2011
Drums Between The Bells - Brian Eno and the words of Rick Holland
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前作 『 Small Craft On A Milk Se 』
から短期間でリリースされたイーノの作品。 今回は、リック・ホランドなる詩人とのコラボレーションである。
作品にこうした記号を付加するのはイーノの定番であり、その意味付けを考えるより、「あ、今回は詩人とのコラボレーションなのね」とそのまま受け止めるだけの対応が一番正しいように思える。
70年代のイーノを彷彿させるようなひねくれた音が時折飛び出すのが、本作品の特徴である。 もちろん、手弾きなどではなく、KAOSS
PAD
のようなツールのタッチ・パッドの上を指を這わせているだけなのかもしれないが、こういう音の登場のさせ方の上手さが、イーノの最大の魅力である。
(追加:2011年7月10日)
Panic Of Looking : Brian Eno and the words of Rick Holland
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イーノの新作、というより 『
Drums
Between The Bells 』 からのアウトテイクス集。
イーノのインタビューを読むと、無尽蔵に楽曲がストックされているような発言が出てくるが、今回の作品はそんな楽曲がお蔵入りになることなく一般リリースされたものである。
アウトテイクス集が enoshop
限定作品ではなく、今回一般リリースされた理由は良くわからない。 『
Drums Between The Bells 』
がコマーシャル的に大成功したとは思えないし、楽曲自体も地味。 EP扱いのため安価ではあるが入門編には適さない。 『
Drums Between The Bells 』
とのセット購入、というのが一番適切な触れ方だと思う。
(追加:2011年11月10日
Lifelines : Andrea Corr
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Produced by John Reynolds. 2&5 co-produced by Brian Eno
Backing Vocals : Brian Eno (2-5)
Keys and Sounds : Brian Eno
アイルランドの女性シンガー、アンドレア・コアーの作品。
これは U2
でイーノが試みた手法そのままである。ギターを含めリズム隊以外の全ての楽器にタップリとかけられかけられたエコーの音触りは、一聴しただけで誰でも
U2 を思い浮かべるはずである。
2004年の 『 How To Dismantle An Atomic Bomb
』 あたりから、U2 の作品にイーノが参加してもその記名性は無くなっていたが、イーノ自身はその手法を他の参加作品で流用していた。
ただそれを小出しにすることで絶妙なアクセントになっていたのだが、本作品のように全編にフィーチャーされると、「あ、U2
ね」以外の感想は出てこない。
手練手管のイーノはそんなことは承知していはずで、本作品でもろ出しした理由は他にあると思うのだが、よく判らない。
(追加:2019年4月10日)
Anna Calvi : Anna Calvi
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Brian Eno : Vocals & Piano on track 3, Vocals on track4
イタリア系のイギリス人女性シンガー、アンナ・カルヴィのファースト・アルバム。
日本盤CDの帯には、アークティック・モンキーズやニック・ケイブがファンを公言していることと並び、「ブライアン・イーノが彼女を全面的にサポート」とか「参加アーティスト ブライアン・イーノ」と大きくクレジットされているのだが、そのイーノが参加しているのは2曲だけだったりする。 そしてその参加はバック・コーラスとピアノだけで、作品内容自体に直接関与しておらず、完成したプロダクトの仕上げに参加しただけと思われる。
ちょっと癖のある歌い方や、その歌い方を活かすようにドラマチックに展開するベタなアレンジ等、万人受けする作品ではないものの魅力的なところがあり、イーノを全面に出してプロモーションする必要は全く無かったと思う。
(追加:2019年4月10日)
Mylo Xyloto : Coldplay
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Enoxificiation and additional composition by Brian Eno.
