1996/ 5/28 Le Krakatoa, Bordeaux, France
ダブル・トリオ編成のキング・クリムゾンの1996年のライヴは、ヨーロッパ・ツアーから始まっている。
本作品はその初日、フランスのボルドーでのライヴを収録している。
この日は、1974年7月1日振りに ” 21st Century Schizoid Man ” が演奏されている。 Discipline Crimson では1度も演奏されることなく、Double Trio Crimson でも1994年、1995年と演奏されることがなかった同曲が、22年振りに演奏されたのである。
ただ残念なことにダブル・トリオという編成が活されてはおらず、音数が多いだけの演奏となっている。
(追加:2023年7月25日)
1996/ 5/30 Palacio de Congresos, Madrid, Spain
スペインに移動してマドリードでの2日連続の初日の演奏を収録した作品。
28日のフランスでの演奏も良かったが、この日の演奏も素晴らしい。 クリムゾンとしての過密スケジュールのライヴが半年行われなかったことでリフレッシュしたのか充実した演奏が繰り広げられている。
” Thela Hun Ginjeet ” のイントロで躓いたり、” Waiting Man ” のイントロでドラムの生音が出てしまったりといったトラブルにも動じない余裕も感じられる。
ただ ” VROOOM ” が外されたのは残念である。
(追加:2023年7月25日)
1996/ 5/31 Palacio de Congresos, Madrid, Spain
マドリードでの2日連続公演の2日目を収録した作品。
開始早々に ” Larks' Tongues In Aspic Pt II ” を持ってくるという攻めた構成となっている。 前2日のライヴでの同曲の演奏で手応えを感じたのか、堂々とした演奏となっている。
DGM Live には ” Shelterig Skay ” が久々に演奏された旨記載されているが特筆する程の内容ではない。
それよりも全体の完成度が高いことの方が素晴らしいと思う。
(追加:2023年7月25日)
1996/ 6/ 1 Auditorio Y Congresos, Murcia, Spain
ムルシアに移動して行われたライヴを収録した作品。
曲目を見れもらえば判る通り、” Thela Hun Ginjeet ” が外されただけで前日と曲順含めほぼ同じ内容である。
前日の演奏の成功体験を踏まえて同じ構成にしたのかもしれない。 DGM Live の開設によると、” Dinosaur ” 似続けて ” One Time ” を演奏する予定だったのを、ブリューの判断で ” Red ” に変更したらしい。 よく聴き取れないしそもそもブリューの意向でステージ上で急遽セットリストの変更が当時行えたか判らないが、何れにせよこの段階で前日とほぼ同じ構成に決まったことになる。
その結果演奏は素晴らしい。 ただマンネリ感も感じてもしまう。
(追加:2023年7月25日)
1996/ 6/ 3 Auditorium Maurice Ravel, Lyon, France
スペインから再びフランスに戻ってリヨンで行われたライヴを収録した作品。 多分フランスでのブッキングが上手くいかなかったと思われる。
選曲、曲順はスペインに行く前のボルドーでのライヴとほぼ同じ。 違いはラストに ” Larks Tongues In Aspic Pt II ” が演奏されていないというマイナス点だけで、この日を観に行った人はちょっとがっかりだったかも。
DGM Live には ” 21st Century Schizoid Man ” がこのツアーの中で最も良いと書かれているが、相変わらず音数だけが多い雑な演奏で良さは感じない。
それよりも ” Thela Hun Ginjeet ” や ” Indiscipline ” の始め方の方が変化があって面白い。
(追加:2023年7月25日)
1996/ 6/ 4 Rosengarten-Musansaal, Mannheim, Germany
ドイツに移動したクリムゾンは、ここからポーランドのワルシャワでの1公演を挟みながらドイツで9回のライヴを行う。
ここでの特徴は、” 21st Century Schizoid Man ” をコンサート半ばで演奏していることである。 キラー・チューンである同曲が演奏されるのは最初かアンコール周辺が多いのだが、ここでは普通の1曲といった扱いになっている。 Double Trio Crimson としては ” 21st Century Schizoid Man ” をこのヨーロッパ・ツアーから演奏しているのだが、前日までの内容は必ずしも良くない。 というか Double Trio フォーマットでの演奏にしっくりはまっていない感じである。
観客の期待に応えてはいないが、Double Trio フォーマットでもっと良い曲があるんだよ、といった思いもあるのかもしれない。
(追加:2023年11月10日)
1996/ 6/ 5 Tempodrom, Berlin, Germany
マンハイムからベルリンに移動して行われたライヴを収録した作品。
” The Talking Drum ” から始まるのは前日と同じなのだが、そこから ” Larks Tongues In Aspic Pt II ” ではなく ” Thela Hun Ginjeet ” に継げている。
