Discipline Crimson、Double Trio Crimson、そして y2King Crimson のスタジオ、ライヴ音源をまとめた 4CD BOX 。 2004年にリリースされた編集盤に続く第2弾。
” THRAK ” から ” Fearless And Highly THRaKked ” へのつなぎや、” The Deception Of The Thrush ” から ” 2 ii 3 ( ProjeKct One ) ” へのつなぎといった、聴き流してしまいかねないほど自然で巧みな編集は素晴らしいと思う。 しかしそれでも、偏りのある選曲やCD収録時間に帳尻を合わせるための曲の短縮化と、つっこみどころが満載な作品だと思う。
その中でも、一番特徴的なのが 『 The ConstruKction Of Light 』 からのスタジオ録音の作品が収録されていないことである。 確かに ” Larks' Tongues In Aspic : Part IV ” は 『 Happy With What You Have To Be Happy With 』 収録のライヴ・テイクが最強だし、今回初めて発表された ” FraKctured ” の編集版も力強いテイクだと思うが、全体のバランスを考えると違和感を感じてしまう。
多分この辺りはフリップによる罠で、こうした異論が今後インタビュー等で一刀両断されるのだと思う...
Disc 1 : In The Studio : 1981 - 1984
1-6 from 'Discipline'
7-10 from 'Beat'
11-13 from 'Three Of A Perfect Pair'
14 previously unreleased
15-18 from 'Happy With What You Have To Be Happy With'
Discipline からの6曲
『 Discipline 』 は相変わらずのVIP対応で、7曲中6曲を収録。 オリジナルそのままの曲順で収録されているため、” Indiscipline ” 未収録なのが違和感を感じる程である。
”Matte Kudasai ” は、オリジナルのテイクではなく、The Definitive Edition 以降差し替えられたテイクが採用されている。 30th Anniversary Edition においてボーナスとして収録されたオリジナル・テイクは ” Matte Kudasai ( alternative version ) ”と命名されており、本テイクが「通常の」テイクと考えればよいのかもしれない。
Beat からの4曲
ディシプリン・クリムゾン期の選曲は、実は 『 The Essential King Crimson 』 の Volume 3 と全く変わらない。 しかも、この4曲は曲順まで全く同じ。
Three Of A Perfect Pair からの2曲と1曲
” Sleepless ” は、オリジナルのテイクではなく、The Definitive Edition 以降差し替えられたテイクが採用されている。 オリジナルに収録されていた Bob Clearmountain によるミックスと異なり、地味なミックス。
” The King Crimson Barber Shop ” は、 Bonus Track として収録されておきながら、30th Anniversary Edition に収録されていることからか、『 Three Of A Perfect Pair 』 からの選曲とクレジットされている。
Happy With What You Have To Be Happy With からの4曲
” The King Crimson Barber Shop ” と ” Form No. 1 ” とともに Bonus Track として収録されている。 CDの収録時間との兼ね合いに起因するのだとおものが、アルバムのリリース順とは異なってしまうため、違和感を感じる。
” Potato Pie ” は、オリジナルでは曲終了後にジェット音のようなものが続き、そのまま次曲の ” Larks' Tongues In Aspic : Part IV ” に流れ込んでいったが、ここではジェット音はなくいきなり終了。
オリジナルではシークレット・トラック扱いされていた ”Einstein's Relatives” が、独立した1曲として収録されている。 原曲では ” Clouds ” 終了後20秒間のブランク後に演奏が開始されたが、ここでは ” Clouds ” 終了後すぐに演奏が開始される。
未発表テイクについて
” Form No. 1 ” は、フリップ+ブリュー+レヴィン+マステロット によって2004年にレコーディングされた新曲。 新生クリムゾンの実体がみえていない状態なので、本曲が今後の基本路線になるのか、あるいは単なるセッションで終わるのかはわからないが、ストリングスの絡みがスリリングで格好良い曲だと思う。
Disc 2 Live : 1982 -1984
1-4, 7-14, from 'Absent Lovers'
5, 6, from 'Neal and Jack and Me'
15 from 'Live at Cap D'Agde'
Absent Lovers からの12曲
ディシプリン・クリムゾン期のライヴは、それなりの数がリリースされているだけに、『 Absent Lovers 』 に偏った収録が残念である。 たしかに同作の完成度の高さは突出しているが、『 Discipline 』 リリース前後のライブからもう少し収録して欲しかった。
” Entry Of The Crims ” は、最初のフリップのパートが短く編集されている。 映像がない分、この程度の長さの方が正解かもしれない。
” Larks' Tongues In Aspic Part III ( edit ) ” は、フリーのパートの途中、まさにフリップが弾きまくる寸前で終了。 これは消化不良をおこしてしまう。 本曲は 『 The Essential King Crimson 』 ではフリーのパートのみの「Excerpt」として収録されており、一貫した扱い低さがうかがえる。
