1973/ 3/16 Greens Playhouse, Glasgow, Scotland
1973年に入り、クリムゾンは先ず2月10/11日とロンドンのマーキーでライヴを行う。 その初日10日の演奏中にジェミー・ミューアは怪我をし、そのままクリムゾンを脱退する。 後になってそれは「怪我をしたことにした」脱退だと判るのだが、翌11日にクリムゾンはミューア抜きの4人でライヴを行う。 この2日間のライヴがどいう内容だったかは是非知りたい。
本作品は、その後1ヶ月強のブランク後に行われたイギリス・ツアーの初日、グラスゴーでのライヴを収録した作品である。
このツアーは 『 Larks' Tongues In Aspic 』 のプロモーションを意図しており、同作からの全曲、” Dr.Diamond ” とインプロ2回、そしてラストが ” 21st Centurys Schizoid Man ” という構成である。
1972年段階でのライヴのように「ライヴで曲を作っていく」という試みは少ないが、それでも ” Improv I ” でのイントロ・パートに ” Fallen Angel ” の萌芽を見出すことができる。
(追加:2024年1月10日)
1973/ 3/18 Rainbow, London, England
1973年音源で(現段階で)最初期のもの。
『 Larks' Tongues In Aspic 』
全曲と ” Dr Diamond ” とインプロという選曲で、あと ” 21st Century Schizoid Man ”
が当日は演奏されたものと推測される。
本作品の最大の特徴は、残念ながらその音質の悪さである。 本作品の後に聴いた 『 Earthbound 』
が超高音質作品と思えてくる程で、DGM Live からリリースされた作品の中でも、最も音質が悪い作品の一つである。
ライヴ内容が素晴らしかったかどうか、も判らないレベルではあるが、聴くことができただけでもありがたいと思うべきなのだろう。
(追加:2018年2月25日)
1973/ 3/22 Townhall, Leeds, England
リーズで行われたライヴを収録した作品。
リリース済みの3月18日のロンドンでのライヴの後、2回のライヴを経ての演奏であり、同構成でありながら内容は充実している。
ベースの音は多少ぼやけているもののしっかりと収録され、ヴァイオリンの音色も良い。 もっと時間をかけてリマスターをしてフィジカル・ディスクとしてリリースしても良い内容である。
(追加:2024年1月10日)
1973/ 3/24 Winter Gardens, Bournemouth, England
このライヴが行われたボーンマスは、フリップとウェットンの出身地である。 DGM Live の解説にはそのおかげで絶好調のライヴと記載してある。 出身地と演奏の出来具合の相関関係がどれ程あるのか判らないが、確かに内容は良い。
『 Larks' Tongues In Aspic 』 の楽曲も良いが、この日は長尺の ” Improv I ” が充実している。 ” Fracture ” のギターのフレーズや、” Providence ” を彷彿させるメロディをヴァイオリンで試していたりする。
(追加:2024年1月10日)
1973/ 4/ 1 Rheinhalle, Dusseldorf, Germany
3月18日のロンドンでのライヴに対して、” Dr Diamond ” が無い代わりに ” 21st Century Schizoid
Man ” が収録された作品。
そのロンドンでのライヴ程ではないが、やはり音質は良くない。 ” 21st Century Schizoid
Man ” での高音域を攻めまくるフリップのギターがとても格好良いのだが、集中力を保って聴かないと、その凄さをスルーしてしまいかねない程である。
1973年前半の高音質音源の発掘が、この時期のクリムゾンを堪能するために必須である。
(追加:2018年8月10日)
1973/ 4/ 2 Austellungshalle, Sindlefingen, Germany
1973年の2月から6月までの5ヶ月間に、キング・クリムゾンはイギリス、ヨーロッパ、北米で70回弱ものライヴを集中して行っている。 演奏する曲と曲順は殆ど変化が無い一方、ライヴとその移動でまとまった時間をスタジオで過ごせなかったためか、ステージ上のインプロで試行錯誤を繰り返している。
その結果、ぶっちゃけこの時期のインプロは玉石混交している。 ミューア在籍時のミューアに扇動されるインプロというパターンが無くなり、4人の集中力に依存するインプロというパターンのみに移行した直後だけに仕方がなかったと思われる。
