
2014/ 9/ 9 The Egg,, Albany, United States
2013年9月24日に DGM Live においてキング・クリムゾンの再活動がアナウンスされ、幾多のリハーサルを経て行われたライヴを収録した作品。
短命で終わった Lineup 7 の2008年8月17日の最後のライヴから2,215日ぶり、本格的活動を行った Lineup 6 の2003年11月19日の最後のライヴから3,950日ぶりのライヴである。 事前の情報でオール・タイムの選曲(但しこの時点では Lineup 4 の楽曲は無し)というのは想像できていたものの、ここまで偏りが無いとは思わなかった。
またこれらの楽曲に新たなアレンジが加わっている部分があるものの、「当時のようには演奏できないからこのアレンジなのね」と感じさせる所が無く、進化したと思わされたのがまた驚きであった。
とは言いながらもその凄さを私が知ることができたのは2015年になってリリースされたこの年のライヴ 『 Live at the Orpheum 』 であり、この日のライヴを生で体験できた人が心底羨ましい。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/ 9/10 The Egg,, Albany, United States
Lineup 8 としての2回目のライヴで前日と同じくオールバニのジ・エッグで行われている。
前日から ” Improv Hoodoo ” 外し ” Level Five ” を演奏している。 そしてこの2日間で演奏した21曲が2014年の Lineup 8 の全レパートリーである。 この後毎年驚異的なまでに演奏曲を増やす Lineup 8 もこの段階ではレパートリーが少なかったのは致し方なかったのかもしれない。 ただ観に来た人にしてみればそんなことは関係なく盛り上がったはずである。
初日は外した ” Level Five ” は、残りの18公演全てで演奏されるのだが、この日はパーツパーツを演奏したのをつなげたような印象でぎこちなさは隠せない。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/ 9/12 Verizon Hall, Philadelphia, United States
移動と休みの1日経てフィラデルフィアで行われたライヴを収録した作品。
Lineup 8 になってからキング・クリムゾンのツアーには移動が連続する無茶なブッキングは無い。 その理由として音楽業界全体の収益構造がニュー・アルバムの売上(ライヴはニュー・アルバムのプロモーション)から、グッズ販売を含めたライヴ自体に移行したことを挙げることができる。 ライヴの利益率を上げるためには毎日別な場所で演奏するより、同一会場や地域で複数回ライヴを行う方が効率的である。 同時にチケット代が値上がりしたのは残念だが、結果として高齢化したメンバーの体調管理にも寄与している。
この日は前回から ” VROOOM ” と ” Coda Marine 475” が外された結果若干短めな内容となっている。 またこの編成でのライヴ初のトラブルとして ” Pictures Of A City ” のヴォーカル・パートの入りをフリップが間違えたことが記録されている。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/ 9/13 Verizon Hall, Philadelphia, United States
フィラデルフィアのヴェリゾン・ホール(現在はマリアン・アンダーソン・ホールに改名)で行われたライヴを収録した作品。
2014年のツアーにおいて ” The ConstruKction Of Light ” がこの日だけ演奏されなかったのは謎だが、同一会場での2回目の演奏ということもあり内容も充実している。
この日のハプニングとしては、” Starless ” のイントロ・パートでメロトロン音が機材トラブルで出ていないことである。 シンプルなドラムとベースだけのイントロに戸惑う観客が、フリップのギターで ” Starless ” だと気付き盛り上がるところが面白い。
Mr. Stormy's Monday Selections では、クリムゾンの楽曲を特定の楽器のみで編集したテイクがリリースされているが、ライヴで偶発的に発生した時の方が観衆の反応やメンバーの応急対応等が楽しめて面白い。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/ 9/15 Colonial Theatre, Boston, United States
ボストンに移動してコロニアル・シアターで行われたライヴを収録した作品。 今回も移動にあたり間を空けている。
前回の ” The Construction Of Light ” に代わりこの日は ” Red ” が演奏されなかった。 ” Red ” が演奏されなかったのは2014年のツアーではこの日だけで、セットリスト情報は毎日更新されていた中この日にしか来られなかった方は随分と悔しい思いをしたはずである。
