1980
Shandi : Shandi
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Pat "the wak" Mastelotto drums
マステロットの最初期のセッションを収録した作品。
マイク・チャップマンによる新レコード・レーベルからリリース、とそこそこの話題性もあったのだが売れなかったのは、中途半端なニュー・ウェーヴにまとまったその音の作りに起因する。
日本盤帯に記載された「ロス出身のパラノイア・ギャル、シャンディ デビュー」と時代感は満載だが何を言っているのかわからないキャッチが、その内容を象徴している。
当時25歳のマステロットにしてみればメジャーへの足がかりになればよかったのだが、その機会は
Mr.ミスターに参加するまで暫くかかることになった。
シャンディはその後は大ヒットした映画 『 フラッシュダンス 』
のサントラに参加(踊りの途中で水をかぶるシーンのバック)しているが、そこにノン・クレジットでマステロットが参加している可能性は無い。
(追加:2016年6月10日)
1983
One Night With A Stranger : Martin Briley
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Pat Mastelotto : Drums
グリーンスレイドのラスト・アルバム 『
Time And Tide 』 でベースとギターを演奏していたマーティン・ブライリーのソロ・アルバム。
元グリーンスレイドとはいうものの、プログレ臭はゼロ。 80年代前半という時代を反映した思いっきりの産業ロックである。
ただその思いっきり度は激しく、メロディ、アレンジとも秀逸な出来である。
じゃあ何故売れなかったのか、歴史に残らなかったかというと、曲も声もどこかで聴いたことがあるような感じでパクったというより没個性の結果なのだと思う。
個性というものが要求されないこうした音に上手くハマっていることがマステロットにとって良いことなのかわからないが。
(追加:2016年11月10日)
1984
All I Need : Jack Wagner
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Drums : Pat Mastelotto
アメリカの俳優、ジャック・ワグナーのアルバムに、マステロットの初期のセッションが収録されている。
ビルボードで2位にまで上がったシングル ” All I Need ”
とその他の楽曲、といった構成のアルバムで、当時ほぼ無名のマステロットがクレジットされているのは当然その他の楽曲の方。
その他の楽曲の方は、「俳優のお遊びじゃないよ、実は気骨あるロッカーなんだよ」という陳腐な見せかけの主張が鼻につくのだが、無名のセッション・マンであったマステロットはそんなコンセプトに見事に応え、元気いっぱいなドラムを叩いている。
(追加:2016年4月25日)
I Wear The Face : Mr. Mister
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Richard Page - Bass and Lead Vocals
Steve George - Synthesizers, Saxophone and Vocals
Steve Farris - Guitar
Pat Mastelotto - Drums
マステロットが在籍していた Mr.
ミスターのデビュー・アルバム。
軽めのリズムの上に、プリセット音そのままのようなデジタル・シンセと爽やかに歪んだギターが絡む80年代そのままの音。 大ヒットした次作
『 Welcome To The Real World 』
と路線は同じだが、そこまで売れなかったのは制作にあまり金をかけなかったためか。 とにかく音がとっても安っぽい。
マステロットの演奏は打ち込みのパーカッション音と競演したり、人力のシンセ・ドラム(シモンズ?)を叩いたりと、機材とフォーマットの変化こそあれ、実は今のクリムゾンでやっていることとあまり変わらなかったりする。
彼にしてみればそれほど恥ずかしい過去、無かったことにしたい経歴ではないのかもしれない。 アイドル風に無理したルックスさえ除けば。
(追加:2006年11月25日)
Warrior : Scandal featuring Patty Smyth
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Pat Mastelotto - Drums On " Only The Young "
スキャンダルのセカンド&ラスト・アルバム。
80年代王道のパワー・ポップ風の音で、アルバムもヒット、シングル ” The Warrior ”
も全米トップ10入りと順調だったにもかかわらず解散してしまったのは、後にテニス・プレイヤーのジョン・マッケンローと結婚したヴォーカルのパティ・スマイスの名前だけが目立つようになったことにあるのだと思う。
マステロットは、ジャーニーの楽曲 ” Only The Young
