1996
Booth and the Bad Angel : Booth and the Bad Angel
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ジェイムスのヴォーカリストであるティム・ブースと、TVドラマ 『 ツイン・ピークス 』 の音楽を担当したアンジェロ・バダラメンティとの作品。
イーノによって思いっきり過激な方向に振れた針を戻すために必要なリハビリだったのかもしれない。
借用感があるメロディと映画音楽のような大袈裟さが薄くブレンドされたような音楽で、どんな音楽趣向の人もそれなりに聴くことができるが、無人島に持っていく1枚に選出されることはありえない作品となっている。
イーノは1曲だけバック・コーラスで参加、 素っ頓狂な声が多分イーノ。
(追加:2017年7月10日)
Trainspotting
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名作、『トレインスポッティング』のサウンドトラック。
この映画の主人公達が、当時のスコットランドの若者の生活の全てを代表しているとは流石に思わないが、こんな主人公達がいてもおかしくない、こんなことをしてたに違いない、という説得感が滅茶苦茶強いのが本作品の魅力だと思っている。
名場面が多い本作品の中でも屈指のインパクトを誇る「スコットランドで最低のトイレ」の大便器の中に落としたクスリを探す場面で、イーノの ” Deep Blue Day
” が使われている。 糞尿まみれの便器の中を泳いでクスリを探すという、どうしようもない程幻想的なシーンに 『
Apollo Atmospheres & Soundtracks 』
からの楽曲が使われるのは、最高のジョークだと思う。
(追加:2018年10月10日)
Songs In The Key Of X
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X-Filesからインスパイヤーされた作品集。 サントラではないとのこと。
ラインナップは豪華で、当時のX-Filesの人気の高さを充分伺うことができる。 そんな中、コステロとイーノという組み合わせも、意外性だけではなく充分豪華なものである。
エレクトロニクスをバックにコステロがバラードを唄う楽曲なのだが、その内容が非常に素晴らしい。 コステロによる歌メロ、ヴォーカルが良い上に、それを活かすアレンジが見事に施されている。 およそケミストリーが発生するとは想像できないカップルによる、唯一無二の楽曲である。
(追加:2010年8月10日)
1997
The Drop : Brian Eno
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Music And Cover ・ Brian Eno
アンビエントではないインストが多く収められた作品集。
ドローンを中心としたアンビエント風の小曲もあるのだが、楽曲の殆どは、音程に高低がしっかりあるメロディが唐突に始まり、繰り返され、唐突に終わる、というパターンで、イーノが一般流通販売した作品の中では珍しい作風である。
ラストの ” Iced World ” でさえも、アンビエントに走るのではなく、短めのメロディが何度も繰り返されている。
リリースされた当時、オリジナルのアルバム・タイトルに Jazz という単語があったため、イーノによる Jazz
作品と語られることが多かったが、Jazz について全く素人の私からしても、強引な展開に思えた。
とらえどころが無い作品をリリースする時、イーノは罠を仕掛けるようにキーワードを残すことがあるが、本作リリース時に使われた Jazz も、Jazz
と語らせるためのイーノによる高等戦術だったと思われる。
日本盤オリジナルには、ボーナス・ディスクの 8cm CD 3曲が収録されているが、楽曲の傾向は本盤と同じである。
(追加:2016年5月25日)
Whiplash : James
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Frequent Interference And Occasional Co-Production - Brian Eno
オリジナル・アルバムとしては1993年の 『 Laid 』
以来となるジェイムスの作品。
『 Laid 』
関連でのイーノ色の強さを払拭するのに、4年ものインターバルが必要だったのかもしれないが、結局のところイーノに回帰してしまっている。
ジェイムスにとってイーノは、食べたらいけないとわかっていながら食べ続けてしまう毒饅頭のようなものかもしれない。
「邪魔ばっかりするけど時々協力する」というクレジットが許される程、イーノは好き勝手にやっている。
ジェイムスというバンドの本質がどこにあるのか判らないが、過剰なまでに空間系エフェクトをかけたギターや、 『 Achtung Baby
』 や 『 Zooropa 』 を露骨に彷彿させる音触りが、そこからかけ離れていることは間違いない。
(追加:2017年7月10日)
"Heroes" Symphony : Philip Glass
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Music composed by Phillip Glass From the Music of David Bowie and Brian Eno
Dennis Russell Davis, Conductor
American Composers
Orchestra
『 "Low" Symphony』 に続き、、フィリップ・グラスが 『 "Heroes" 』
を元に作曲した楽曲をオーケストラが演奏した作品。
あくまでもインスパイア作品であるのは前作と同じであり、原曲のフレーズがそのまま出てくるのは稀である。
そんなことはわかっていても、オリジナルでも重要曲であった ” Warszawa” ではオリジナル・フレーズが多用されていただけに、本作においては ”
Heroes ” のフレーズがどの様に演奏されるかを期待してしまう...