日替わりトラブルとしては、” The Sailor's Tale ” の冒頭ドラマー3人によるハイハット廻しが終わった後のベースの音が聴こえないところである。 ベースが聴こえた前提でギターを(多分ジャッコ)が弾き始めるが、もう一人(力関係から多分フリップ)が弾かないため慌てて演奏を中止している。 その後唐突にベースの音が聴こえ始め、タイミングを合わせてギターの演奏が始まっている。
2回連続での機材トラブル、この後スタッフは相当気合を入れ直したはずである。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/ 9/16 Colonial Theatre, Boston, United States
ボストンのコロニアル・シアターでの2日目の演奏を収録した作品。
2014年段階のキング・クリムゾンのレパートリーは21曲で2時間のライヴで18から20曲が演奏されていたため、日によっての変化は演奏する曲自体ではなく演奏する順番であった。
そしてその演奏曲順による印象が最も尖っていたのがこの日の演奏である。
後半の ” Red ”、” One More Red Nightmare”、” VROOOM ”、LTIA2 ”、そして ” The Hell Hounds Of Krim ” を挟んでの ” 21st Century Schizoid Man ” という演奏順序には、心休まるタイミングが全く無い。 実体験された方が羨ましいというより、心身を気遣いたくなってしまう。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/ 9/18 Best Buy, New York, United States
ニューヨークのベスト・バイ・ホールでの4日連続公演の初日の演奏。
調べてみるとベスト・バイの前はノキアで後はプレイステーションで現在もまた別の名前、スポンサーの変更が繰り返されている会場である。 渋谷公会堂が C.C.Lemon になって建て替えらた後 Line にあったのと同じなのかもしれない。
3連続というのは Lineup 8 編成で初めてということもあってか、曲数も少なく飛ばし過ぎない構成となっている。 とは言っても ” Interlude ” 以降のセット・リストは直前のボストンのコロニアル・シアターと同じで、観客の大勢を占める高齢者の血圧を上げるには十分すぎる内容である。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/ 9/19 Best Buy, New York, United States
ベスト・バイ・ホールでの2日目の演奏を収録した作品。
2014年のキング・クリムゾンのハイライトの1つである。 リハーサルを周到に行って旧曲を蘇らせ、ウォーミング・アップとは言えない程高いレベルのライヴをこなし、ニューヨークでの同じ会場での2回目に更なるピークを持っていったのは意図的だったはずだが、その計画は見事に成功している。
” Pictures Of A City ” を外したのは意外だったが、前回、前々回のように後半を上昇させる曲を集めず全体に散りばめているのも良いと思う。
2014年の音源を全部聴く時間的余裕の無い方にお薦めなのだが、この良さをいきなり味わうよりもこの日までの流れを確認した上で聴いた方がより楽しめるはずである。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/ 9/20 Best Buy, New York, United States
ベスト・バイ・ホールでの3日目のライヴを収録した作品。
前日のライヴと匹敵する程の内容である。 前日のライヴの集中力が凄まじかっただけに、この日の演奏が多少弛緩したとしてもおかしくないはずなのにである。
そしてその理由は多分 ” VROOOM ” をセット・リストから外し曲数を減らし演奏時間を短めにしたことと、ギャヴィン・ハリソンのドラム・ソロで他のメンバーが休憩できる ” 21st Century Schizoid Man ” をラストではなくアンコール前に持ってきたことである。 抜くべきとこは抜くことによってパフォーマンス全体の質を維持することは、正しい割り切りだと思う。
勿論その背景にはメンバーの高齢化もあるのだが、熟練したこのような対応ができるようになったことで Lineup 8 は長期間に渡るライヴを続けられたに違いない。
あとラストの ” Starless ” でのイントロでのフリップのギター音が全く歪んでおらず、多分ペダルの操作ミスと思われる。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/ 9/21 Best Buy, New York, United States