” に参加している。 ジャーニーの楽曲でドラムを叩く、という行為は、当時のマステロットにしてみれば楽しくて楽しくしょうがない経験だったのだろう。
(追加:2016年4月25日)
1985
Cock Robin : Cock Robin
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Additional Musicians : Pat Mastelotto : Percussion
バンド名からどうしてもパタリロを思い浮かべてしまうクック・ロビンのファースト・アルバム。
スティーヴ・ヒレッジがプロデュースしていることから思いっきりスペイシーな音を期待してしまうのだが、オシャレを気取った凡庸な作品に過ぎない。
本国アメリカでよりヨーロッパでの方が売れたらしいが、単に小さなマーケットで集中して活動したからに過ぎない。
正式ドラマーがいる中、マステロット含め3名がパーカッションとしてクレジットされている。
マステロットらしさ、がこの時期あったのかわからないが、どの曲で演奏しているのか判別不能。
(追加:2015年12月25日)
Martika's Kitchen : Martika
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少し前に流行ったマンガ 『 デトロイト・メタル・シティ 』
を、私は今でも好きだ。 オシャレを気取ったウンコ以下の音楽を一刀両断するクラウザーさんは正しいと、思い続けている。
このマルティカなるミュージシャンの音楽をクラウザーさんだったらどのように切り捨ててくれたか、考えただけでも興奮してくる。
ファースト・アルバムは大ヒットしたらしいが、このセカンド・アルバムはセールス的にも大敗、きっとこれは時代を遡る能力すら持つクラウザーさんによる画策であると信じている。
駆け出し時代とは言え総じて80年代のマステロットのセッション活動にろくなものはないが、その中でも本作品への参加はマステロットにしてみても汚点に違いない。
(追加:2016年4月25日)
Welcome To The Real World : Mr. Mister
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Richard Page : Lead Vocals / Bass
Pat Mastelotto : Drums
Steve Farris : Guitar
Steve George : Keyboards / Vocals
” Kyrie
” と ” Broken Wings ” という2曲の全米No.1
ヒットを含む、Mr.ミスター
のセカンド。 本アルバム自体も大ヒットした。
シンセが多用されたAORというか、豪快さがない産業ロックというか、80年代におけるヒット曲の王道を極めたような作品。 特に日本では
” Kyrie ”
がヒットし、ラジオでもよく放送されていた。
さて、そんな全米No.1
のタイトル・フォルダーであるマステロットの演奏だが、恐ろしい程の没個性。 この後XTCの作品で叩いたり、クリムゾンに加入することになるとは、当時誰一人想像できなかったと思う。
2004年夏、ハピネット・ロビンがお菓子に8cmのシングルをつけた食玩シリーズ 「洋楽パラダイス Vol.1」 で ” Kyrie ”
が取り上げられた。
(追加:2005年11月10日)
Nick Gilder : Nick Gilder
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Drums - Pat Mastelotto
綱引きでもしてるのかよ、と突っ込みたくなるジャケットに包まれたニック・ギルダーのソロ・アルバム。
一人産業ロックという点では、同じくマステロットが参加しているマーティン・ブライリーの作品と同じなのだが、そのクオリティは輪をかけて下廻っている。
本作品は、Mr.ミスターの 『 Welcome To The Real World 』 と同じ1985年にリリースされている。
大ヒット・アルバムと並行して、地味なセッション活動を行うマステロット。 この手の音のバックで叩くのは性に合ってるように思える。
(追加:2016年11月10日)
Contact : Pointer Sisters
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Mr.ミスター関連メンバーが、曲作りや演奏に参加したポインター・シスターズの作品。
本作がリリースされた1985年には 『 Welcome To The Real World 』
もリリースされており、Mr.ミスターというかリチャード・ペイジにとってこの世の春を謳歌していた頃であり、その勢いを借りた作品と位置づけることができる。
Mr.ミスターとポインター・シスターズというとミス・マッチのようにも思えるが、この時期のポインター・シスターズはソウルフルさが殆ど感じられない量産音楽でああり、その観点において共通点を見出すことができる。
マステロットは演奏で3曲、曲作りで2曲参加しているが、いずれもシングル化されていない。