そこから更に ” Neurotica ” が演奏されるのだが、Double Trio フォーマットでの Discipline Crimson 期の楽曲の演奏が見事にはまっていることが判る。 この2曲の演奏は機材トラブルはあったものの素晴らしい内容になっている。 続く ” Red ” を始め Lineup 3 までの楽曲が音数と勢いを増すことだけが強調されているのと対象的である。
(追加:2023年11月10日)
1996/ 6/ 7 Congress Hall, Warsaw, Poland
ポーランドに一旦移動してワルシャワで行ったライヴを収録した作品。
この日の特徴は、1996年のツアーで始めて ” Prism ” を演奏していることである。
1995年段階では定番化していたこの楽曲はライヴでフックを与えるのには充分ではあるが、それ以外の何ものでもなかった。 それだけにここで復活し、その後も結構な頻度で演奏されるようになったのは、Double Trio で演奏しなければならない、という縛りが自由度を失わせコンサートに窮屈感が生じた際に、この曲に頼らざるを得ないというな事情があったからではないかと思う。
(追加:2023年11月10日)
1996/ 6/ 9 Tanzbrunnen, Cologne, Germany
ドイツに戻りケルンで行われたライヴを収録した作品。
この日は久しぶりに ” VROOOM VROOOM ” が演奏されるのだが、イントロ・パートからメイン・リフへのブリッジでちょっとだけもたつくところがある。 その結果微妙な緊張感を産み、偶発的ではあれ ” VROOOM VROOOM ” の魅力が増している。
この後も ” VROOOM VROOOM ” の演奏頻度は高くないのだが、暫くの間このブリッジで色々と変化を試みているのはこの日の演奏がきっかけになったに違いない。
(追加:2023年11月10日)
1996/ 6/10 Alte Opera, Frankfurt, Germany
ドイツ国内でフランクフルトに移動して行われたライヴを収録した作品。
この日は ” Larks Tongues In Aspic Pt II ” でのギターのカッティングにキレがあり素晴らしい。 後半リズムが怪しげになるところがあるのが残念で、最初の勢いそのままで突っ走ってくれたらもっと良かったのにと思う。
ライヴ全体のでき具体としては可もなく不可もなく、無難な内容となっている。
(追加:2023年11月10日)
1996/ 6/11 Meistersingerhalle, Nurnberg, Germany
ニュルンベルクに移動して行われたライヴを収録した作品。
” The Sheltering Sky ” の入りのギター・シンセサイザーでのメロディに変化を加えているのだが、これが意図的なものなのか演奏ミスなのかがよく判らない。 この日の演奏の中で同様の演奏をしていないのでミスの可能性もあるが、面白い演奏である。
ラストを ” VROOOM / Coda Marine 475 ” でまとめるのがパターン化しているものの、ギター・シンセサイザーの音色の変化等聴きどころは満タンである。
(追加:2023年11月10日)
1996/ 6/13 Westfalen Park, Dortmund, Germany
1日休みを挟んでドルトムントで行われたライヴを収録した作品。
この日は久しぶりに ” Larks Tongues In Aspic Pt II ” が演奏されていない。 この時期のライヴでの目玉は ” 21st Century Schizoid Man ” で、当時演奏されたとの情報に個人的にも盛り上がっていたのだが、こうしてまとめて聴き直していると ” Larks Tongues In Aspic Pt II ” の方が Double Trio フォーマットにははまっているように思える。
(追加:2023年11月10日)
1996/ 6/14 Stadtpark, Hamburg, Germany
ハンブルクに移動して行われたライヴを収録した作品。
” Larks Tongues In Aspic Pt II ” を復活させ、ヴォーカル・ナンバーは気持ち少なめにした選曲にしたことで、Double Trio フォーマットの硬質な部分が前面に出た内容となっている。
ただ ” VROOOM / Coda Marine 475 ” で終了するのが定番となっていたのが、ここでは最後に ” Indiscipline ” が演奏される。 オミットする曲ではないが、ラストに相応しいかと言うと微妙で、やはり ” VROOOM / Coda Marine 475 ” で終わらせて欲しかったと思う。
(追加:2023年11月10日)
1996/ 6/15 Stadthalle, Chemnitz, Germany
ケムニッツに移動して行われた、このツアーのドイツでの最後のライヴを収録した作品。
ドイツでのライヴの後半、曲順や曲目をいじったのは変化をつくろうとしたのかもしれないが、結果は芳しいものではなかっった。 それを踏まえてなのか、この日の演目は良い意味でオーソドックスであった。
そして演奏自体も充実しており、派手さはないものの完成度は高い作品となっている。
(追加:2023年11月10日)
1996/6/17 Palace Of Culture, Prague, Czech Republic New!