ベスト・バイ・ホールでの4日連続ライヴの最終日を収録した作品。 同じ場所での4連続は、日本でのオーチャード4連続みたいなものなのか。
例えば1980年のリーグ・オブ・ジェントルメンのツアーなどは、移動しながらの4日連続どころか5日連続のライヴが何回もあり、しかもその連続日程の中に1日2公演などということもあった。 多分フリップさえもツアー全体のブッキング状態が掴めておらず、苦行のような毎日であったはずである。
そのような無茶なブッキングに比べると、Lineup 8 のツアーが如何に計画的に行われていたかが良く判る。 4日連続公演とはいえ会場は同じだし、かつその前後に移動を含めた休日も含まれている。
こうした環境化で行われたこの4日目のライヴは演奏も無難に行われ、機材のトラブルも無く進行している。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/ 9/23 Barrymore Theatre, Madison, USA
ウィスコンシン州マディソンで行われたライヴを収録した作品。
2014年のツアーで初めて1会場で1公演しか行われていない。 その前後で移動休日が1日ずつ取られているので、体力面での問題は無かったはずである。
演奏曲目が増えた2015年以降のライヴでは1会場複数公演の場合は日替わりメニューで、1会場1公演の場合は代表曲を外さない選曲が施されていたが、全21曲のレパートリーであった2014年段階では他の日と大きな違いはない。
そしてこの日は ” Larks' Tongues In Aspic Part II ” フリップが大きく演奏ミスをしてしまいバンド全体の演奏が一瞬ストップしかけてしまう場面がある。 フリップがこういうミスを……という衝撃が結構大きい。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/ 9/25 The Vic Theatre, Chicago, United States
シカゴのビック・シアターでの3連続公演の初日の演奏を収録した作品。
良い意味で無難な内容である。 前回 ” Larks' Tongues In Aspic Part II ” でミスってしまったパート近くで少しだけもたつき、LTIA2 イップスかと思わせるところもあるが上手くこなしている。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/ 9/26 The Vic Theatre, Chicago, United States
ヴィック・シアターでの2日目の演奏。
演奏順を大きく変更しているのは3連続公演を踏まえてのことだと思うが、その結果2連続後半で演奏して上手くいかなかった ” Larks' Tongues In Aspic Part II ” が前半に演奏されている。 ” LTIA1 ”、” Talking Drum ”,” LTIA2 ” という連続演奏は観客の興奮とともに見事にはまり、その後の流れも良くなっている。
Best Buy での連続公演以降、” Pictures Of A City ” と ” VROOOM ” の演奏がトレードオフになったためこの日は ” VROOOM ” が演奏されていない。 ライヴ全体の内容が良いだけに、例えば ” A Scarcity Of Miracles ” を外して ” VROOOM ” を演奏してほしかった。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/ 9/27 The Vic Theater, Chicago, United States
ヴィック・シアターでの3連続公演の最終日を収録した作品。
2014年のライヴの中でこの日のみ、1曲目が ” Threshold Soundscape and Intro ” が ” Threshold Soundscape and Improv Intro ” とクレジットされている。 1分程長くなっている演奏は、インプロというより音合わせのような印象がある。
この日も高レベルの演奏が繰り広げられているのだが、総じて動から静のパートに移行した直後に若干もたつくことが多いように思えるこのツアーの中でも、残念ながらこの日はそうした場面が多くなっている。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/ 9/30 Orpheum Theatre, Los Angeles, United States
シカゴからロサンゼルスまで移動してオルフェウム・シアターで行われたライヴを収録した作品。 流石に今年のワールド・シリーズ並みの移動とあってか、2日間空けて行われている。
Lineup 8 の初ライヴ・アルバムとしてフィジカル・リリースされた 『 Live At The Orpheum 』 は、この日と翌日の演奏から編集されている。 2日の演奏から色々と編集が施されていると思うが、同作収録の7曲の内 ” One More Red Nightmare ” はこの日しか演奏されていない。