セッション料がテンポラリーに入ったかもしれないが、彼の財政状態を恒常的に向上させるのには寄与していない。
(追加:2016年4月25日)
1986
Can't Hold Back : Eddie Money
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シングル・カットされた ” Take Me Home Tonight ( Be My Baby ) ” とともに大ヒットしたエディ・マネーの作品。
ロックでもポップスでもなく、なんとなく中途半端なポジショニングだったマネーが、その曖昧な位置づけのまま花を咲かせることができたのは当人にとって幸せだったんだと思う。
パット・マステロットは、” One Chance ” 1曲にだけドラム・プログラミングとしてクレジットされている。 同年に発表されたパティ・ラベルの 『 Winner In You 』 においても、大ヒット曲の ” On My Own ” ではなく、1曲だけドラム・プログラミングとしてクレジットされているのと同じ扱いである。
Mr.ミスターの傘から出たものの、駆け出しスタジオ・ミュージシャンとして便利に使われていたのかもしれない。
(追加:2023年5月10日)
Winner In You : Patti LaBelle
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パティ・ラベルの全米No.1ヒット曲 ” On My Way ” を収録した全米No.1アルバム。
ディスコにもソウルにも縁遠い大学生活を送っていた私でさえも、マイケル・マクドナルドとデュエットした ” On My Own ”
は聴いたことがある程、日本でもそれなりにヒットしている。
マステロットの名はそんな全米No.1楽曲には無く、リチャード・ペイジとともに産業ロックノリの1曲のみにドラム・プログラミングとしてにクレジットされている。
しかも同曲にはドラム奏者が別途クレジットされていることから、音色作りに参加した程度の可能性もある。
(追加:2016年4月25日)
1987
Go On... : Mr. Mister
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Richard Page : lead vocals / bass
Steve George : keyboards / soprano sax / vocals
Steve Farris : guitar
Pat Mastelotto : drums
Mr.ミスターが空中分解する前のラスト・アルバム。
大ヒットしたアルバムの後に芸術性を追求、追求したつもりが大衆性を失っただけで面白くない作品になる、そして解散、というパターンは一般に多いが、本作品はまさにその典型。
個人的には、前作のような80年代の典型的な産業ロックは好みではないが、なにもここまで地味な作品に落ち込まなくてもよかったのではないかと思う。
もう2,3枚前作路線を続け、それなりにヒットしていれば、マステロットもスタジオ・ミュージシャンの道を歩むこともなく、クリムゾンの参加に繋がることもなかったはず。 となると本作品は、クリムゾン史に大きな影響を与えた失敗作、ということになる。
(追加:2007年11月11日)
Weapons Of Love : The Truth
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Pat Mastelotto - drums
パブ・ロック・バンドに所属していたギター&ヴォーカルの人が結成したバンドのセカンド・アルバム。
シンセサイザーでデコレートとされた音がニュー・ウェーヴっぽいが、時折シンセサイザーが無くなるとオーソドックスというか地味な楽曲が明らかになってくる作品。
他のセッションメンバーがクレジットされていないことから、ドラム自体は全篇マステロットが演奏しているものと思われる。
対して話題になった作品ではないが、ニュー・ウェーヴ風にも地味なロックにも対応していることもあり、マステロットの活躍度は高い。
(追加:2016年4月25日)
1988
AQUA : 佐藤 博
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日本とロサンゼルスでレコーディングされた佐藤博の作品。
安っぽいシティ・ポップス風のジャケットで損をしていると思う。
勿論個人的好みの対象外の音楽ではあるが、一つ一つの音の出し方に流石に非常にこだわっていることが良く分かる作品である。
マステロットの参加経緯は不明。
ロサンゼルスでのレコーディング時にスケジュールが空いていたドラマーを探したらマステロットがいた、といった程度だと思う。
実施その程度の没個性な演奏である。
(追加:2016年4月25日)
1989
Oranges & Lemons : XTC
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With a great big sticky thank you to Pat Mastelotto for his Traps and Buttons.
