所謂 Lineup Three
までのスタジオ、ライヴ音源をまとめた 4CD の BOX もの。
Vol.1 とクレジットされている通り、最終的にはトータル8枚組になるとのことで、この後、Discipline
Crimson、Double Trio Crimson、そしてもしかしたら y2King Crimson
の音源までを収録した Vol.2
がリリースされるはずで、今から楽しみである。
個々の選曲を別にすれば、本作品の最大の特徴は、Disc 4 における
『 USA 』
音源のクレジットである。 音源自体に削除、つなぎ合わせ等の編集作業が行われていいるものの、今まで明確にされていなかった公演日が曲毎にクレジットされている。
クレジットによると、” 21st Century Schizoid Man ” のみが6月30日のプロヴィデンスのもので、それ以外の曲は6月28日のアズベリー・パークのものである。
ブックレット記載の年表もさりげなく変更されており、『 A Young
Person's... 』 と 『 Frame By Frame 』 のブックレットにおいては、
June 28 " Asbury Park " recorded at Asbury
Park Casino
June 30 " Providence " and most of " USA
" recorded at the Palace Theatre, Providence, R.I.
とクレジットされていたが、本作品のブックレットでは
June 28 " Asbury Park " and most of "
USA " recorded at Asbury Park Casino
June 30 " Providence " recorded at the Palace
Theatre, Providence, R.I.
となっている。
どちらが真実であるかを裏付ける術はなく、「DGM(フリップ)サイドによる新しい定義付け」と考えておけばよいのだと思う。
Disc 1 In The Studio : 1969 - 1971
1-5 from 'In The Court of the Crimson King'
6,7,9,10 from 'In The Wake Of Poseidon'
8 B side of 'Cat Food' single
11-14 from 'Islands'
15 from 'Lizard'
In The Court Of The Crimson King からの5曲
” Moonchild ” 後半のインプロ・パートが1分強収録されている。 『 Frame By Frame 』 に限らず、従来の編集盤においてインプロ・パートは削除されており、一部とはいえその収録は初めてとなる。
『 Frame By Frame 』、『 Heartbeat 』、『 Sleepless 』 において、” In The Court Of The Crimson King ” とクレジットされていたものが、オリジナルと同じく ” The Court Of The Crimson King ” に戻っている。
In The Wake Of Poseidon からの4曲とシングルB面を1曲
” Cat Food ” はシングル・ヴァージョンではなく、アルバム・ヴァージョン。 アルバム・ヴァージョンが編集盤に収録されるのは今回が初めてとなる。
ハスケルがヴォーカルをとる ” Cadence and Cascade ” が収録されているのが最大の特徴。 『 A Young Person's... 』 においてはノン・クレジットなかがら若干短く編集され、『 Frame By Frame 』 ではブリューのヴォーカルに差し替えられており、完全版が編集盤に収録されるのは今回が初めてとなる。
The Vicar によるエディットで、” In The Wake Of Poseidon ” がヴォーカル無しに編集されている。 レイクのヴォーカルのありがたさが期せずしてわかる編集。
Lizard からの1曲
相変わらず収録曲が少ない。 しかも原則オリジナル・アルバムのリリース順に収録されているにも拘わらず、『 Lizard 』 の ” Bolero ” は、『 Frame By Frame 』 と同じく 『 Islands 』 の楽曲より後に収録されている。
『 Frame By Frame 』 ではレヴィンのベースに差し替えられていた” Bolero ” は、ここではハスケルによるオリジナル・ヴァージョンが収録されている。 『 Lizard 』 収録曲がオリジナルのまま編集盤に収録されるのは今回が初めてである。
Islands からの4曲
「 The 」 が付いたり付かなかったりが曖昧な ” Sailor's
Tale ” だが、ここではオリジナルと同じく 「 The 」
無しでクレジットされている。
ちなみに Disc 2 のライヴは、「 The 」 付き。
その ” Sailor's Tale ” には、「 abridged 」 の表示がされており、ラストのフリップのギターの後のストリングスの残響音のような部分が5秒強短くなっている。
” Islands ” も ” In The Wake Of Poseidon ” と同じく The Vicar によるエディットでインスト・ヴァージョンに編集されている。 ティペットのピアノのパートから始まるため、印象が大きく異なる。
” Tuning Up ” は、『 Islands 』 ラストのリハーサル音源。 今までノン・クレジットで収録されたりされなかったりを繰り返していたが、タイトルも付され収録された。 ただし収録時間が短めになっている。
Disc 2 Live : 1969 -1972
1-5 from 'Epitaph'
6,7, from 'Ladies of the Road'
8-10 from 'Earthbound'
Epitaph からの5曲
” The Court Of The Crimson ” は、12月14日とクレジットされているが、『 Epitaph 』 には同日のテイクは含まれていない。 もしや新音源、とも思ったが、16日収録のテイクと思われる。 『 Epitaph 』 は、本テイクのクレジットをリリース時には15日としていたが、後ほど16日に修正した過去もあり、確信犯的な間違いのような気がしないでもない。
” A Man, A City ” は、クレジット通り11月21日の演奏。 Collectors' Club 25 からフィルモア・イーストでのライヴは21日と22日の両方がリリースされているが、以下のポイントからクレジット・ミスはなく21日で正しいと判断した。
22日のテイクのみ冒頭部分に観客の声のようなノイズが入っている。
21日のテイクは最後のヴォーカル・パートをインストにしている。
21日のテイクでは、10分41秒あたりでレイクがかけ声が入る。
演奏後のレイクのMCは、21日は「Thank you」→「Thank you very much」の順で、22日はその逆。
