1991
Everything And Nothing : David Sylvian
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2000年にリリースされたデヴィッド・シルヴィアンの編集アルバムに、ティペットが参加している未発表曲 ”
Thoroughly Lost To Logic
” が収録されている。
ただ残念ながら、本楽曲は2人が真っ向から向かい合ったものではなく、ティペットのピアノをマテリアルとしてシルヴィアンがヴォーカルを被せたような作りである。
ケミストリーの発生云々以前に、そもそも2人が同時に取り組んだ楽曲であるかも怪しい。
坂本龍一、ホルガー・チューカイ、デレク・ベイリー、そしてロバート・フリップと、パートナーからの刺激を音楽創りに取り組むシルヴィアンも、ティペットとの共作は新たな創造に結びつかなかったのかもしれない。
(追加:2017年12月25日)
1993
The Bern Concert : Howard Riley Keith Tippett
リリースは1994年
Recorded Dec 8th 1993 Studio Bern Swiss Radio DRS
キース・ティペットとハワード・ライリーのデュオ3作品目。
本作品での二人は、お互いを挑発することも無視することもなく、協調し合うこともあれば一人しか演奏していない時もあり、どのようにしてこのようなアウトプットになったのか想像もつかない、特異な演奏を行っている。
固定カメラ一つの映像でも残っていれば二人の間で演奏中に何が生じたのかが判ったのかもしれないが、今はもうそれを期待することもでいない。
LP/CD化された以外にも、二人による演奏機会は多くあったと思われるが、そうした演奏機会を通じて過度に馴れ合うことなく切磋琢磨しあった成果が本作品に結集している。
本作品は傑作である。
(追加:2018年10月25日)
Twilight Etchings : Tippett ・ Kellers ・ Tipett
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Recorded during the "Total Music Meeting" on October 27, 1993 by Holger Scheuermann and Jost Gebers at the "Podewil" in Berlin.
Julie Tippett voice
Willi Kellers drums
Keith Tippett piano
ティペット夫妻が、ウィリ・ケラーというドイツ人ドラマーと共演した作品。
ティペットとドラマーの共演となると、先ずルイ・モホロを思い浮かぶ。 その中でも二人だけでレコーディングした 『 No Gossip 』 は、ピアノが打楽器であることに改めて気付かされるのだが、本作品でのティペットの演奏はそんなレベルではない。 まさに打楽器そのものである。
鍵盤を叩きつけるような演奏ばかりをしているのではないし、メロディだって演奏している。 それにもかかわらずティペットの演奏はいつも以上に歯切れよくパーカッシヴで、再生した途端に二人の打楽器奏者による世界が展開することになる。
ウィリ・ケラーに触発されたのか、あるいはルイ・モホロとの差異化を意識したのか判らないが、ティペットの演奏としてはレアなパターンであり、本作品以外でも二人の共演をもっと聴いてみたくなる。
(追加:2022年12月10日)
1994
Poem About The Hero : Mujician
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Keith Tippett - Steinway Grand Piano, wood blocks,
plastic pan pipe, pebble and maraca
Paul Rogers - Five string double bass
Tony Levin - Drums and percussion
Paul Dunmall - Soprano and tenor Saxophones
Recorded live February 5th, 1994
at The Michael
Tippett Centre, Bath, England
Mujician が1994年に行ったライヴを収録した作品。
1分強のインタールード的な曲から、30分超えの曲までバラエティに富んでいるが、曲の長短にかかわらず、どの曲でもひたすら4人の奏者がぶつかりあっている。
聴いていると、複数の怪獣同士が冒頭からラストまでただただ戦い続ける怪獣映画を観ているような気がしてくる。
勿論それだけだと飽きてしまう人もいるとは思うが、どうでもよい人間模様を絡めるくらいなら戦闘場面を増やして欲しい、と思う人もいるわけで、そういう需要に本作品は見事に応えている。
唯一の難点をあげるとすれば、会場の問題なのかマイクのセッティングの問題なのか判らないが、ティペットのピアノの音が奥に引っ込んでしまっている。
それだけは残念である。
(追加:2017年5月25日)
1995
Birdman : Mujician
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リリースは1996年
Paul Rogers Double Bass
Paul Dunmall Alto And Tenor Saxophones, Chinese Shenai
Keith Tippett Piano { Woodblocks, Pebbles, Chimes }
Tony Levin Drums, percussion
Recorded May 6th, 1995 At The Michael Tippet Centre, Bath, England