この日のインプロは4人の集中力が整ったのか、2曲とも秀逸な内容となっている。 ” 21st Century Schizoid Man ” が不完全版であること以上にインプロ1曲目の前半が欠けているのが残念に思える程である。
(追加:2022年12月25日)
1973/ 4/ 5 Palazzo dello Sport, Reggio Emilia, Italy
ローマでの演奏を収録した作品。 全般を通して音質は良くないのだが、特に後半の音質が良くない。
ミューアが抜けた後の1973年前半までのライヴは、演奏曲とその順序の変化が少ないのだが、特に3月末から行なわれた10日程度のヨーロッパ・ツアーでの演奏は全くと言ってよい程変化がない。
勿論インプロ曲やインスト・パートには模索の跡が見られるのだが、ライヴの進行自体は良く統制されていることが判る。
1973年後半の、ウェットンとブルッフォードの暴走、煽られて激しさを増すフリップ、置いて行かれるクロス、という新たな構造に移行する前の時期、と位置づけることができる。
(追加:2018年10月25日)
1973/ 4/ 6 Palazzo dello Sport, Rome, Italy
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ローマでの連続2日目。
前述の通り演奏パターンに全く変化は無いのだが、音質は良い。
オーディエンス録音のため、会話や雄叫びが時々差し込まれるのだが、安心して聴き続けることができる。
何か一昔前の海賊盤レビューのようになってしまったが、内容の差が見出しにくい中、何度も聴きたいと思わせるには音質の良さが重要であると改めて思った。
(追加:2018年10月25日)
1973/ 4/ 8 Volkshaus, Zurich, Switzerland
1973年の音源は、特に同年前半の音源は当初発掘が遅れていたが、2018年以降少しずつリリースされるようになった。 当然後から発掘されただけに録音状態が悪いものが多かったのだが、2023年以降リリースされた音源は良質なものが多い。
本作品も音質、演奏とも素晴らしく、今までこの時期のライヴを「ミューアが抜けた直後で試行錯誤中」と一括りしていたことが恥ずかしくなってくる。
DGM Live の解説に本作品は必聴との趣旨が記載されているが、本当にその通りだと思う。
(追加:2024年1月10日)
1973/ 4/ 9 Olympia, Paris, France
『 Larks' Tongues In Aspic 』
がリリースされた時期のライヴ。 律儀にアルバムから全曲を演奏している。
DGM Live によると、本作品のウリは LTIA Pt I と合計30分超にもなるインプロとのこと。 確かにそういうだけあって、
LTIA Pt I の演奏は凄まじい。 また、インプロの1曲目は、オリジナルに収録されることなく終わった新曲
” Guts On My Side ” の一部が使われているとのこと。
まぁ、そんなウリ文句を別にしても、この時期のライヴがたっぷりCD2枚組で堪能でくるだけで、充分幸せである。
本作品は、2種類の海賊盤から編集されている。 『 Epitaph 』 から10年以上たってもこんな作業を続ける、デヴィッド・シングルトン。 偉い人だと思う。
(追加:2008年10月25日)
1973/ 4/20 Kinetic Playground, Chicago, United States
この時期のクリムゾンのライヴでの集中力の高さを証明するような作品である。
ライヴ開始早々からの「座れよ」系のヤジは徐々に酷くなり、中盤以降多くの客が演奏に対する反応ではなくヤジに反応して新たなヤジが飛び交うという状態になっている。
そんな状況下でテンションを保ち続けるのは凄いが、ヤジの応酬に対応しているよりクリムゾンとしての進化に集中した結果がこの演奏に昇華しているのだと思う。
ある意味聴衆を置き去りにしているとも言えるが、この会場で騒いていた人たちはつくづく損をしている。
(追加:2024年1月25日)
1973/ 4/24 State Fairground, Oklahoma City, United States
4月18日から始まった北米でのツアーの、現段階で最初期の音源。
先ず最初に。
本作品は1973年前半のクリムゾンのライヴ作品の中でベストである。
1973年に入ってからのイギリス、ヨーロッパ、北米と7月まで続いたツアーは、『
Larks' Tongues In Aspic 』