あらかじめオルフェウムでのライヴのフィジカル・リリースを計画していたのか、それとも全てのレコーディングの中からオルフェウムを選択したのかは判らないがいずれにせよ内容は充実している。 それだけに 『 Live At The Orpheum 』 の選曲については疑問が残るが、それについてはこの後で触れたい。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/10/ 1 Orpheum Theatre, Los Angeles, United States
オルフェウム・シアターでの2日目の演奏。 内容の充実度は初日と同じである。
前日とこの日のライヴから構成された 『 Live At The Orpheum 』 は7曲が収録された約40分の作品である。 2枚組にしないまでもCDに40分というのは短すぎるし、そもそも選曲が微妙である。 同じ7曲なら ” 21st Century~ ”、” LTIA1 & TT & LTIA2 ” 、” Red ”、” One More Red Nightmare ”、そして ” Starless ” でいいじゃないかとまでの下品なことを言うつもりはないが、同作の選曲はベストとはやはり言えない。
期待を高めて焦らしに焦らしてライヴの動員数を増やすという作戦だったとしたらあまりにも見事だけど。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/10/ 3 The Warfield, San Francisco, United States
サンフランシスコに移動して行われた、2014年ツアー最後の2連続公演初日の演奏を収録した作品。
ツアーをこなしてきた事による熟練度の向上と、ツアーの終わりが見えてきたとによる心の余裕なのか、この日も安定した内容となっている。
この「安定した内容」という表現にもしマイナスな面があるとしたら、それはレパートリーの少なさである。 インプロやSEを含めた全21曲の中から18曲から20曲の演奏では、その演奏順序を多少変えたとしても全体の印象は大きく変わりようがない。
Lineup 8 が年を追うごとにレパートリーを増やしていくのは最初から計画済みのことだった思うが、初年度が先ずそのベースロードを固めていく作業だとするとレパートリーの少なさはそのトレードオフで仕方がないことだったと言える。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/10/ 4 The Warfield, San Francisco, United States
サンフランシスコでの2日目の演奏を収録した作品。
” Improv Hoodoo ” を外して20曲を演奏、つまり用意された過去ナンバーを全曲演奏したのはツアー2日目の The Egg 以来のことである。 この選曲は最終日にも継承されており、ツアーの最後を締めるという意図があったはずである。
ただこの日は機材トラブルが多く、特に ” The Sailor's Tale ” のイントロではトニー・レヴィンのベースの音が全く出てこず、弾きかけたギターも一旦終わらせドラムの演奏だけでトラブル解消までをしのいでいる。 機材のトラブルは残念だが、ツアーをこなしたことが上手くこの対応に結びついたものと思われる。
そしてこの日の最大の特徴は ” Red ” の演奏である。 本編メインのギター・リフの最後をオリジナル通り伸すのではなくフックを1回入れるパターンで全て演奏していることである。 時折このパターンを差し込むことはあっても、1曲丸々とこのパターンで演奏したのはこの日が初めてである。
以後定番となり否定的な意見もあるこのパターンが確立したのは、正にこの日である。
(追加 : 2025年11月25日)
2014/10/ 6 Moore Theatre, Seattle, United States
シアトルのムーア・シアターで行われた、2014年のキング・クリムゾンの最終公演。
2015年以降のキング・クリムゾンは来日公演が行われただけでなく、様々なライヴ・アルバムのリリース、1公演1曲ずつの DGM Live からのリリースもありその多くを日本でも知ることができた。
一方2014年のキング・クリムゾンについては、 意図的にライヴの全容を掴めないようにした 『 Live At The Orpheum 』 が翌年リリースされただけで、DGM Live からこの2014年のツアーのライヴがリリースされて初めてその全容を知ることができるようになった。
こうした経緯もあり、セットリストが日替わりだった2015年以降のクリムゾンに慣れ親しんだ身からすると、演奏曲目が限定されていたクリムゾンというのも中々新鮮であった。 2015年以降の方がお得感があると思うが、一方で固定されたナンバーを演奏し続けるクリムゾンも観ておきたかったと無いものねだりもしたくなる。
結局まぁ、全部観たかっただけなんですけど。
(追加 : 2025年11月25日)