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Books on Related Musicians

1977

エマーソン・レイク&パーマー    衝撃のロック・トリオ伝

編集者:吉田弘和

出版社:新興楽譜出版社

新興楽譜出版社(現在のシンコーミュージック・エンタテイメント)から出版されたELP本。 『 Works 』 のリリースが案内された段階までがカヴァーされている。
1977年である。 Windows95 が発売されてインターネットが普及した、と言って良いのが1997年だとするとその20年前になる。 ミュージシャンやバンドが自ら情報を発信することもなく、またインターネット上で集合知が醸成される前の時代、限られた情報でロックを語る洋楽文化ならではの書籍である。
ただ個人的には、この洋楽文化ノリは好きである。 本書の後書きに「今泉洋氏が数少ない資料を素に、三人の言葉を織り込みながら、彼らの音楽を象徴するかのごとく自由奔放フリー・フォームに書き上げた」と記載してあるが、些細な正確性よりも個人の熱量の方が人の心を打つことが本書を読むとよく判る。
勿論何もかもが自由奔放フリー・フォームに記載されているわけではなく、来日公演については時系列で詳細に記載されており、資料価値も高い書籍である。
(追加:2024年5月10日)

1979

イエス

著者:黒田史朗

出版社:音楽之友社

1979年という段階に出版された特異点のようなYES本。 『 Tormato 』 迄のYES について事象を中心に纏められている。
1981年に出版された北村昌士さん著の 『 キング・クリムゾン  至高の音宇宙を求めて 』 は、英米の音楽雑誌への掲載情報を 『 A Young Person's Guide To King Crimson 』 のブックレットを参考にしたと思われる一方、YESについてはそのようなまとまった情報は無かった。 それ故本書の情報の殆どは オリジナルの雑誌から直接集めたものと思われる。
そのことは前書きに「筆者は可能な限りイエスに関する資料を収集、分析し」という記載があること、そしてカバーに小さく「 Special thanks to Melody Maker, New Musical Express, Record Mirror 」と記載されていることからも判る。
(追加:2024年5月10日)

1989

ピーター・ガブリエル(正伝)

著者:スペンサー・ブライト著、岡山徹訳

出版社:音楽之友社

出版時期から判るように、幼少期から 『 So 』 までのピーター・ガブリエを纏めたもの。
ガブリエル本人だけでなくガブリエルと妻との関係といったプライベートにまで踏み込んだ内容まで記載されている。 プライベートの音楽活動への影響は興味深いが、例えばエルハルト式セミナー訓練への参加と歌詞の変化が一対一の関係とも読み取れる部分はちょっと強引にも思える。
本書ではまた1975年にリリースされたチャーリー・ドレイクのシングル 『 You Never Know 』 の制作に至るまでの経緯が記載されていて興味深い。 ロバート・フリップ、イーノ、キース・ティペットが参加したとされるレコーディング現場についての記載は無いのだが、ジェネシス時代からの知り合いだったマーチン・ホールという詩人との共同作業から生まれた作品であったことは、本書から初めて知ることができた。
(追加:2024年5月10日)

1994

ブライアン・イーノ

著者:エリック・タム著、小山景子訳

出版社:水声社

例えば、フリップの一連のサウンドスケイプものの中からある1曲を取りだし、1分、いや5分聴いたところでその曲名を当てるクイズを行ったとしたらどうだろう? 個人的には全く自信ががない。
本書の著者エリック・タムは、仮にイーノの環境音楽もので同じことをやったら全曲当てることができるはずである。 『 ロバート・フリップ  キング・クリムゾンからギター・クラフトまで 』 と同じ筆者による本書を読めば、これが冗談ではないことがわかるであろう。
『 No Pussyfooting 』 と 『 Evening Star 』 についての解説は特筆もの。
(追加:1998年8月1日)

1996

地球音楽ライブラリー  エマーソン、レイク&パーマー

著者:松井巧

出版社:TOKYO FM出版

地球音楽ライブラリーの EL&P 版
EL&P だけではなくグレッグ・レイクのソロ、プロデュース作品についての解説も掲載されている。
解説はマンティコアからりりーすされた作品もカヴァーしているのだが、ピート・シンフィールドを関連ミュージシャンと位置づけてその関連作品も掲載してほしかった。
勿論これはクリムゾンのファン本意の意見に過ぎないのだが。
(追加:1999年7月25日)