のプロモーションという明確な意図があった。 その結果同作から全曲演奏されたのは良しとしても、オープニングが ” Dr. Diamond ”
でアンコールが ” 21st Century Schizoid Man ” というパターン化されたものであった。
また、ジェミー・ミューア離脱後のステージでインプロは試みたものの新曲への展開はみられなかった。
こうした状況に加え発掘される音源の音質が悪かったことから公式リリースも遅れていたのだろうが、ここにきて素晴らしい作品がリリースされたのが嬉しい。
海賊録音のテープの尺の問題で欠けている演奏もあるが、テンションの高い演奏がひたすら続く。 更に、” Improv II ”
ではクロスが魅力的なインプロを演奏するとブルーフォードとウェットンが激しい演奏で対抗するというパターンが繰り返され、バンド内での良い意味での争いを伺うことができる。
(追加:2021年2月25日)
1973/ 4/28 Academy Of Music, New York, United States
これは……必聴の作品である。
DGM Live からのライヴ作品、特に1970年代の作品はブートレグ音源が発掘毎にリリースされるため体系的に聴くことができない。 そのため必聴作品に接した後にまた必聴作品が出てくるのだが、もうそれは嬉しい悲鳴としか言いようが無い。
ブルーフォードとウェットンの手数足数の多さがそのままフリップを扇動しており、” Larks' Tongues In Aspic Part I ” の中間部など鳥肌ものである。
後にクロスが疎外感を感じるようになってしまう萌芽がここにある。
(追加:2024年1月25日)
1973/ 5/ 4 Orpheum, Boston, United States
この日のライヴも好調である。
4月28日のニューヨークでのライヴに比べリズム隊の暴走は見られないものの、クロスの活躍度が非常に高い。
冒頭の ” Doctor Diamond ” でのヴァイオリンが攻撃的だし、” The Talking Drum ” でもフリップのギターと完全に渡り合っている。
1973年前半のツアーは 『 Larks' Tongues In Aspic 』 のプロモーションを主眼にしたセットリストでありながら、ツアー開始から1ヶ月強で劇的な進化をしていることがよく判る。
(追加:2024年1月25日)
1973/ 5/ 6 Palace Theatre, Waterbury, USA
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1973年音源で(現段階で)最初期のもの。
『 Larks' Tongues In Aspic 』
全曲と ” Dr Diamond ” とインプロという選曲で、あと ” 21st Century Schizoid Man ”
が当日は演奏されたものと推測される。
本作品の最大の特徴は、残念ながらその音質の悪さである。 本作品の後に聴いた 『 Earthbound 』
が超高音質作品と思えてくる程で、DGM Live からリリースされた作品の中でも、最も音質が悪い作品の一つである。
ライヴ内容が素晴らしかったかどうか、も判らないレベルではあるが、聴くことができただけでもありがたいと思うべきなのだろう。
(追加:2018年2月25日)
1973/ 5/ 8 Masonic Temple, Detroit, United States
2014年に 『 Starless 』 が発売された以降、1973年の新たな音源、特に1973年前半の音源が DGM Live
から多くリリースされている。 本作品もその一つなのだが、この日の演奏は革新性を見出すことができずもがき苦しんでいる姿を捉えている。
3月にリリースされた 『 Larks' Tongues In Aspic 』
のプロモーションがツアーの目的であったため、新作からの全曲とインプロと ” 21st Century Schizoid Man ”
と演奏曲が固定していたのはしょうがないかもしれない。 しかしそれ以上にジェミー・ミューアの脱退による影響が大きいと思われる。
1972年のライヴで新曲を昇華させ、その勢いで 『 Larks' Tongues In Aspic 』
をレコーディングさせた手応えは相当あったと思われるが、マネージメントの都合で(ということさえ当時は知らされず)ミューアが脱退したことは、パーカッション奏者が単に一人減った以上の打撃があったのではないかと、この日のインプロから伺うことができる。