各曲の 『 Absent Lovers 』 との収録時間の違いは、曲間の歓声やMCをカットによるもの。 但し、” Waiting Man ” のみイントロのブルーフォードのシモンズの演奏をカットし、曲終了後のMCを残している。
Neal And Jack And Me からの2曲
『 Beat 』 時期のライヴということを踏まえると、” Neal And Jack And Me ” の収録は妥当と思うが、この編成で最後まで演奏されていた ” Heartbeat ” が収録されていないのが、ちょっと不思議。
Live At Cap D'Agde からの1曲
” Elephant Talk ” のみ、唐突に 『 Live At Cap D'Agde 』 から収録。
Disc 3 : In The Studio : 1995 - 2003
1-6,8,9 from 'THRAK'
7 from 'THRaKaTTaK'
10-19 from 'The Power To Believe'
THRAK からの8曲と THRaKaTTaK からの1曲
巧みな編集をしているのが、” THRAK ” から ” Fearless
And Highly THRaKked ” への流れ。 ” THRAK ” は、スタジオ版の ” THRAK
” の最初のリフの部分で、” Fearless And Highly THRaKked ” は、『
THRaKaTTaK 』 に収録されている ” THRAK ”
の後半部部分と、同作収録の ” Fearless And Highly THRaKked ”
の前半部分をつなげたもの。
「In The Studio」とクレジットされたディスクに 『 THRaKaTTaK 』
から選曲されていることに異論もあるかもしれないが、納得できる完成度だと思う。
” Radio II ” は20秒程度短く収録されている。 次曲の ” The Power To Believe I : A Cappella ” に繋がる編集はなかなか新鮮だったりする。
The Power To Believe からの10曲
本編集盤の特徴は、『 Discipline 』、『 Absent Lovers』、そして
『 The Power To Believe 』 から多く選曲されていることと、『 The
ConstruKction Of Light 』 からの収録が無いことである。
また、Disc 4 と併せて確認してみると、『 The ConstruKction Of Light
』 からはスタジオ・テイクはないがライヴ・テイクが5曲収録、一方
『 The Power To Believe 』 からは ” Dangerous Curves ”
を除く全曲が収録されている一方.でライヴ・テイクが収録されていないことがわかる。
” Happy With What You Have To Be Happy With ” は、イントロの前に10秒程度ブリューのものと思われるイコライジングされた声が収録されている。
Disc 4 Live : 1994 - 2003
1-3, from 'VROOOM VROOOM'
4, 8, previously unreleased
7, from 'Level Five'
5, from 'Happy With What You Have To Be Happy With'
6, 9, 12, from 'Eyes Wide Open'
10, 11,13 from 'The ProjeKcts'
VROOOM VROOOM からの3曲
” VROOOM VROOOM ” は、『 VROOOM VROOOM 』 収録テイクのように ” Coda : Marine 475 ” に繋がることなく、ギターのフィードバック音で終了する。
” Prism ” は、1分半程度「abridged」されている。 その結果メインの印象的なリフが、より耳に残る編集となっている。
Level Five からの1曲
” The ConstruKction Of Light ” は、そのままの収録。
Happy With What You Have To Be Happy With からの1曲
” Larks' Tongues In Aspic : Part IV ” は、『 Happy With What You Have To Be Happy With 』 では録音日が特定されていなかったが、ここでは11月10日と特定されている。 つまり、『 Live In Nashville, TN 1991 』 収録テイクと同一日ということになる。 スタジオでなんだかの加工がされたと思われるミックスは秀逸で、こうして聴き直してみても、やはり同曲のベスト・テイクだと思う。
Eyes Wide Open からの3曲
” ProzaKc Blues ” は、『 Eyes Wide Open 』 のライナーによれば15日のテイクとのことだが、ここでは16日とクレジットされている。
” The Deception Of The Thrush ” は最後の Warr Guitar のソロ・パートを削除し、次曲の ” 2 ii 3 ” につなげている。
The ProjeKcts からの3曲
『 The ProjeKcts 』 は日本では発売されていない Box Set。 日本で単独発売された ProjeKcts の各作品をひとまとめにしたもの。
『 Live Groove 』 からの2曲の内、” X-chayn-jiZ ” が若干短めの編集となっている。
『 Live At The Jazz Cafe 』 からの ” 2 ii 3 ” は、前述したとおり ” The Deception Of The Thrush ” ラストの Warr Guitar のパートの代用として使われている。
未発表テイクについて
何も ” One Time ” の未発表ライヴをわざわざ収録することはないだろうと思う。 記録的面から言えば、10月ではなく9月の段階での演奏ということであり、ダブル・トリオ・クリムゾンの最初期のライヴということになる。
本編集盤の収穫の一つが ” FraKctured ” の未発表テイクの収録だと思う。 2ヶ所のライヴからの編集は迫力重視の凄まじいもので、『 Heavy ConstruKction 』 での編集テイクより威力ははるかに上である。
(追加:2005年10月10日)