1997

地球音楽ライブラリー  イエス

著者:松井巧

出版社:TOKYO FM出版

地球音楽ライブラリーの YES 版
ブルーフォードの作品についての解説は、同シリーズのキング・クリムゾン編よりもむしろこちらのの方が細かく多岐にわたっている。
またクリムゾンの立場とは直接関係の無いことではあるが、本書のリック・ウェイクマンについての充実度は尋常ではない。著者の思い入れが爆発しているのかもしれないが、こういった偏りはファン心理としてはよく理解できる。
(追加:1999年7月25日)

1999

イエス・ストーリー  形而上学の物語

著者:ティム・モーズ著、川原真理子訳

出版社:シンコー・ミュージック

イエスの新旧メンバーのインタビューを、アルバム毎、テーマ毎にまとめたもの。 ロック本としてこういったやり方があったんだと目から鱗の本。 内容も又素晴らしい。
ブルーフォードのインタビュー、及びブルーフォードについての他メンバーのコメントを読んでいると、生真面目で(多分)暗い性格がよくわかってくる。
アラン・ホワイトの脳天気で思いこみの激しい性格も明らかにされており、ブルーフォードとホワイトの対立が、ドラム・スタイル以前に性格的なものであることがよくわかる。
(追加:1999年7月25日)

2005

イエス・ファイル

監修:片山伸

出版社:シンコーミュージック・エンタテイメント

YES本は数多くありまたどれも素晴らしい内容なのだが、データベースという観点から捉えると本書が最強かもしれない。
メンバー変遷毎に書き下ろしのヒストリーと過去のインタビュー記事をまとめ、詳細なディスコグラフィーや映像作品の紹介も読み応えがある。
そして特筆すべきは国内外の他のYES本を紹介していることで、紹介内容の表現は抑えられているものの網羅性という意味では特出している。
また、本書の前書きには新ネタが織り込まえていると記載されている。 YESに精通していない私には、新ネタなのか私が初めて知っただけのことなのかことなのか判らず残念なのだが、YES好きの方にはたまらない内容なのであろう。
(追加:2024年5月10日)

2008

エイジア    ヒート・オブ・ザ・モーメント

著者:デヴィッド・ギャラント著、金子みちる/宮坂聖一訳

出版社:マーキー・インコーポレイテッド

2007年に出版された原著の翻訳版。
1980年代の活動だけではなく、結成前、ジェフ・ダウンズのプロジェクトのような期間、消滅期、そして再結成への歩みまでが年代順に纏められている。 各章のタイトルはエイジアの楽曲から取られているのだが、そのセンスが秀逸である。 再結成後についての章のタイトルが「 Time Again 」なのは、ベタではある素晴らしいと思う。
差し込まれるメンバーの発言がいつの段階のものかが判らないという難点はあるものの、作品の背景も良く理解できて、読後まで待てず読中にエイジアの作品を聴きたくなることは必至である。
総じてミュージシャン本をファンが書く場合、その愛を全面に出すパターンと抑えるパターンがあるが、前者はから滑りしてしまうことがある。 一方本書はエイジアに対する愛に溢れながらエンターテイメント性も備えた内容となっている。
(追加:2024年5月10日)

2012

ビル・ブルーフォード自伝    イエスとキング・クリムゾンを叩いた男

ビル・ブルーフォード著、池田聡子 監修・訳

出版社:日興企画

ビル・ブルーフォードの自伝。
非常に読み辛い。 例えばP23に「僕は、運転手の隣、つまり助手席に座っていた。」との記載がある。 これなど「僕は助手席に座っていた」でよいはずである。 もちろん特定の箇所にフックを効かすためにこのような表現をすることはある。 ただブルーフォードは一文一文ほぼ全てにこのような回りくどい表現を使っている。 そして文全体が次の文に出てくるワンフレーズを回りくどく言い換えているだけだったりすることもある。
更に一つの章の中で時系列で記載しているところと特定のテーマを記載しているところが混在しており、しかもそれが先程のような表現で記載されているので、相当の集中力が必要な書籍となっている。
勿論丁寧に読み進めることによってブルーフォードの音楽への取り組み方とか、史実の背景が判ったりするのだが、読み損ねてしまっていることが多くあるだろうと我ながら思う。
ちなみに本書の日本語版が出版された際、青山の LAPIN ET HALOT という会場でブルーフォードのトークショー&サイン会が開催された。 会場に入った際に後方で椅子を整理している人がいたのだが、よく見たらブルーフォード本人であったことを今でも覚えている。
(追加:2024年5月10日)