ドイツを離れたクリムゾンが、プラハで行ったライヴを収録した作品。
このツアーでは ” Conundrum ” から ” Thela Hun Ginjeet ” で始まるパターンと ” The Talking Drum ” から ” Larks Tongues In Aspic Pt II ” で始まる大きく2パターンがあるのだが、この日は前者を選択している。
その ” Thela Hun Ginjeet ” でギターの絡みが乱れてしまうのは残念だが、その後の ” Red ” からは硬質かつ低音が強調された演奏が続く。 DGM Live の解説には特に ” THRAK ” でベースが強調されていることが記載されているが、同曲だけではなく全体的に凄さを味わうことができる。
(追加:2025年7月25日)
1996/6/18 Amphitheatre, Presov, Slovakia New!
スロバキアのプレショフで行われたライブを収録した作品。
この日は何と言っても ” 21st Century Schizoid Man ” のツイン・ギター・ソロである。 このツアーでの同曲のツィン・ギター・ソロはバリエーションに富んでいるのだが、この日は2人が絞り出すように演奏するギター・ソロが絡むという類型を見ない内容であり、かつ格好良いというぶっ飛んだ内容である。
この ” 21st Century Schizoid Man ” を聴くためだけでも価値のある作品である。
(追加:2025年7月25日)
1996/6/19 Petofi Csamok, Budapest, Hungary New!
ハンガリーに移動してブダペストで行われたライヴを収録した作品。
ライヴ中盤に演奏していた ” 21st Century Schizoid Man ” を久しぶりに後半に持ってきているのが特徴。 同曲の前日の演奏に達成感を得たことがその理由なのかは不明だが、前日程ではないが2人のギター・ソロの絡みは特色がある。
ライヴ全体ではラストが ” Prism ” から ” Indiscipline ” で終わってしまうことに若干のフラストレーションが溜まってしまう。 この日ここまで演奏をしていない ” VROOOM ” から ” Coda Marine 475 ” でも良かったのではいか。
(追加:2025年7月25日)
1996/6/21 Fiera Di Milano, Milano, Italy New!
* source recording incomplete
イタリアで行われた5公演の初日の演奏。 場所を変えながらも5公演も行ったことから、イタリアにおいてはこの時期もキング・クリムゾンの人気が高かったことが窺える。
過度に良いところや悪いところが混在せず、全体に手堅い内容となっている。 無難にこなしているのではなく、平均点が高い上にばらつきが少ないと内容である。
従ってダブル・トリオ・クリムゾンを初めて聴く方にも薦められるし、この時期のクリムゾンのライヴを久しぶりに聴き直してみようと思った方にもお薦めの作品である。
(追加:2025年7月25日)
1996/6/22  Arena Alpe Adria, Lignano, Italy New!
イタリアでの2日目、野外でのライヴを収録した作品。
キング・クリムゾンと野外というのはイメージが湧きにくいかもしれないが、古くは1969年のハイド・パーク、最近では2019年のブラジルの Rock In Rio 等エポックメイキングな演奏をおこなってきている。
ただこの日は途中から風雨が激しくなり、徐々に演奏すること自体が困難になっていったと DGM Live の解説に記載されており、流石に対処が難しかったと思われる。
最後の ” Red ” では、中間部のベース・パートに入ろうとしたところで、演奏を切り上げようとしたフリップが無理矢理メインのフレーズを演奏、他のメンバーが慌ててついていくところが生々しく収録されている。
その結果、中間部がバッサリとカットされた結果3分強の「シングル・エディット」の演奏になっているのが珍しいが、そうせざるを得ない程の悪条件であったことが推察される。
(追加:2025年7月25日)
1996/ 7/ 1 Shepherds Bush Empire, London, England
DGM Live からリリースされた、ダブル・トリオ・クリムゾンの最後期の作品。
暴走気味の演奏が、凄まじい緊迫感を与えてくれる。 バンド末期の人間関係の緊張感がそのまま表れているのかもしれないが、約1ヶ月後のライヴを収録した 『 VROOOM VROOOM 』 には、ここまでの凄まじさはない。 この日だけが特別でだったのか。 1996年の音源は少ないので、もっとリリースしてほしい。
” 21st Century Schizoid Man ” が聴けるのも嬉しいが、本作品の最大のウリは高速で演奏される ” Frame By Frame ” である。 速すぎて6人の演奏が乱れるところもあるが、お構いなしに続く演奏に爽快感する感じる。
(追加:2008年5月25日)