1981
The League Of Gentlemen : Robert Fripp
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1996
Thrang Thrang Gozinbulx Official Bootleg Live In 1980 : The League Of Gentlemen
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リーグ・オブ・ジェントルメン ( 以下 「 LOG 」
とする ) を語る際によく出るフレーズに
ジャイルズ・ジャイルズ&フリップ参加前にゴードン・ハスケルと組んでいたバンド名と同じ
クリムゾン解散後初めて組んだバンド
の2つがあるが、逆にこの2つ以外で語られることは昔も今も殆ど無い。
しかも、LOGとしてリリースした3枚のアルバムの内、現在廃盤になっていないのは、DGMからの
『 Thrang Thrang Gozinbulx 』 のみである。
フリップが結成、参加して、アルバムまでリリースしたバンドは、クリムゾン( G,G &F )、Sunday All Over The World、LOG
の3つしか無いことを踏まえれば、もう少し扱いが上であっても良いと思うのだけど...
LOGの活動略歴
『 The League Of Gentlemen 』 の裏ジャケット、エリック・タム著の 『 ロバート・フリップ キング・クリムゾンからギター・クラフトまで 』 (塚田千春訳 1993年宝島社) をもとに以下のようにまとめることができる。
1980年4月10日~7月22日
イギリス、ヨーロッパ、アメリカ・ツアー ツアー終了後、” Heptaparaparshinokh ” と ” Dislocated ” の2曲をレコーディング。 この2曲はそのまま 『 The League Of Gentlemen 』 と 『God Save The King』 に収録される。
1980年9月10日~9月21日
イギリス・ツアー
1980年11月13日~11月29日
イギリス・ツアー ツアー中の11月23日朝、ジョニー・トゥーバッドが解雇され、ケヴィン・ウィルキンソンが新メンバーとなる。 ツアー終了後、年内に
『 The League Of Gentlemen 』 に収録される残りの曲がレコーディングされる。
LOGの曲の分類
LOGの3枚のアルバム(『 The League Of Gentlemen (LOG) 』 『 God Save The King (GSK)
』 『 Thrang Thrang Gozinbulx (TTG) 』 ) に収録されている曲を、大きく4つに分類すると以下の通りとなる。
LOGの特徴がよく出た曲
LOGの代表曲を、収録回数が一番多い ” Inductive Resonance ” とシングル・カットまでされた ” Heptaparaparshinokh”の2曲とするならば、この2曲の、ギターのシーケンシャル・フレーズとキーボードの絡み、チープなニュー・ウェイヴ風な曲、ぎこちない(踊りにくい)ダンス・ナンバー
といった特徴が、そのままLOGの特徴と言えると思う。
Inductive Resonance ( LOG, GSK, TTG )
Minor Man ( LOG, TTG )
Heptaparaparshinokh ( LOG, GSK, TTG )
Dislocated ( LOG, GSK, TTG )
Eye Needles ( LOG, GSK )
Cognitive Dissonance ( LOG, GSK )
HG Wells ( LOG, GSK )
Trap ( LOG, GSK, TTG )
Ooh, Mr. Fripp ( TTG )
Farewell Johnny Brill ( TTG )
サウンド・コラージュ風の曲
J.G.ベネットのレクチャー、女性の会話、喘ぎ声等によるサウンド・コラージュ。
Indiscreet I ( LOG )
Indiscreet II ( LOG )
Indiscreet III ( LOG )
シンセサイザーによる多重録音による曲
特に ” Ochre ” は、ミニマル・フレーズの最終音のサスティーンに、次フレーズが重なるところがフリッパートロニクス的で興味深い。 フリップは 『 Recorder Three 』 においても、このパターンの ” Volo Ergo Sum ” を収録している。
Pareto Optimum I ( LOG )
Pareto Optimum II ( LOG )
Ochre ( LOG )
ギター・ソロが収録されている曲
これらの曲において、フリップは一定のリズム・パターンの上でディストーション・ギターを激しく弾きまくっている。 確かにギター・ソロ自体には興奮するが、曲自体の構成は安易で、LOGである必要性は全く感じられない。
Thrang Thrang Gozinbulx I ( TTG )
Boy At Piano ( TTG )
Thrang Thrang Gozinbulx II ( TTG )
Christian Children Marching, Singing ( TTG )
Thrang Thrang Gozinbulx III ( TTG )
LOGに対するフリップの情熱
ジョニー・トゥーバッドをLOGから解雇した1980年11月23日の朝、フリップはLOGに対しての関心を無くしており、新バンド(ディシプリン→クリムゾン)の結成を意識している。 このことは、『
The Essential King Crimson : Frame By Frame 』 付属のブックレットにおける、ロバート・フリップの1981年3月11日の日記に記載されている。
しかしながら、LOGに対するフリップの情熱はそれ以前に失われていたものと思われる。
LOGの目指したものが何であるかは分からないが、LOGとしての曲の完成形を前述の 「 LOGの特徴がよく出た曲 」 とするならば、77回のギグと2回のレコーディングを通じて9曲しかつくることができなかったことになる。 アルバムではサウンド・コラージュとシンセサイザーによる多重録音によって曲数を増やし、ライブではギター・ソロによって曲数を増やすしかなかったのである。
勿論、LOGというバンドとしての曲数の少なさを、フリップ一人に押しつけることは問題かもしれない。 しかしながらLOGのメンバーを考えてみると、リズム隊2人には作曲能力は無いことは(まず)間違いないだろうし、バリー・アンドリューズもXTCでの2枚のアルバム
( 『 White Music 』 と 『 GO2 』 ) においても僅か2曲 ( ” My Weapon ” と ”Super-Tuff ”
) しか作曲を行っていない。 フリップ以外に作曲を行えるメンバーがいなかったことは、フリップ自身も認識をしていたはずである。
このことから、LOGの曲数の少なさはフリップのLOGでの作曲意欲の欠如を表し、更にはフリップのLOGへの情熱が、バンド結成後の比較的早い段階から失われていたと想定することができる。
” Heptaparaparshinokh ” と ” Dislocated ” には2バージョンあるのか?
『 Thrang Thrang Gozinbulx 』 の日本語ライナーに 「 ” Heptaparaparshinokh ” と ” Dislocated
” の2曲は、 『God Save The King』 では再レコーディング・ヴァージョンに差し替えられている 」との記載がある。
しかしながら、『 God Save The King 』 におけるロバート・フリップのライナーには、「 on this album Kevin Wilkinson plays all but ” Heptaparaparshinokh ” and ” Dislocated .” 」と記載されていることから、 ケヴィン・ウィルキンソンのドラムによるヴァージョンに差し替えられていることはあり得ない。
更には、 聞き比べによる違いもが全くなく、また「再レコーディング・ヴァージョンに差し替え」た旨が記載されている資料を探したが、これも見つけることはできなかった。
よってここでは、『 The League Of Gentlemen 』 と 『 God Save The King 』 に収録されている” Heptaparaparshinokh
” と ” Dislocated ” は、(リミックスこそされているものの)同一ヴァージョンであると判断したい。