 

2014

デレク・ベイリー    インプロビゼーションの物語

著者:ベン・ワトシン著、木幡和枝訳

出版社:工作舎

上下2段、600ページ弱にも及ぶデレク・ベイリーの解説書。 インタビューや雑誌の記事等を使いながら、ベイリーの音楽に対する向かい方、ベイリーの作品について丹念に紹介している。
ベイリーの作品に触れる機会は多いが個人的には彼の作品は苦手である。 ただ本書を読んだ後、所有しているベイリーの作品を全て聴き直してしまった程説得力のある作品である。
ジェミー・ミューアについて多くのページが割かれている他、Incus の解説書としても秀逸である。
カンパニー、カンパニー・ウィーク、そしてカンパニーの作品については、本書無しではその入口にも立つこ とができないと思う。
(追加:2021年8月10日)

2016

文藝別冊  エマーソン・レイク&パーマー  鍵盤の魔術師の伝説

編集人:阿部晴政

出版社:河出書房新社

文芸別冊シリーズでは、プログレ系特集が組まれているが、これはそのエマーソン、レイク&パーマー版。プログレ系ライターだけでなく哲学者、詩人、文学者による文章も多く、いつもと違う視点でもエマーソン、レイク&パーマーが語られているのが興味深い。
また、2016年という発売タイミングと「鍵盤の魔術師の伝説」というサブタイトルから判るように、全体的にキース・エマーソンの追悼趣旨が色濃く出ている編集である。 勿論それは正しいと思うし、エマーソンについて深く知ることができる内容である。 ただその結果としてグレッグ・レイクのウェイトが少なくなっているのがちょっと残念だったりする。
(追加:2024年5月10日)

2017

イエス全史  天上のプログレッシヴ・ロックバンド、その構造と時空

著者:マーティン・ポポフ著、川村まゆみ訳

出版社:DU BOOKS

2016年に出版された 『 Time And A Word : The Yes Story 』 の翻訳版。
YES のアルバム・タイトルにかけた原題の方が本書の内容を的確に表現している。 YES について歴史順にまとめ、各メンバーや関係者のコメントを併記している。 コメントは特定の事象が発生した時点のものではなく後になって振り返ったものも含まれているため、あくまでもコメント段階での歴史認識という注釈は入るが客観性は保たれている。
ただそうした編集方針に反して蛇足なのは著者自身によるアルバム解説である。 著者程 YES に精通している訳ではないので、私はその適格性がどれ程なのか述べようがない。 だが ASIA の 『 AQUA 』 について「過去の陳腐なエイジアに欠けていた”成熟感”があると」との記載から、是非の話ではなく時空が全く異なる世界で生きている方だということがよく判る。
(追加:2024年5月10日)

2019

ジョン・ウェットン    ベースを抱いた渡り鳥

編集人:笹川孝司

発行:シンコー・ミュージック・エンタテインメント

ジョン・ウェットン死後に発行された作品。 私は本書を書店で初めて見た時、その表紙のウェットンの格好良さ、写真の色合いの良さに腰を抜かしそうになった。
先ず過去に遡ったウェットンの美麗写真、インタビューが充実している。 莫大なロック・コンテンツを持つシンコー・ミュージックにしかできないであろう企画である。
ディスコグラフィーやセッション・リストも多くをカヴァーしているし、ウェットンに対する評論も読み応えがある。
これらに加えテリー・ボジオのインタビューがまた素晴らしい。 ウェットン死後に行われたインタビューなのだが、ウェットンとの演奏について語っているのは勿論、ウェットンとの関係の濃淡の推移まで実直に語っている。
ウェットンの人柄、ボジオのウェットンに対する思い入れがあってのことだろうが、ボジオからここまでの発言を引き出したインタビュアーもまた秀逸だと思う。
(追加:2024年5月10日)