のだが、皆無。
この曲を聴いて原曲のどこからインスパイアされて、どのように展開されたのかを判るには、現代音楽に対する途方もない程の造詣が必要なのだと思う。
個人的には、その造詣を深める時間があるなら、オリジナルの 『 "Heroes" 』 を繰り返し聴きたいと思う。
イーノの本作品に対する音楽的関与は、前作同様全く無い。
(追加:2017年11月10日)
Shleep : Robert Wyatt
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ロバート・ワイアットのヴォーカルを最大限活かすべく、丁寧に作り込まれたソロ・アルバム。
所謂プログレに期待される音の要素は殆ど無く、奇をてらった演奏やアレンジも無い。 只々ワイアットのヴォーカルを、インスト群がひたすら支えている。
ワイアットの声質がたまらなく好きだという人には最上の作品だろうし、そこまでのこだわりが無い人(ちなみに私もこれ)にも秀逸なヴォーカル・アルバムとして堪能することができる。
イーノの演奏はひたすら地味。
ただ本作においては演奏が地味であるということが最も求められていたことであるはずで、イーノは趣旨に応じた対応を見事にこなしていることになる。
(追加:2016年1月10日)
1998
Susi. Roti. Reibekuchen : Brian Eno Holger Czykay J. Peter Schwalm
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リリースは2024年
All tracks performed by Brian Eno, Holger Czukay and J.Peter Schwalm / Recorded live on August 27, 1998 in Bonn at the Art and Exhibition Hall of the Federal Republic of Germany at the opening reception for an exhibition of Eno's Futer Light -Lounge Proposal multimedia installation.
イーノとホルガー・シューカイとペーター・シュヴァルムによるライヴ・アルバム。
この3人でライヴを行うに至った経緯はよく判らない。 2001年にイーノとシュヴァルムの名義でリリースされた 『 Drawn From Life 』 にはこの3人による ” Like Pictures Part #1 ” という曲が収録されているのだが、このライヴでの達成感からレコーディングに至ったとも思えない。
そもそも聴く前から容易に想像できる通り、ライヴ感は全く無い。 観客の反応云々以前に、レコーディング・スタジオでやってることをレコーディング・スタジオの外でやってみましたという以上の内容ではない。
従って元々イーノの作品が好きな人は好きになるだろうし、苦手な人は苦手だと思う。 そして面倒くさいことにイーノの作品をイーノの作品ということだけで崇め奉る人は同じように本作品も崇め奉るのだと思う。
(追加:2025年2月25日)
Music From The Original Motion Picture Velvet Goldmine
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デヴィッド・ボウイが楽曲提供をしなかったことで、一気になんだか訳のわからないグラム・ロック映画に成り下がった 『 Velvet Goldmine 』 のサウンとトラック。
イーノの楽曲はソロから ” Needle In The Camel's Eye ” と、ロキシー・ミュージックの ” Virginia Plain ” が収録されている。 それはそれで構わないのだが、劇中バンドという設定のヴィーナス・インファーズによる ” Baby's On Fire ” のカヴァーが酷い。 ” Needle In The Camel's Eye ” と同じく、名盤 『 Here Comes The Warm Jets 』 に収録され、ロバート・フリップのギター・ソロが炸裂する名曲が、原曲に対する愛が一欠片も感じられない演奏でお茶を濁されてしまっている。
(追加:2018年10月10日)
1999
Amsterdam 1999 : Brian Eno
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リリースは2023年
1999年に行われたオランダ・フェスティバルにおいて、『 The Shutov Assembly 』 収録曲を中心にイーノの楽曲をオーケストラで演奏した作品。 イーノによる語りも一部挿入されているが、スティーヴ・グレイという人が編曲し、メトロポール・オーケストラを指揮している。
