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The ConstruKction of Light  -2000-

  1. ProzaKc Blues / プロザック・ブルース
  2. The ConstruKction of Light / ザ・コンストラクション・オブ・ライト
  3. Into the Frying Pan / イントゥ・ザ・フライング・パン
  4. FraKctured / フラクチャード
  5. The World's My Oyster Soup Kitchen Floor Wax Museum / ザ・ワールドズ・マイ・オイスター・スープ・キッチン・フロア・ワックス・ミュージアム
  6. Larks' Tongues in Aspic - Part IV / 太陽と戦慄パート IV
  7. Coda : I Have a Dream / コーダ:アイ・ハヴ・ア・ドリーム
    ProjeKct X
  8. Heaven And Earth / ヘヴン・アンド・アース

Adrian Belew - guitar and vocals
Robert Fripp - guitar
Trey Gunn - bass touch guitar, baritone guitar
Pat Mastelotto - drumming

All songs written by Adrian Belew, Robert Fripp, Trey Gunn and Pat Mastelotto, words by Adrian Belew.

Produced by King Crimson
Bonus track "Heaven And Earth" is performed by ProjeKct X and produced by Pat Mastelotto and Bill Munyon.

2000年5月にリリースされた本作品は、1996年8月のダブル・トリオ・クリムゾンの活動休止、1997年のダブル・トリオ・クリムゾンとしてのリハーサルの失敗、一連の ProjeKct としての活動、V-Drums の導入を巡ってのブルーフォードとの意見の対立、別スケジュールをいれてしまった(笑)レヴィン、とフリップが様々はメディアを通じて説明している経緯を経て、1999年10月21日から12月15日ナッシュビルにあるブリューのスタジオでレコーディングされている。
音自体はとにかく重く、曲のタイトルからもわかるように 『 Larks' Tongues In Aspic 』 ~ 『 Red 』 期を彷彿させる内容。 とは言え、リズム隊の違い、そしてフリップ自身が80年代に身につけたシーケンシャル・フレーズの導入等により、単に懐古主義な音に陥ることなく、「今」の音を出している傑作。
また、同時期に ProjeKct X 名義で即興主体の楽曲をレコーディング、別アルバム ( 『 Heaven And Earth 』 ) としてのリリースに先行して1曲のみが本アルバムにも収録されている。 初めから意図的に「同時期」に「即興主体」で「名義」を変えてまでアルバムをリリースする意図があったかどうかは、相手がフリップだけに話半分程度に聴いておくのが正解かもしれない。

  1. 復活した y2King Crimson の記念すべき1曲目は、” ProzaKc Blues ”。 タイトルに「ブルース」という単語が入ってはいるものの、それ程ブルース色を感じることはなく、逆に一聴しただけでは単純に思えるリズムが、実は異常なまでに複雑な曲。 70年代のハード・ロック調のギター・ソロは、あまり無かったパターンで珍しい。 ヴォーカルはゲストのフーター・J・ジョンソンとされているが、当然ながらブリューのヴォーカルを加工したもの。
  2. ” The ConstruKction of Light ” は2パートに分かれている。
    前半は、ディシプリン・クリムゾンに顕著な2本のギターのミニマル・フレーズを中心としたインスト。 メロディアスな変拍子をロールさせてしまう(?)ブルーフォードに対し、重い変拍子をキープしてしまう(これまた?)マステロットのドラムが、ディシプリン・クリムゾンとの決定的な違いを見せている。
    後半は、さらにヴォーカルが被さる。 ミニマル・フレーズに高音部が多用され、Sunday All Over The World の同名曲のイントロに酷似した音を出している。
  3. 捨て曲とまでは言わないが、曲自体に新機軸がない ” Into the Frying Pan ” は地味な曲。 ライナーにおいてマステロットがドラム・ループの解説を得意げにしているが、聴いていて惹かれるところはあまりない。 確かにVドラムをギミック中心の飛び道具として使用したりしないところには、ドラマーとしてのセンスは感じるけど。 曲の最後はサウンドスケイプ。
  4. ” FraKctured ” は、本アルバムのハイライトの一つ。 フリップの日記によると、当初 ” 太陽と戦慄パート V ” とタイトルされていたが、マステロットの 「 ” Fracture ” に聴こえる 」 という進言により ” FraKctured ” に改題したとのこと。  どう聴いたところではじめからそうだろう、と思わず突っ込みを入れたくなる程、タイトルに異議はない。
    曲構成も静と動の対比が素晴らしいが、何よりもフリップ自身が難曲と認める程のギターのシーケンシャル・フレーズが凄まじく、且つその音もソリッドでとても格好良い。
  5. ” The World's My Oyster Soup Kitchen Floor Wax Museum ” はヴォーカル曲。 本作品におけるヴォーカル曲は、ダブル・トリオ・クリムゾン時代のヴォーカル曲と異なり、ビートルズとの類似を安易に指摘されるようなタイプのものはなく、演奏自体もハードなものが多い。 ただ本曲においては演奏の複雑さだけがそのまま提示されていて、聴いていてちょっと疲れる。 歪んだギター・ソロ、ピアノ音によるソロと、おきまりながらも楽しむことはできる。
  6. ” Larks' Tongues in Aspic - Part IV ” は、本作品のもう一つのハイライト。 本曲の素晴らしさは、リフを中心とした曲作りを挙げることができると思う。 重く格好良いリフを骨格とした曲構成、フリップが20年近く封印していたこのパターンの復活はとても嬉しい。
    曲自体は3つのパートに分かれている。 先ずリフを中心としたパート、次にリフにソリッドなシーケンシャル・フレーズが絡んだ後再びリフ中心に戻るパート、最後にリフに歪んだギター・ソロが絡むパート。 そして異常なまでのテンションを維持したままコーダへとなだれ込んでいく。
  7. ” Coda : I Have a Dream ” は、一度は本作品からオミットすることも検討された曲。 本作品発表前に、ブリューのサイトにその経緯が掲載されるとともに別バージョンをダウン・ロードすることができた。
    ダブル・トリオ・クリムゾン時代の捨て曲のようなアレンジの別バージョンの印象が強かったため、コーダとしてこの曲がクレジットされていてもあまり期待するところがなかったが、ハードで素晴らしい演奏により、コーダとしての必然性を充分に感じられるだけの素晴らしい曲となっている。 ” Larks' Tongues in Aspic - Part IV ” から ” Coda : I Have a Dream ” の流れは、プログレ云々を越えたロックのマスターピースだと思う。
  8. ” Heaven And Earth ” は、ProjeKct X 名義の曲。 ご丁寧に前曲から約60秒のブランク後に始まり、クリムゾン名義の曲との差別化をしている。
    前半と後半でVドラムによるループ(?)のパターンが変わるものの、基本的にはフリップ、ブリュー、ガンのソロが被さるだけ。 特に後半の遅いループに絡まるソロは退屈。