2020

フリー&バッド・カンパニー大全

編集人:西村浩一

発行元:シンコーミュージック・エンタテイメント

シンコーミュージック・エンタテイメントの「大全」シリーズのフリー&バッド・カンパニー版。
新興楽譜出版社時代から同社が持つ写真やインタビュー等の豊富なコンテンツと、書き下ろし記事、LP/シングルのカラー写真付きディスコグラフィー等々これでもかという程の内容である。
フリーとバッド・カンパニーの比率はヴォリューム面では2対1程度であるが、質については同等なのが嬉しい。 1975年の来日時のボズのインタビューも再掲されている。
いずれにせよバッド・カンパニーやボズについて、これ程フィーチャーされた書籍が今後出版される可能性は少なく必携である。
(追加:2024年5月10日)

2021

ロキシー・ミュージック大全

編集人:西村浩一

発行元:シンコーミュージック・エンタテイメント

シンコーミュージック・エンタテイメントの「大全」シリーズのロキシー・ミュージック版。 大判でカラー満載300ページにも及ぶ書籍が3,500円という価格で採算がとれるのか、人ごとながら心配になってくる。
編集方針は判りやすく、ロキシー・ミュージックとブライアン・フェリーを中心にフィル・マンザネラ、アンディ・マッケィについてのカラー&詳細なディスコ・グラフィーがあり、イーノやウェットン等その他のミュージシャンについての紹介は少なめとなっている。
ビジュアルに訴える要素も多かったバンドだけに残された写真も多くシンコーミュージック・エンタテイメントというか『ミュージック・ライフ』誌の真骨頂が発揮されている内容である。 まぁブライアン・フェリーの強すぎる自己愛表現が続くとお腹がいっぱいになったりもするが。
その他1975年段階でのイーノのインタビューや、1978年段階でのエディ・ジョブソンのインタビューも再掲されており、ロキシー・ミュージックについてはこの一冊で必要十分である。
(追加:2024年5月10日)

2022

ジョン・ウェットンズ・ワークス

編集人:西村浩一

発行:シンコーミュージック・エンタテイメント

ジョン・ウェットンのソロ、セッション、バンドでの作品をヴァージョン違いを含め網羅した作品。 そこにコンサート関連グッズ等も加わり、ワークスというタイトルに相応しい内容である。
シンコーミュージック・エンタテイメントからは、2019年に 『 ジョン・ウェットン  ベースを抱いた渡り鳥 』 という過去インタビューや論評を中心に纏めた書籍が出版されているが、それに対し本書は客観情報に徹した編集がされている。
この2書籍についてはどちらが好みであるかとかそういったことをツベコベ考えずに、市場から見かけなくなる前に購入すべきだと思う。
(追加:2024年5月10日)

別冊ele-king  イーノ入門 - 音楽を変革した非音楽家の頭脳

編集:野田努 + 小林拓音

発行:Pヴァイン

2022年6月から8月にかけて、イーノは京都中央信用金庫旧厚生センターにおいて、『 AMBIENT KYOTO 』 というインスタレーションを開催している。 本書はその開催前というベスト・タイミングで発表された「全キャリアを俯瞰するディスクガイド(本書表紙より)」である。
タイトルは「入門」となっているが、それは全体を網羅しているという意味であって初心者向けという内容ではない。 1973年の 『 Here Come The Warm Jets 』 から2020年の 『 Film Music 1976-2020 』 までのソロ作品/共作作品がリリース順に1枚1枚丁寧に解説されており、かつ当該時期のコラボレーションについての解説も差し込まれている。
本書と 『 レコード・コレクターズ 』誌の2004年7月号のイーノ特集は、イーノの作品に触れるにあたって必携である。
(追加:2024年5月10日)

AGI 2 / ENO

監修:中村泰之

発行:きょうレコーズ

阿木譲さんによるイーノについての文章のアーカイブ。
雑誌 『 rock magazine 』 での論評やインタビューだけでなく、アルバムのライナー、本人のブログ等が纏められた300ページ超の力作である。
本書でのイーノは、イーノ本人というより阿木譲さんを通したイーノである。 ただそこに稚拙な自分語りが一切ないため、上質なエンターテイメントとして見事に成り立っている。
U2 のプロデュースを始めた1980半ば以降のイーノの音楽に対して多分興味を無くしたのだと思うが、1970年代初頭から1980年代半ばまでのイーノの活動とその背景を知るためには本書は必携である。
(追加:2024年5月10日)