改めてミューアの凄さを認識するとともに、そんな状態からウェットン+ブルッフォードの暴走を契機に新たなバンドとして立ち直らせたフリップの手腕も凄い。
(2018年11月10日)
1973/ 5/12 Kiel Auditorium, St Louis, United States
「 it's one that only the most die-hard Crimhead collector will want. 」 と DGM Live の解説に記載されている作品。
音の悪さが尋常ではない。 こもっているだけでなく、各楽器/ヴォーカルのバランスが悪く聴こえなくなったりそれしか聴こえなくなったりする。 リストアに時間もかけなかったのだろうが、録音機材と録音コンディションがここまで悪いと時間のかけようがなかったのかもしれない。
演奏の特徴を見出すことも困難な状態で、更に ” Book Of Saturday ” や ” 21st Century Schizoid Man ” も抜けてるとなると、買い求めはしたが現在まで3回しか聴いたことがない。
(追加:2024年4月10日)
1973/ 5/14 Club Agora, Cleveland, United States
1973年の北米ツアーの音源。
ところどころ演奏が抜けていたり、最後に演奏していたであろう ” 21st Century
Schizoid Man ” が無かったりと海賊音源を元にしていることが明らかなのだが、音質はそこそこである。
” Improv II ”
ではウェットンのメロディアスなベースとクロスのヴァイオリンがラスト1分まで美しく絡み、新曲として発展する可能性もあったのではないかと思う。
ただそのラスト1分でブルーフォードとフリップの音量が上がってくるのに触発されてか、唐突にウェットンが大音量で歪んだベースを奏で唐突に曲が終了する。
クロスとしては絡む術が無くなっており、この辺りがクロスのフラストレーションに繋がっていったことがよく判る。
(追加:2021年2月25日)
1973/ 6/ 7 Warehouse, New Orleans, United States
前日の6月6日から始まった1973年2回目の北米ツアーの音源。
” Dr. Diamond ” + 『 Larks' Tongues In Aspic 』 全曲 + インプロ + ” 21st Century Schizoid Man ” という構成は変更されていない。
インコンプリートが2曲あったり、” Improv II ” と ” Improv III ” と実質1曲を2曲にしているのは嵩上げだと思うが、それでも全曲収録されているのが嬉しい。
” Doctor Diamond ” で演奏がコケたところから修復が格好良かったり、” Improv III ” でのSF映画でのUFO襲来時のような音の掛け合いとか、聴きどころも多い作品である。
(追加:2024年4月10日)
1973/ 6/ 9 Majestic Theatre First Show, Dallas, United States
一日に2公演、という過酷な状況下でのライヴを収録した作品。
後述する2回目の演奏と異なり、初回のこの演奏は良い。
曲数が少ないのは2回演奏することを考慮した上のことであろうが、逆に絞られた曲を集中して演奏しているため緊張感にみなぎっている。
唯一残念なのはエコーのかけ方で、” The Talking Drum ” のラストでのヴァイオリンは幻想的な効果を出している一方、” 21st
Century Schizoid Man ” のヴォーカルはもったりとしてしまい切れ味が落ちてしまっている。
ただそんな末梢なことしか気にならない程、全体的に素晴らしい内容である。
(追加:2020年11月10日)
1973/ 6/ 9 Majestic Theatre Second Show, Dallas, USA
一日2公演の2回目の演奏を収録しいた作品。
この日の前後のスケジュールを確認すると、6月6日から10日まで連日演奏しており、5日間で6回のライヴをこなしていることになる。
エネルギーの放出が止まらなかったこの時期のクリムゾンとはいえ、流石にこのスケジュールは無理があったと思う。
実際この2回目のライヴは、初回に比べて明らかに雑な演奏となっている。
” Dr. Diamond ”
のとっ散らかり様や、垂れ流しに近くなっている ” Improv ” にも魅力は感じられない。
デヴィッド・クロスのフラストレーションはこの頃から既に蓄積始めていたのかもしれない。
(追加:2020年11月10日)
1973/ 6/15 Arena, San Diego, United States
