1995/10/ 1 Kanagawa Kenmin Hall, Yokohama, Japan
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オーソドックスなプログレ路線から逸脱していた 『 Discipline 』 と比べ、『 VROOOM 』 と 『 THRAK 』 はダブル・トリオ編成によるダイナミズムが 『 Red 』 を彷彿させることからリリース直後から評判が高かった。 更に5月のロイヤル・アルバート・ホールでのライヴ・レポートが色々なメディアに掲載され、ディシプリン期の楽曲もパワフルに演奏されたことが判り、来日公演に対する期待は非常に高かったと記憶している。
本作品は、そんな期待が高まる中行われた来日公演の初日のライヴを収録している。
この時期のライヴは高レベルながら総じて変化が乏しく、それは後にダブル・トリオというフォーマットによる制限だと判ってくる。 なので本ライヴの特徴は、神奈川県民ホールという(ロック系の来日公演としては)珍しい会場で録音されたことで音触りがザラザラとしている所にある。
(追加:2021年6月25日)
1995/10/ 2 Koseinenkin Kaikan, Tokyo, Japan
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11年振りのキング・クリムゾンのライヴということで、1984年に高校生だった私もこの時は社会人、仕事を終えて駆けつけ自席に座って待っていると見知らぬ人から「そこは私の席だ」と言われた。 自分の半券を確認してみると席は間違っていない、ダブル・ブッキングかとも思ったが今一度半券を確認すると、私は翌日3日のチケットで入場をしていた。
両日のチケットを持っていたことで犯したミスで、それから半券と本来のチケットを持って受付に行き、翌日の入場も可能となる証明をしてもらって本来の席についたのが開演3分前。 舞い上がっていたとは言え、粗忽な自分を深く反省した。
気を落ち着ける間もなく始まったクリムゾンのライヴは、インプロが終わった後の ” VROOOM VROOOM ” で腰を抜かしながら落涙、そのまま至福の2時間を過ごすことができたのが本当に幸せだった。
(追加:2021年6月25日)
1995/10/ 3 Koseinenkin Kaikan, Tokyo, Japan
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ダブル・トリオ来日公演の初日から3連続公演の3日目のライヴ。
こうして DGM Live からアーカイヴ音源がリリースされた後に判ったのだが、この3日間の演奏曲目、演奏順序は全く同じである。 Windows 95 が国内リリースされたのがこの年の11月、一般家庭へのインターネットの普及は未だ進んでおらず、ニュース・レターの Elephant Talk での来日公演レポートも少なく、今のようにツアーの全体像を掴むことはできない時代であった。
ダブル・トリオというフォーマットが故に自由度が限られていたのかもしれないが、逆にバンドとしてのアンサンブルは強固で、個々人の演奏ミスは散見するが新曲、旧曲ともダブル・トリオによる勢いが良く反映されている。
(追加:2010年3月28日)
1995/10/ 5 Nakano Sun Plaza, Tokyo, Japan
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来日4公演目を収録した作品。
中野サンプラザで行われたこの日と翌日のライヴは 『 deja VROOOM 』 用に撮影されているが、DGM Live で公開されている2作品は 『 deja VROOOM 』 とは異なる新たなミックスがなされているとのこと。
前3公演とは曲順も若干変更した上で、” Indiscipline ” と ” Prism ” の2曲がオミットされているのは残念だが、撮影を意識したのか手堅くまとまった内容となっている。
(追加:2021年6月25日)
1995/10/ 6 Nakano Sun Plaza, Tokyo, Japan
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『 deja VROOOM 』 のベースとなった中野サンプラザでの公演の2日目。 1日目と同じく新たにミックスされている。
” Indiscipline ” と ” Prism ” は復活したが、構成自体は前日とほぼ同じである。 この辺り録画を前提に意図的に行ったように思える。
一方で、個々人のミスはあってもここまでアンサンブルが大きく乱れることなくこなしてきたにもかかわらず、この日は ” Frame By Frame ” の中間部を思いっきり外してしまっている。
(追加:2010年3月28日)
1995/10/ 8 Shimin Kaikan, Nagoya, Japan
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東京から名古屋に移動しての演奏を収録した作品。
選曲の細かい違いはあるが、概ねここまでライヴと同じ構成で演奏されている。
” Red ” 三兄弟( ” Red ” と ” VROOOM ” と ” VROOOM VROOOM ” )の演奏は見事で、特にこの日は ” Red ” の演奏が良かった。 ギターの迫り方に迫力あり、触発されるかのようにベースも着いてきている。 更に次曲の ” Improv Two Sticks ” までその勢いが続き、ベース・パートを演奏するレヴィンが遊びも含めたソロを演奏し、そこにガンによる高音がかぶさってくる。
(追加:2022年10月25日)