XTC がアメリカでレコーディングした作品。
「通を唸らせるポップなアルバム」をリリースするバンドと化した
XTC に、『 Drums & Wires 』
の頃のような尖った音を期待する人は今はもう少ないと思うが、そんな
XTC の作品の中でもポップ色が最も強い作品。
本作品に、Mr.ミスター解体後のマステロットがセッション・ミュージシャンとして参加している。 ”
Kyrie ”
のような大ヒット曲にクレジットされていないマステロットにとって、この時期セッションへの参加は食っていいくために必至な活動であったと思われる。 本作のような名の通った作品以外にも、この時期多くの作品に参加している可能性があると思う。
ちょっと面白いのは、そのクレジット。 ProjeKct
以降の作品において使われている 「Traps and Buttons」
というクレジットが、既に本作品で使用されている。
(追加:2004年10月25日)
1990
Change Of Season : Daryl Hall John Oates
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Pat Mastelotto : Drums on " Don't Hold Back Your Love "
MTV全盛時代後にホール&オーツが発表した作品。 ” So Close ”
がそこそこにヒットしたものの、内容もチャートでの結果も地味目な作品。
同じ男性デュオのレンブランツでは、その活動初期からサウンドメイクにまで関与していたマステロットだが、ホール&オーツとなるとそうはいかず、1曲のみのセッション参加に留まっている。
新人のレンブランツでサウンドメイクまで関わった一方で、大御所のホール&オーツではその他大勢の一人としてのセッションのみ。
マステロットのその後にどちらが有益だったか考えると、やはり前者の方なんだと思う。
(追加:2016年2月10日)
A View from 3rd Street : Jude Cole
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Pat Mastelotto - Drums and percussion
ジュード・コールという SSW のセカンド・アルバム。
” Baby, It's Tonight ” と ” Time For Letting Go ” の2曲がビルボードの TOP40
に入る小ヒットをしたらしいが、記憶もなければ、こうして聴いてみても何がよいのか全くわからなかったりする。
勿論この判断は個人の音楽趣向によるものだが、こんな作品でもフィジカル・ディスクとしてリリースすることができたのはCD全盛時代の恩恵なんだろう。
この時期マステロットはもう少しまともなセッション活動に巡りあうことができなかったのか、とつくづく思う。
(追加:2016年6月10日)
Pull : Mr. Mister
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Pat Mastelotto ( Drums, Percussion )
Mr.ミスターのラスト・アルバム。
と言っても、実際にはレコーディング終了後に発売されることはなく、2010年になってリチャード・ペイジが自身のレーベルから発売した作品とのこと。
厳しい言い方をすれば既に前作 『 Go On... 』 で終わってしまっていたバンドだけに、リチャード・ペイジの自己満足のためだけにリリースされた作品である。
本作がレコーディングされた頃にはパット・マステロットは活動の軸足をセッションに移行しており、XTCやレンブランツ等の作品での演奏している。
そして、当人がそのセッション活動自体に満足していたかは判らないが、作品のクオリティにおいては本作品を遥かに上廻っている。
このあたり、ペイジズや
Mr.ミスターのリーダー格として活動していた呪縛がリチャード・ペイジの音楽活動の発展に繋がらなかったのに対し、メンバーの一人に過ぎなかったマステロットが新たな活動で早期に移行して実を結んでいったのと、判りやすく対象的である。
(追加:2017年9月10日)
The Rembrandts : The Rembrandts
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additional musicians are :
Pat Mastelotto : Drums & Percussion
男性デュオ・グループ、レンブランツのファースト・アルバム。
達者な人達による作品だと思う。
履いて捨てる程存在した男性デュオ・グループというフォーマットで勝負に出るのはリスクを含んだ行為のはずだが、それに敢えてチャレンジしただけのことはあると思う。 曲のツブは揃っていないが、後の大ヒット曲 ” I'll Be There For You ” よりチャート上では成功した ” Just The
Way It Is, Baby ” 等、ポップな佳曲が含まれている。
マステロットは全面参加、曲の良さを活かすシンプルな演奏をしている。
共作もしており準メンバー的扱いであるがメンバーにまで昇格できなかったのは、デュオというフォーマットにこだわりがあったためで、イケメン2人とルックス的違いがあったからではない。
(追加:2016年2月10日)