2023

グレッグ・レイク自伝    ラッキー・マン

著者:グレッグ・レイク著、前むつみ訳

発行:シンコー・ミュージック・エンタテインメント

生前に書かれ死後の2017年に出版されたグレッグ・レイクの自伝。
幼少期から末期のすい臓に直面しているところまで、思い入れに伴うだろう濃淡はあるものの、ASIA や The Who のレコーディングに参加したことなどを含め時系列に音楽活動が記載されている。
エマーソンとの愛憎相半ばする関係についての記載は、同じ事象についてエマーソンの捉え方とは異なることも当然あるだろうが、二人とも故人になったことを踏まえると何とも切なくなる。
(追加:2024年5月10日)

アンディ・サマーズ  ポリスの音響設計士

編集人:西村浩一

発行:シンコー・ミュージック・エンタテインメント

本書のリリースが告知された時の驚きは今でも覚えている。 これがスティングであれば、Every Breath STING Takes とかいうタイトルを付けた書籍の内容が容易に想像できるのだが、アンディー・サマーズで「音響設計士」である。 個人的に大好きなギターリストではあるものの、サマーズで一冊の本が成り立つのかと思わざるを得なかった。
しかし実際に手にとってみると、その不安を良い意味で裏切る程の素晴らしい内容であることが判った。 シンコーミュージック・エンタテイメントが 『 MUSIC LIFE 』 誌に加えて 『 YOUNG GUITAR 』 誌を出版していたからこそできた企画だと思うが、ポリス前 / ポリス活動中 / ポリス後の豊富なインタビュー、機材の紹介と解説、奏法分析とその充実度は尋常ではない。
ポリスのアルバムの写真がカラー・ページで紹介されている一方でサマーズのソロの写真がモノクロなのはちょっと残念であるが、これによって本書のセールス的不安が解消できたのであれば大した話ではない。
(追加:2024年5月10日)

2024

ボストン/フォリナー 幻想と栄光の旅路

編集人:西村浩一

発行:シンコー・ミュージック・エンタテインメント

デュラン・デュランとスパンダー・バレエではなくボストンとフォリナーで一冊の本を出すというアイディアは誰でも思いつきそうで思いつかないし、ましてそれを実行に移したシンコーミュージック・エンタテイメントは凄い。 音楽業界にも出版業界にも程遠い世界に生きているので的外れかもしれないが、自社が保有する過去コンテンツとどのように向き合い、かつそれをどのようにアウトプットすれば効果的なのかを、ある時点で同社の中で再検討されたに違いにない。 同社からここ数年の間に出版された書籍を読むとそう思わざるを得ない。
ボストンについては詳しくないので判らないが、フォリナーについてはディスコグラフィー、奏法解説、参加メンバーのプロフィールを新たに書き下ろし、そこに過去コンテンツであるグラビアをインタビュー(イアン・マクドナルドも)を再掲しており、これ以上の情報がまとまって出版されたことはない。
ちなみに本書が出版された際に、MUSIC LIFE CLUB で “あなたは、どっち派? 「ボストン」か「フォリナー」か?” というアンケートが行われた。 煽り企画に対して「両方とも好き」と答えるのは逆に大人気ないと思い、私はフォリナー一択で回答をした。
(追加:2024年5月10日)

Soまでのピーター・ガブリエル

編集人:西村浩一

発行:シンコー・ミュージック・エンタテインメント

発売前の段階で私は本書を「ファースト・アルバムから 『 So 』 までのガブリエルのソロ活動を纏めた書籍」と誤解していたのだが、正しくは「『 So 』 リリースまでのピーター・ガブリエルの音楽活動を纏めた書籍」である。
この編集方針は徹底しており、ガブリエルが参加していないジェネシスのスタジオ・アルバムを扱っていないだけではなく、ジェネシスのボックス・セットについてもガブリエル在籍時の部分のみ解説をしている。
編集方針がこれだけ徹底していると、今後「『 So 』 リリース後のピーター・ガブリエルの音楽活動を纏めた書籍」だけでなく、今回対象外となったガブリエル在籍時を含めた ジェネシス単独本の出版も可能なはずである。
圧倒的情報量と対象に対する愛が溢れた本が更に2冊出版される可能性があると思うと楽しみでしかたない。
(追加:2024年5月10日)