イーノが関与したコールドプレイの最後の作品。
イーノは、プロデューサーからこそ外れているが、「 Enoxification 」 とクレジットされている。
こうクレジットされてしまうと、薄く拡がるようなシンセ音とか、残響は全てイーノによるものだと思ってしまうわけで、イーノにしてみればしてやったりということなのだろう。
コールドプレイというバンドに対しては是非どちらの印象も全くないが、バンド側がここまでやられてしまうのはちょっと、と思ってしまうのもわかる気がする。
(追加:2015年8月25日)
2012
Lux : Brian Eno
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Written by Brian Eno
Produced by Brian Eno
Additional Musicians :
Moog Guitar : Leo Abrahams
Violins and Violas : Nel Catchpole
イーノは凄い。
「ヴォーカル・アルバムだ」、「新レーベルからの販売だ」、「詩人とのコラボレーションだ」と、そして今回に至っては「21世紀初となるアンビエント作品」と、売る側がアウトプットの方式に基づくだけの納得感無い記号をつける一方で、イーノ自身は自分に対する記号の付け方、ハッタリの利かせ方が的確なのが凄い。
本作につてのイーノは、「七音階を使った21通りの五音グループ」に気づいたことが背景にあると語っている。 これがどれだけ音楽的に正しいことなのか良くわからないが、集中して聴き続けるには充分な動機付けになる。
イーノは新譜を出すと律儀に雑誌のインタビューに応えるが、自分の作品の最大のプロモーションが、自分の発言であることを充分に理解し、活用しているのだと思う。
(追加:2012年11月25日)
2013
Brian Eno X Nicolas Jaar X Grizzly Bear : Brian Eno X Nicolas Jaar X Grizzly Bear
A. Lux By Brian Eno ( Nicolas Jaar Remix ) AA. Sleeping Ute By Grizzly Bear ( Nicolas Jaar Remix ) |
2013年4月20日の Record Store Day 2013 で発売された 33 r.p.m. の12インチ・ディスク。
イーノの名前が前面に出て入るが、実際にはニコラス・ジャーというミュージシャンによるリミックス作品である。
前年(2012年)にブライアン・イーノ名義で発表した 『 Lux 』
のリミックスのみにイーノが関与していることになるが、どの部分からどこをどうリミックスしたかを判別するのは不可能な状態である。
(追加:2018年4月25日)
And I'll Scratch Yours : Peter Gabriel
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カヴァー・アルバム 『 Scratch My Back 』
を発表したピーター・ガブリエルが、同作後に自らの楽曲のカヴァー集を自らの名義で発表した作品。
なんとなく納得感のある人選の中に、イーノの名前もクレジットされている。
ロバート・フリップがプロデュースをしてギターも(最後にちょっとだけ)弾いているオリジナルをカヴァーしているのは偶然だと思うが、それはそれで嬉しかったりする。
総じてオリジナルとは異なるアレンジを施している楽曲が多い中、イーノによるカヴァーも原曲のピアノを中心とした素朴なアレンジの片鱗もなく、ひたすらダークでミニマルなヴォーカル曲となっている。
(追加:2020年1月10日)
2014
Someday World : Eno ・ Hyde
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アンダーワールドのカール・ハイドとのコラボレーション作品。
ここ何年かイーノが新作を出すと、その半年後位から中古盤のイーノ・コーナーにその新作が何枚も並ぶ、というパターンが繰り返されてきたが、本作品はその可能性が低いと思う。
本作品とそれ以前の数作との優劣を比較するつもりは毛頭無い。
あれもイーノ、これもイーノと言ってしまうと安易かもしれないが全てイーノがやりたかったことである。
そしてここ数年のイーノの旺盛なリリース意欲の結果、本フォーマットのような作品もリリースされる機会に恵まれたと考えるべきである。
プロデュースした作品の商業的成功とは別に、自らの名前を冠した本作品でイーノの名前がもっと売れたら嬉しい。
(変更:2014年5月10日)
High Life : Eno ・ Hyde
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『 Someday World 』
から半年足らずに発表された、イーノ&ハイドの作品。
同作品のアウトテイク集ではなく、新たにレコーディングされた作品とのこと。