よく判らない作品である。
DGM Live の解説には1973年4月24日のオクラホマと同じだが日付が確かではないと記載してある。 同日の解説を見ると同じ内容がいつの間にか追記されている。
音源を聴き比べるとカットされている部分の違いは僅かなのだが、曲間の歓声の大きさに違いがあり別音源のように思える。
「正確な日にちは判らないが、同一日のソースが異なる2音源」というのが正しいところかもしれない。
(追加:2024年6月25日)
1973/ 6/16 Community Theatre, Berkeley, CA
『 太陽と戦慄 』に ” Dr. Diamond ” と ” 21st Century Schizoid Man ”
で構成された、コンパクトながら充実した選曲である。 これで音質がもっと改善されていたら、結構な名盤であったはずだ。
DGM の解説によると、イーグルスの前座であったとのことだが、どちらのファンであっても切り替えるのは難しかったのではないかと、推察される。
(追加:2013年4月25日)
1973/ 6/20 Bayfront Centre, St Petersburg, United States
この時期のクリムゾンのライヴはセット・リストを殆ど変えていないことから、ライヴの全容を収録した作品であることが判る。
そうなると残念なのはその音質である。 音が突然こもったり、ピッチが極端に変化したりといったことが頻出する。 音質全体を飛躍的に向上させることに比べれば上記の問題の補正は比較的容易なはずであり、有り体に言えば手抜きな内容である。
1973年音源の発掘はこの5年位で大きく進んだこともあり、フィジカル・ディスク化はされていないものが多い。 音質改善はフィジカル・ディスクのリリース時になるのかもしれない。
(追加:2024年6月25日)
1973/ 6/21 Auditorium, West Palm Beach, United States
ライヴの全容を収録した作品ということだけで充分価値はあるのだが、本作品の最大の特徴は ” Improv II ” である。
DGM Live の解説にも記載してあるが、4分過ぎから始まるフリップによるメロトロン演奏にブルフォードのドラム、クロスのヴァイオリンが順番に絡んでくるのだが、この辺りは ” Starless ” のイントロ・パートというか中間パートを彷彿させる。
その後演奏は徐々に激しくなっていき ” The Talking Drum ” に繋がる頃には ” Starless ” 要素は無くなってしまうのだが、その手応えから演奏パターンとしてストックされたのに違いない。
(追加:2024年6月25日)
1973/ 6/23 Richards Club, Atlanta, Georgia
DGM Live からリリースされた、1973年6月のアメリカ・ツアーからの音源。 クロスがアップになったジャケットが格好良い。。
コンパクトにまとめられた、というかまとめすぎた感があるセット・リストは、『
Larks' Tongues In Aspic 』
のプロモーションが主目的であったことが理由と思われる。 インプロももう少しはじけてくれれば、もっと楽しむことができると思う。
そんな中で本作品のウリは、最初期の ” Dr. Diamond ”
ということになる。1974年のテイクと中間部が異なっているのが大きな特徴だと思う。
1974年の音源に比べて発掘が遅れている1973年の音源が、今後もっとリリースされることを期待したい。
(追加:2008年7月11日)
1973/ 6/25 Central Park, New York, United States
イギリス、ヨーロッパ、北米と続いた1973年前半のツアーからの現段階での最終音源。
この日の演奏はTV番組用に録画されており、『 Starless And Bible Black 』 の 40th Anniversary Edition において ” Easy Money ” と ” Fragged Dusty Wall Carpet ” が収録されている。 本音源はオーディエンス録音で構成されているのだが、” Improv - Fragged Dusty Wall Carpet ” だけが前述のTV番組の音源が使われている。 だったら ” Easy Money ” もTV番組音源を使えばメドレーの流れがもっと自然だったのにとは思う。
選曲は相変わらずだが演奏は全般的に素晴らしい。 ステージ上のカメラの数も多く、「撮られている」ことをメンバーが意識したことがプラスに働いたものと思われる。