ライナーには、元々 『 The Shutov Assembly 』 はオーケストラでの演奏を想定していたとの記載があるが、1985年から1990年の間にレコーディングしてあった楽曲をコンパイルした同作にそのような意図があったのかは怪しい。 いやむしろこれが本当にイーノの発言であったとしたら、イーノ流のはったりと解釈できて面白い。
元々の楽曲を几帳面にトレースするには涙ぐましい努力が必要であったと思うが、そのアプトプットは面白くない。
(追加:2025年2月25日)
Sonora Portraits 1 : Brian Eno
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ブックレットとCDがセットになっており、CDはアンビエント系の楽曲を中心としたコンピレーションとなっている。
同コンセプトのアンビエント系の曲をアルバム1枚分聴かされるとさすがに飽きてしまうのだが、複数の作品から傾向の異なるアンビエント系の曲が収録されているため最後まで通して楽しむことができる。 編集盤という性格が功を奏した好盤だと思う。
デレク・ジャーマンの映像作品用からの3曲とか、” Neroli ” の短縮ヴァージョン ( 『
Brian Eno I : Instrumental 』
に収録されている短縮ヴァージョンより若干長め )
等、珍しい曲も収録されているのだが、そういったウリが無かったとしても充分に楽しむことができる。
ブックレットには、イタリア語と英語が対比させながら記載されている。 イタリア語の習得には最適、などということはなく、眺めて終了してしまった。
(追加:2006年6月25日)
Millionaires : James
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Produced by Brian Eno With Saul Davies And Mark
Hunter From James,
Except Track 2 Produced By Brian Eno And Steve
Osborne.
All Tracks Mixed By Dave Bascombe Except Tracks 6 8 11 Mixed
By Brian Eno.
Brian Eno Construction Tracks 1,3,7,8,11.
三度イーノがプロデュースに取り組んだジェイムスの作品。
U2のような音作りに今回新たにプラスされたのは、初期ロキシー・ミュージックの要素と言えば良いのか。
ロキシー当時のアナログ・テープによる操作ではなくデジタル処理によるものだろうが、イーノが参加したロキシーの最初と最後の曲での音響処理を、そのまま本アルバムの最初と最後に再現している。 1曲目の ” Crash ”
の終わらせ方はファアースト・アルバム1曲目の ” Re-Make / Re-Model ” だし、ラストの ” Vervaceous ”
の最後に女性の声が反復されるのはセカンド・アルバム最後の曲 ” For Your Pleasure ” である。
仮にこれらが思い過ごしであったとしても、初期ロキシー・ミュージックの喧騒感を彷彿させる音作りは、アルバム全体に施されている。
イーノがここまで好き放題やれる何かが、ジェイムスとの間にはあったのだろう。
(追加:2017年7月10日)
2000
Music for 陰陽師
CD1 伶楽舎 CD2 Brian Eno with Peter Schwalm
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Music Written Produced and Performed by Brian Eno with
Peter Schwalm
Voice Kyoko Inatome
岡野玲子の作品、 『 陰陽師 』
のイメージ・アルバム。 イーノは、2枚組CDの1枚をピーター・シュワルムと担当している。
雅楽のCDを参考にしながらもそれ風の音を出そうとはしなかった、とイーノによるライナーに記載してある通り、本作品から
『 陰陽師 』
を想像することは難しい。 ただ、曲は短めでバリエーションにも富んでおり、
『 陰陽師 』
ということを意識さえしなければ、イーノのアンビエントものの入門編として手頃かもしれない。
そのイーノのライナーにはまた、平安時代についてはほとんど知らないが
『 枕草子 』
なら読んだことがある、と記載してある。 こういうハッタリをかますところが、イーノの良いところだと思う。 学生時代の古文の授業の「カ変」でつまづいた私には、ここまでの法螺は吹けない。