1995/10/ 9 Festival Hall, Osaka, Japan
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名古屋の翌日、大阪での演奏を収録した作品。 ここでセット・リストが変更されている。
曲順ではなく選曲の観点から言うと、” VROOOM VROOOM ” が外され ” Thela Hun Ginjeet ” が採用されている。
この違いは大きい。 ” VROOOM VROOOM ” がダブル・トリオという編成を活かした楽興であった一方、” Thela Hun Ginjeet ” の正直な印象は「リズム隊は2人ずついらないじゃん」である。 たったそれだけの入替えかもしれないが、ダブル・トリオ・クリムゾンのライヴとしては残念は選曲である。
勿論ライヴ全体の演奏に全く問題はなく、” Red ” や ” VROOOM ” 、そして ” Lark's Tongues In Aspic ” など惚れ惚れするような演奏である。 それだけにやはり ” VROOOM VROOOM ” と ” Thela Hun Ginjeet ” の入替えはもったいない。
(追加:2021年10月25日)
1995/10/10 Hitomi Kinen Kodo, Tokyo, Japan
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東京に戻り、今回初めての人見記念講堂での演奏を収録した作品。 前日と同じく、” VROOM VROOOM ” が外され ” Thela Hun Ginjeet ” が採用されている。
” Thela Hun Ginjeet ” 自体が悪いわけではない。 さらにその後 ” Red ” のダブル・トリオ・ヴァージョンが演奏されるし、” Dinosaur ” や ” One Time ” といった 『 THRAK 』 に収録された楽曲が演奏されている。 ただこれらの曲はダブル・トリオならではのダイナミズムを感じる楽曲ではない。 ダブル・トリオならではの楽曲である ” VROOOM ” が演奏されるのは、コンサートが開始されてから30分以上たってからである。
ダブル・トリオとしての可能性を色々と試行錯誤していた段階なのかもしれないが、ダブル・トリオという編成自体が演奏の自由度を下げているため同一の楽曲を色々と楽しむことは中々難しい。 それ故にどの曲が演奏されるか、がこの時期のライヴでのポイントになっていたと思う。
(追加:2022年10月25日)
1995/10/12 Omiya Sonic Hall, Omiya, Japan
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1995年のダブル・トリオ来日公演後半の大宮でのライヴ。
2週間で11回という集中したツアーの結果か、功を奏した部分とマイナスに振れた部分が混在している。 ”
VROOOM ” での緊迫感の溢れた演奏がある一方で、” Dinosaur ”
の演奏は弛緩した演奏となっている。 横浜・東京から名古屋・大阪に、そこから東京に戻って大宮・仙台、そして最後に東京に戻る、なんて行程はもう少しなんとかならなかったのか。
それ以外の特徴としては、”
B'BOOM ” のインプロ・パートが、『 THRaKaTTaK 』 の ” Mother Hold The
Candle Steady While I Shave The Chicken's Lip ”
の一部に使われていることか。
個人的には、チケットを購入しておきながら、仕事で観に行くことができなかった、という悔しい想い出があるライヴである。
(追加:2010年3月28日)
1995/10/13 Sun Plaza Hall, Sendai, Japan
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仙台に移動しての演奏を収録した作品。
前日の大宮でのライヴから ” VROOOM VROOOM ” が復活し、アンコール・ラストがヴォーカル曲ではなく ” Larks' Tongues In Aspic Pt II ” で終了するというカタルシスが解消される構成となっている。
ただ残念なのは機材、録音のトラブルが発生したらしく、” Indiscipline ” に続けて ” People ” を演奏しようとするが上手くいかず演奏を一旦止め、” VROOOM ” ~ ” Coda Marine 475 ” の後に演奏している。 また ” Larks' Tongues In Aspic ” の冒頭が欠けているのだが、その前に演奏したであろう ” Talking Drum ” は丸々収録されていない。
(追加:2022年10月25日)
1995/10/14 Koseinenkin Kaikan, Tokyo, Japan
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キング・クリムゾンの1995年来日公演の最終日の演奏を収録した作品。
先ず選曲はベストと言って良い。 要所を締める ” Red ” 三兄弟( ” Red ” と ” VROOOM ” と ” VROOOM VROOOM ” )、攻撃的な側面が強調されたダブル・トリオ・クリムゾンの楽曲、そして ” The Talking Drum ” から ” Larks' Tongues In Aspic Pt II ” での大円団。
そして見事な演奏がこれらの楽曲の良さを引き出している。 日本国内での短期間での集中して演奏が、この最終日に見事に昇華したと言っても過言ではない。
この日の演奏を会場で直接目にしたという贔屓目を差っ引いたとしても、この来日公演でのベスト・ライヴである。
(追加:2022年10月25日)