更に付記すると、ジャケット写真が良い。 TV番組用映像から ” Easy Money ” が始まった直後を切り出したもので、カラー補正もされておりウェットンの格好良さが際立っている。
(追加:2022年12月25日)
1973/ 9/19 Le Capitole Theatre, Montreal, Canada
2ヶ月半を空けて再開された北米ツアー初日の演奏。 先にリリースされていた翌日同会場の内容、及び編集方法からライヴ全体は収録されていないと推測される。
先ずはやはり ” Fracture ” である。 中間部のパートは徒に長く、ウェットンのベース・パートも未完成である。 この2ヶ月後のアムステルダムでの名演前にレパートリーから外されなかったのは幸いである。
またリズムボックスを使った ” Improv ” も緊張感の無い演奏なのだが、ぶった切るかのように ” Larks Tongues In Aspic Part II ” のイントロが始まるところが只管格好良い。
(追加:2024年10月25日)
1973/ 9/20 Le Capitole Theatre, Montreal, Canada
9月19日から始まった北米ツアーの2日目の演奏。
2ヶ月ぶりのこのツアーから、” The Night Watch ”、” Lament”、そして ” Fracture ” が新たにレパートリーに加わったのだが、やはり ” Fracture ” 最も興味深い。 既にリリースされている9月23日のライヴでの演奏と同じくウェットンのベース・ソロ・パートは完成していないし、全体的にテンションは低い。 演奏が難しいことがその理由なのだろうが、この後演奏の難易度を上げながら完成度も高めていき、僅か2ヶ月後にアムステルダムでの名演に至るのだから驚異的としか言いようがない。
1973年後半のキング・クリムゾンは、人間関係の悪化を犠牲にしながらも発生したケミストリーでバンドが成長していく、という稀有な状態であったと言える。
(追加:2021年4月25日)
1973/ 9/22 Academy Of Music, New York, United States
ニューヨークで行われたライヴを収録した作品。
演奏曲目、曲数からほぼライヴの全貌を捉えていると思われるが、音質は非常に良くない。 9月19日のモントリオール音源は音質はソコソコであったがカットされている曲が多く、本作品はその逆である。 ライヴの全貌を捉え、かつ音質も良い作品がもう少し増えれば良いと思うが、1973年の音源で発掘が遅れたものは総じて問題点が多い。
特に ” Improv ” はインプロであるが故に脳内補完が難しく、この時期のライヴの醍醐味であるインプロそのものが不明確なのが残念である。
(追加:2024年10月25日)
1973/ 9/23 Orpheum, Boston, United States
2018年以降、発掘が活発となった1973年音源だが、その殆どの音質は悪く、演奏を聴くことに集中することすらできないものもあった。
ただ本作品は久しぶりに安心して聴くことができる作品である。
そして何よりも本作品の最大の成果は、” Fracture ”
の最初期の演奏が確認できることである。
ジョン・ウェットンのベース・ソロは爆発していないし、それどころかそもそもの楽曲の難しさがそのまま提示されてしまっているような演奏ではあるが、本テイクを起点に
” Fracture ” の進化を確認していくという新たな楽しみを見出すことができる。
あともう一つ付け加えるとすると ” 21st
Century Schizoid Man ” でのフリップのギター・ソロの入りのロング・トーンが格好良い。
(追加:2019年1月25日)
1973/ 9/25 Coliseum, Williams Town, United States New!
ボストンから同じマサチューセッツ州のウィリアムズタウンに移動して行われたライヴを収録した作品。
実際には演奏されたであろう ” Book Of Saturday ” や、ラストの ” 21st Century Schizoid Man ” が収録されていないことが容易に推測できる程、この時期のライヴはパターン化されている。
新曲の ” The Night Watch ”、” Lament”、そして特に難曲である ” Fracture ” を完成させることが優先されたのかもしれないが、それだけではちょっともったいない気がする。
(追加:2024年11月10日)
1973/ 9/28 Performing Arts Centre, Milwaukee, United States New!