同梱された日本語ライナーで、イーノだけではなくカール・ハイドもコメントしているので、イーノ得意のハッタリでは無いと思われる。
確かに音の傾向は大きく異る。 エリック・タム著の 『 ブライアン・イーノ
』 において「攻撃的なロックの曲」分類された曲に該当するだろう曲の格好良さや、執拗なまでに繰り返されるミニマル・フレーズが終了した後に感じることができるカタルシス等、聴きどころ満載の作品である。
作品の発表機会が増えた2010年以降のイーノは、自身何度かめのピークを迎えていると言って過言ではない。
(追加:2014年7月10日)
2015
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2015年4月18日の Record Store Day 2015 で発売された作品で、33 r.p.m. の12インチ2枚組ディスク。
『 My Squelchy Life 』 については、『 Nerve Net 』
より前にリリースされるはずだったものがお蔵入りになり、その後 『 Brian Eno II 』 において一部の楽曲が発表された後、2014年に 『
Nerve Net 』 が再発された際にボーナスCDとしてリリースされている。
本作品は、” Rapid Eye ”
の追加と一部曲順を変更されており、更に1曲毎の参加ミュージシャンがクレジットされているため、フリップが参加しているのが ” I Fall Up ”
と ” Juju Space Jazz ” だということが判明した。
(追加:2018年4月25日)
Ladytron / The Numberer : Roxy Music
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Produced by Pete Sinfield
2015 Stereo Remixes by Steven Wilson
2015年4月18日の Record Store Day 2015 で発売された作品で、45 r.p.m. の10インチ・ディスク。
「 Taken from the forthcoming Super Deluxe Edition of ROXY MUSIC 」
と記載されているが、そのスーパー・デラックス・エディションのリリースは2018年で3年近くかかっている。
スティーヴン・ウィルソンによるステレオ・ミックスとクレジットされているが、スーパー・デラックス・エディションでのウィルソンの関与は DVD
に収録された5.1ミックスのみとなっている。 その結果、本作品に収録されている2曲のミックスとも、他ではリリースされていないことになる。
(追加:2018年4月25日)
X&Y : Coldplay
X1. Square One Y1. Speed Of Sound |
Additional synthesizers on Y3 by Brian Eno.
コールドプレイの3作品目に、イーノは ”
Low
” 1曲のみシンセサイザーで参加している。
本作品がリリースされた2005年がイーノにとってどういった時期かと言うと、プロデューサーとして蜜月を過ごした U2
との間のにケミストリーが希薄になり、1曲しか参加しなかった 『 How To Dismantle An Atomic Bomb 』
(2004年)や、頓挫しかけた 『 No Line On The Horizon
』(2009年)に代打参加したりと、作品時代への関与度も低くなっていた。
その代わり、というわけでは決してないだろうが、楽曲も活動も超正統派のコールドプレイにイーノが参加したことは、とても興味深い。
薄く鳴り響くシンセサイザーが如何にもイーノなのだが、その楽曲名が ” Low
” であることには、絶対にこだわりがあったと推測している。
(追加:2015年8月25日)
50 Minutes Later : Phil Manzanera
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前作 『 6PM 』 から間をあけず発表されたフィル・マンザネラのソロ・アルバム。
完成度は非常に高く、同コンセプトで制作されたことが功を奏したものと思われる。 参加メンバーも 『 6PM 』
と殆ど替わっていないというか、そもそも30年以上前からの友人関係をベースに制作しているのが、『 6PM 』 『 50 Minutes
Later 』 の成功要因なのだと思う。
クリムゾンの ” Starless ” の歌詞の一部を意識した ”
Bible Black
” を、更にイーノがいじくり回した ”
Enotonik Bible Black
” が、本作のハイライトである。 ロキシー・ミュージックの ” For Your Pleasure ”
を彷彿させるテープの継ぎ接ぎ感が格好良い。
もちろんアナログな編集を実際にしているはずはないが、アナログ感はあってもアナクロ感がない編集はイーノならではのものである。
(追加:2016年8月10日)