられず、色々なアイディアを試行錯誤しながらアルバム・テイクが完成されたように思える。
一方 ” Hitting The Groove Factor ”、” Toy Fact Hither ”、” 353 West 48th Street ”、” Fat Itch Theory ”、” Cry To The Faith ” といった楽曲は、『 Exposure 』 の没テイクというよりもフリップ、ウェットン、ウォルデンによる音合せ、セッションである。 緩急をつけた演奏でセッションに望んだフィル・コリンズに対し、この時期フュージョン分野での活躍が多かったウォルデンは手数がやたら多い演奏を繰り出しており、その対比が面白い。
” Ballad ” は、後のフリップ、レヴィン、マロッタでも演奏されることになる。
(追加:2022年8月25日)
18 January 1978
Robert Fripp - Guitar
Tony Levin - Bass
Jerry Marotta - Drums
フリップ、レヴィン、そしてジェリー・マロッタによる音源集。
” Chicago ” に至る前の ” Chicagoish ” と、” North Star ”、” You Burn Me Up ”、そして ” Häaden Two ” を構築していく上での演奏がそれぞれ複数テイク収録されている。
『 Exposure 』 を初聴した時に一番驚いたのが ” You Burn Me Up ” の所謂ロックンロールのリフなのだが、ここでは 『 Exposure 』 以上にロックン・ロールなギターを堪能することができる。
アルバムに収録されなかった ” Slow Stomp ” と ” Ballad ” の内、ウェットンとウォルデンとの組み合わせでも上手くいかなかった ” Ballad ” はどうしようもなかったのかもしれないが、” Slow Stomp ” の方をもう少し展開してほしかった。
” Groove ” は、1977年12月2日のウェットン、コリンズとのセッションとは同名異曲。
(追加:2022年8月25日)
John Wetton
Robert Fripp - Guitar
John Wetton - Bass
Phil Collins - Drums
2017年1月31日に亡くなったジョン・ウェットンへのトリビュートとして DGM Live がリリースした作品。 『 Exposure 』 のレコーディング・セッションでの音源がコンパイルされている。
作品タイトルが John Wetton で、楽曲のタイトルも John Wetton。 『 Exposure 』 について述べるべきところであるが、本曲を聴いていると亡くなったジョン・ウェットンに対する思いで一杯になってしまう。
(追加:2022年8月25日)