ミルウォーキーで行われたライヴを収録した作品。
ちなみにこの日を含め9月25日から10月1日まで、キング・クリムゾンは移動をしながら7日間連続でライヴを行っている。 9月から始まった北米ツアーはセットリストが殆ど変わらず、” Fracture ” の完成を目指すことが目的のようにも思えてしまうのだが、やはりこの無茶なブッキングにそもそもの問題があると思う。
またこの時期のライヴはセットリストが固定化されているため、この作品にはライヴの後半だけが収録されていることが判る。 ” Larks' Tongues In Aspic Part II ” と ” 21st Century Schizoid Man ” というクライマックスが完全収録されているのは嬉しいが、面白みのない ” Improv ” よりも ” Fracture ” の冒頭部分をしっかりと収録してほしかった。
(追加:2024年11月10日)
1973/10/ 6 University Of Texas, Arlington, Texas
1973年2回目のアメリカ・ツアーからの音源。
『 Larks' Tongues In Aspic 』 の楽曲に、『 Starless And Bible Black 』
に収録される楽曲が新曲として追加された、お得感の強い作品。
” Fracture ” には途中 ” Starless ” でのベースのフレーズが出てきたり、” Lament ”
のギター・ソロがスタジオ・テイクと全く異なっていたりと、成長過程を確認することができて興味深い。
また、一時的に終わったリズム・ボックスを使ったインプロも披露されている。
(追加:2013年5月10日)
1973/10/12 Winter Land, San Francisco, United States
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発掘が遅れている1973年音源の中でも、9,10月の北米ツアーの音源は特に少ない。 同年3月から7月の欧州、北米ツアーは 『 Larks' Tongues In Aspic 』 のプロモーション色が強く選曲/曲順とも変化が乏しかった一方、同年後半のツアーは只管演奏に取り組んだ結果としてヴァラエティにも富んだ上で完成度が高いライヴが多いだけに、もっと発掘を進めてもらいたい。
本音源は9,10月の北米ツアー後半のサンフランシスコでのライヴを収録している。 音質こそ悪いが ” The Night Watch ”、” Lament ”、そして ” Fracture ” といった新曲に加え、この編成での ” Cat Food ” の演奏が初めて収録されている。
CD1枚相当の音源しかない理由が共演者との兼ね合いで元々短い演奏だったのか、それとも海賊録音音源が残されていなかったのか判らないが、もう少し聴いてみたかった。
(追加:2023年1月10日)
1973/10/23 Apollo, Glasgow, Scotland
『 The Great Deceiver 』 にも収録された1973年のグラスゴー音源の完全版。 曲数、収録時間とも約2倍となっているのが嬉しい。 そしてその追加音源の中では、” Lament ” のギター・ソロの入り方がおよそフリップらしくない所が面白い。 フリップのアナウンスにある通り、最初からレコーディングを計画していただけに演奏も音質も素晴らしく、1973年音源としては、最強盤である。 (追加:2013年5月10日)
1973/10/26 Rainbow, London, England
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同じレインボウでの3月のライヴ音源が著しく悪かったのに対し、本作品はカセット録音ではあるが普通に聴くことができる作品である。
そのため良くも悪くも、同時期のグラスゴーでの音源(10/23)やアムステルダムでの音源(11/23)が比較対象となってしまう。
そもそもレコーディングを前提に行われた2つのライヴは、音質状態以前にバンド側の気合の入り方が異なっており、テンション高めの演奏が繰り広げられている。
それらに対し本音源での演奏は突出したところがなく、セットリストの変化の無さも残念ながらマンネリを感じてしまう。
これで ” Fracture
” が凄まじければ聴きどころになったのだが、同曲の後半での爆発は1974年までのお預けとなっている。
(追加:2018年3月10日)
1973/11/ 2 Audimax, Hamburg, Germany
勿体ぶったかのように少しずつリリースされる1973年音源。
流石に今になって発掘・リリースされることもあってか、音質は良くないものが多く、本作品もしかりである。
そして本作品の録音上の最大の問題点は、よりによって ” Fracture ” がジョン・ウェットンのベース・ソロ直前で突然終了してしまうことである。
同曲においてウェットンのベース・ソロが爆発するのは1974年以降のライヴにおいてであり、もし本音源が突然終了することなく続いていたとしてもそれ程期待できるものではなかった、とは言えである。