” 21st Century Schizoid Man ” もクレジット・ミスの可能性がないか確認したが、間違いはなかった。 ポイントは以下の通り。
22日のテイクの方が若干長めの演奏。
21日のテイクでは、1分34秒あたりに観客の中途半端なかけ声が入っている。
21日のテイクでは、5分58秒あたりでレイクが「オーイェイ」とかけ声を出す。
” Get Thy Bearings” は9月7日のテイク。 ソロ・パートを7分強カットする強引な編集だが、18分強ある元のテイクより楽に聴くことができる。
” Mars ” は、12月13日とクレジットされているが、同日はフィルモア・ウェストでは演奏していない。 14日と16日の演奏かを判断するために聴き比べたが、2分強カットしていることから判断が困難であったが、全体のノイズ、及び演奏後にレイクが「See you tomorrow」と叫ぶところから14日の演奏と思われる。
Ladies Of The Road からの2曲
” Pictures Of A City ” と ” The Letters ” は、『 Ladies Of The Road 』 の最初の2曲がそのまま収録されている。 曲間の編集も同じ。
Earthbound からの3曲
” The Sailor's Tale ” は、ラストがフェイド・アウトしていくパターンで、『 Earthbound 』 のテイクそのまま。 Collectors' Club 2 での完全収録テイクの再現にはならなかった。
” Groon ” は、『 Earthbound 』 収録のテイクを編集し、ウォーレスによるドラム・ソロの直前までを収録している。 さらによく聴き比べてみると、イントロにおいて、VCS3によるものと思われる加工されたドラムのような音が一音欠けている。
” 21st Century Schizoid Man (instrumental edit) ” は、『 Earthbound 』 収録のテイクから、ヴォーカル・パートを強引に削ったインスト・ヴァージョン。
Disc 3 : In The Studio : 1972 -1974
1-4 from 'Larks' Tongues In Aspic'
5-7 from 'Starless & Bible Black'
8-11 from 'Red'
Larks' Tongues In Aspic からの4曲
” Larks' Tongues in Aspic Part I ” は、『 Frame By Frame 』 と同じくほんのちょとだけ短縮されている。 中間部でのクロスのソロを短くして、更にミューアのソロを割愛している。
Starless And Bible Black からの3曲
本ディスクの最大の成果は、” Fracture ” の完全版の収録だと思う。
Disc 3 は、選曲・曲順とも、『 Frame By Frame 』 と同じで目新しさがないように思えるが、この完全版の収録は意義深いと思う。
Red からの4曲
やはり ” Starless ” の短縮版はよくない。
Disc 1 の収録時間は79分16秒。 Disc 3 の収録時間は72分49秒で、その差は6分27秒。
オリジナルの ” Starless ” は12分16秒。 短縮版 ” Starless ” は4分36秒で、その差は7分40秒。
仮に79分16秒がCDの限界であったとしても、1分13秒の超過。 他のどの曲を削ることが正解かはわからないが、調整は可能であったはず。 残念。
Disc 4 Live : 1972 - 1974
1,3,4,7,8,11, from 'USA'
2,9, from 'The Great Deceiver'
5, from 'Starless & Bible Black'
10,12, from 'The Night Watch'
6, previously unreleased
USA からの4曲
” Asbury Park ” は、『 USA 』 収録テイクとも 『 Frame By Frame 』 と微妙に異なり、特に最後においてギターのフィードバックのような音が2回(前2作においては1回)入るところが大きく異なる。
” Larks' Tongues in Aspic Part II ” は、クレジット通り 『 USA 』 収録テイク。 その結果ヴァイオリンを演奏しているのはエディ・ジョブソンということになる。
” Lament ” も、クレジット通り 『 USA 』 収録テイク。
” Exiles ( abridged ) ” は、ヴォーカル・パートの一部を削除している。 肝となるメロトロンとギター、メロトロンとヴァイオリンの絡みは削除されることなく収録されている。
今回、一番あざとい編集をしているのが、” Easy Money ” である。 6分35秒あたりまでが 『 USA 』 のテイクで、その後 『 Frame By Frame 』 に収録されているプロヴィデンスでの演奏の4分32秒目あたりからを編集でつなげている。 結局なんだかの理由で 『 USA 』 収録の本曲の完全版は残っていないのだと思う。
” USA ” は、エディ・ジョブソンのヴァイオリンがフィーチャーされた、クレジット通りの 『 USA 』 のテイク。
The Great Deceiver からの2曲
” The Talking Drum ” は、『 The Great Deceiver 』 の ” Improv - Wilton Carpet ” のラスト数秒が、そのまま冒頭部分に収録されている。 実際には別公演である前曲( ” Asbury Park ” ) からシームレスにつなげるためと思われる。
” Providence ” は、『 Red 』 収録テイクではなく、クレジット通り 『 The Great Deceiver 』 収録テイク。 前述した ” Easy Money ” の後半部はプロヴィデンスでの演奏であり、 『 The Great Deceiver 』 の CD 1 の6曲目(の後半)から7曲目への流れが、そのまま収録されたことになる。
Starless And Bible Black からの1曲
” We'll Let You Know ” は微妙な編集をしている。イントロ部分は 『 Starless And Bible Black 』 と同様に短く編集している。 一方ラストのパートは 『 Frame By Frame 』 収録テイクと同じように長めの編集となっている。 。
The Night Watch からの2曲
本来、『 Starless And Bible Black 』 からの収録であるならば、” Improv : Starless And Bible Black ” や ” Improv : Trio ” と表記されるべきところだが、ここでは原曲通り ” Starless And Bible Black ”、” Trio ” とクレジットされている。
未発表テイクについて
” Improv: Augsburg ” は、クロスのヴァイオリンをフィーチャーした曲。 1分強の演奏で、未発表曲としてのありがたみはあまりない。
(追加:2004年11月25日)