(追加:2008年2月25日)
Exile : Geoffrey Oryema
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Produced by Brian Eno
Real World
からリリースされたウガンダのミュージシャン、ジェフリー・オリエマの作品。
本作品は、私のような所謂ワールドミュージックなるものに長けていない者がイメージする民族楽器とポリリズムが全面に出した音楽ではない。
もちろん、そういう傾向の楽曲もあるが、それ以上にリズム楽器のようなジェフリー・オリエマののヴォーカルの面白さが強調された作品となっている。
ワールドミュージックとロックの融合などという陳腐なアプローチがをいい加減使い古されていた2000年において、プロデユーサーとしてクレジットされたイーノの貢献度は非常に高いものと思われる。
また、プロデューサーとしてだけではなく、” Land Of Anaka
” での笛の音と絡む、旧式のシンセサイザーを使ったイーノの薄く上品な音色は絶品である。
(追加:2016年9月10日)
Faith And Courage : Sinéad O'connor
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Piano : Brian Eno
Produced by Brian Eno & John Reynolds
Mixed by
Brian Eno & John Reynolds
シニード・オコナーが2000年に発表した作品。
個人的には、音楽雑誌に掲載されていたオコナーの発言や活動は知っていたが、その音楽には接してきたことが無いだけに、本作品が彼女の作品群の中でどのような位置づけはよくわからない。
リズム隊(特にベース)がレゲエなのだけど、そのリズムだけが前面には出てきておらず、オコナーのヴォーカルをしっかりと味わうことができる。
イーノのシンセサイザーが大きくフィーチャーされている ” Emma's Song
” は、日本ではキリン・ビールの CMソングに使われた。 イーノのシンセサイザーがお茶の間に流れた、と書いてみると中々感慨深い。
(追加:2019年4月10日)
All That You Can't Leave Behind : U2
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『 Achtung Baby 』、『 Zooropa 』、『 Pop 』 と、従来の演奏フォーマットを変更した U2
が、改めてそのフォーマットを変更した作品。
バンドとしての演奏を際立たせるために効果的にエレクトロニクスを活用した作品、と一言でまとめると 『 The Joshua Tree 』
と同じになってしまうが、演奏フォーマットを変更した3作品を経ているだけに、その活用方法は衝撃度こそ少ないが貢献度は増している。
となると、やはりこれはイーノの出番であって、演奏、プロデュースと U2 の作品の中での活躍度は最も高くなっている。 イーノと U2
の間にどのような人間関係があるのかには全く興味がないが、タイミングよくケミストリーを発生する背景になにがあるのかは興味深い。
(追加:2015年6月25日)
The Million Dollar Hotel Music From The Motion Picture
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The Million Dollar Hotel Band :-
Bono - Vocals, Guitar, Piano.
Daniel Lanois - Guitars, Vocals, Pedal Steel.
Jon Hassel - Trumpet.
Brian Eno - Synthesisers.
Greg Cohen - Bass.
Brian Blade - Drums.
Adam Dorn - Beats / Synth / Programming.
Bill Frisell - Guitar.
『 ミリオン・ダラー・ホテル 』 という映画のサウンドトラック。
未見のため内容はわからないが、主演のミラ・ジョヴォヴィッチがゾンビと戦う映画でないことはあ確かである。
イーノと U2
人脈で構成された映画のタイトルそのままのバンド、ミリオン・ドラー・バンドがサウンドトラックを担当している。 ボノ+ イーノ
名義で良かったのではないかと思うが、そうはできない大人の事情があったのかもしれない。
U2
大好きという人が購入しても楽しめる内容ではないが、ではイーノが好きなら必聴ということもなく、中途半端な内容となっている。
(追加:2018年10月10日)