録音テープの都合もあったのだろうが、『 Starless And Bible Black 』 がリリースされる前の新曲としての ”
Fracture ” の評価は、こんなものであったのかもしれない。
(追加:2018年6月25日)
1973/11/ 3 Jahrhunderthalle, Frankfurt, Germany
1974年音源に比べて発掘が遅れている1973年音源の新作。
特に秋のヨーロッパ・ツアーについては、グラスゴウとアムステルダムという強力な2音源があるためか、『 Starless 』
においてもその2音源の掘り返しに労力が割かれ、新音源の発掘が進まなかった。
今回新たに本音源が発掘されたのは嬉しいことだが、8人クリムゾンが活動しているタイミングでのリリースは、ちちょっと勿体無い。
全体に音質は良くなく、更に ” Larks Tongues In Aspic Pt II ”
もラスト前で唐突に終了するといった元音源の問題もあるが、” Fracture ”
にキレが無いといったように元々の演奏に魅力がないところが、残念である。
(追加:2017年7月25日)
1973/11/12 Palatza Delo Sports, Turin, Italy
ここに来て連続して発表された1973年の音源。
この3日後に行われたチューリッヒのライヴからは 『 Starless And
Bible Black 』 に ”
Mincer
” が収録されたり、他の楽曲も 『 The Great Deceiver 』
等のフィジカル・メディアでリリースされてきたが、今まで明らかでなかった本公演の音源がリリースされたのは嬉しい。
” Night Watch ”
の途中で音が割れたり、” Larks Tongues In Aspic Part II” が微妙にフェードアウトした後 ” 21st Century
Schizoid Man ” がまた微妙にフェードインしてくる等のソースの問題も若干あるが、演奏曲目も必要十分なもので満足度が高い作品である。
ただやはり、” Fracture ” の演奏は緩い。 特にウェットンのベースのソロはもう少し爆発してほしかった。
(追加:2017年8月25日)
1973/11/13 Palazzo Dello Sports, Rome, Italy
あらたに追加された1973年の音源。 この年の音源リリースは他の年に比べ圧倒的に遅れているが、私はこれを 『 Starless 』 箱に続く
『 Bible Black 』 箱のリリースに向けた密かな布石だと思っている。
セットリストは前日と全く同じではあるが、録音状態だけでなく演奏内容も凌駕している。 不慣れな ” Fracture ”
でのウェットンのベースが未爆発なことだけが前日通りだが、インプロを挟んだ ” Easy Money ” から ” Exiles ”
の色気は堪らないし、” 21st Century Schizoid Man ” でのフリップのギターは、DGM Live において「
hair-raising soloing 」と記載された程の凄まじさがある。
(追加:2018年1月10日)
1973/11/15 Volkshaus, Zurich, Switzerland
本作品は、D.G.M. Collectors' Club の41作品目として販売されたものと同じもの。
(追加:2017年8月25日)
1973/11/19 Salle Playel, Paris, France
アムステルダムでの名演&名録音の4日前のライヴを収録した作品。
『 Starless And Bible Black 』
でスタジオ録音と間違えられる程のアムステルダムの録音コンディションと、海賊録音を比較するのは意味無いと思うが、それにしてもこの録音は酷い。DGM
チームによるリストアを施した上でこのレベルなのだから、元音源はもっと酷いものだったと思われる。
DGM Live
の解説には耳が慣れれば演奏の良さが判ると記載してある。 この時期のライヴがそもそも悪い訳はないが、流石にそれは褒めすぎだと思う。
(追加:2021年1月10日)
1973/11/27 Palau Dels Esports, Granollers Barcelona, Spain
アムステルダム4日後のライヴを収録した作品。
音質はやはり悪く、” Easy Money ”
では途中とても聴きづらくなったりする。 ただ音質が悪いにも関わらず妙に生々しいところもあり、” Larks' Tongues In Aspic,
Part I ”
でのクロスのヴァイオリン・ソロがヘロヘロなのは、元テープのピッチのせいではなくチューニングの問題なんだろうなとなんとなく判ったりする。
またアムステルダムの段階で完成形となった ” Fracture ” も良さも堪能することができる。
とは言いながらも、『
Earthbound 』 が高音質と思えてしまう程の録音コンディションであることは、承知しておく必要がある。
(追加:2021年1月10日)