ティペットが参加しているミュージシャンの作品。
常々ジャズの人達にとってティペットがどのような評価を得ているのか気になっていたのだが、やはり注目されていないようだ。 本作の日本盤のジャズ寄りの人がライナーを書いているのだが、それによるとジャズ・メディアの中ではまるで注目されていないとのことだ。
ロック(というかクリムゾン)から流れてきた自分のような人間が聴いている一方、ジャズの人達には聴かれていない。 所謂ジャズのフィールドで活動している彼らにとって、こうした状況はどうなのだろうか。 少なくとも経済的にはかなり苦しいだろうと想像される。
長尺の曲を中心とした本作品も、いつもながらの緊張感を強いられる強烈な音の連続。
(追加:2007年9月15日)
Une Croix Dans L'ocean : Keith Tippett
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Keith TIppett : piano
Enregistre "LIVE" au l lieme FESTIVAL INTERNATIONAL DE MUSIQUE ACTUELLE DE VICTORIAVILLE le 21 mai 1995 par
ティペットのソロ・ライヴ。
毎度のことながら、圧倒される。 演奏する楽器はピアノだけ、トリッキーな演奏も交えるものの、基本的にはただただひたすら弾きまくる。 文字にしてしまうとそれだけのことなのだが、ワン・パターンに陥ることは全くなく、聴き入ってしまう。
一回のライヴで、ティペットは何曲、何時間位演奏するのだろうか。 本曲は50分弱だが、こんな曲を一度に2,3曲弾いたりは多分できないと思う。 それほどの凄まじさを感じる演奏である。
(追加:2009年10月10日)
MPUMI : Louis Moholo-Moholo meets Mervyn Africa, Pule Pheto & Keith Tippett
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リリースは2002年
Recorded September 1995 at Gateway Studios,Kingston, England
ルイ・モホロが3人のピアニストとデュオでレコーディングした作品。 キース・ティペットは3曲で演奏している。
ティペットのコメントによると、モホロとのデュオでのレコーディングは1980年の 『 No Gossip 』 以来とのことだが、同作での演奏と比べると散漫な印象が残る。 同作でのガチンコ度合いが高すぎたこともあるが、集中しきれていないところがあるように思える。
異なるピアニストとデュオでレコーディングするという企画はモホロにとっては魅力的だったかもしれないが、ティペットにしてみると他のピアニストを意識したというよりも、モホロとの世界に浸りきれなかったのかもしれない。
(追加:2022年12月10日)
1996
Couple In Spirit II Live At The Stadtgarten, Cologne : Keith And Julie Tippett
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リリースは1997年
Keith : piano, woodblocks, pebbles, maraca, bells
Julie : voice, thumb piano, recorder, wind chimes
キース&ジュリー・ティペットによるライヴ・アルバム。
これは素晴らしい作品である。 即興演奏であることは前作 『 Couple In
Sprit 』 と同じなのだが、ライヴという環境が良い方向に触発したのか、緊張感溢れる内容になっている。
2人による判りやすいコール&レスポンスはなく、お互いに常に対峙しあっている。
対峙しあってはいるが一方的に自分がやりたいことを投げつけあっているのではなく、絡み合っている。 このあたりのギリギリのバランス感覚が、本作品の最大の魅力である。
(追加:2017年3月10日)
1997
Baldik : Dean / Dunmall / Levin / Rogers / Roswell / Tippett
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Elton Dean Saxes
Paul Dunmall Saxes
Tony Levin Drums
Paul Rogers Bass
Roswell Rudd Trombone
Keith Tippett Piano
エルトン・ディーンとポール・ダンモールという2人のサックスと、Mujician が競演した作品。
エルトン・ディーンとキース・ティペットが一緒に演奏する、というのは魅力的なフレーズなのだが、一緒に演奏することによるケミストリーは感じられない。 感じられない、というよりもケミストリーの必要性がない、と言った方が的確なのだと思う。
一聴すればわかるように、凄まじいまでの破壊力を持つ作品である。 このクオリティは2人の作品のいつものことであって、2人が一緒に演奏する!、という聴く側の期待や思い込みなど、ましてや必要ない。
インプロを中心とした3曲とも長尺な演奏だが、聴き終えると1つの音の固まりを短時間にぶつけられたような疲労感を感じる作品である。
(追加:2012年12月10日)
Colours Fulfilled : Mujician
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リリースは1998年
Tony Levin - drums
Keith Tippett - piano [ woodblock, pebble ]
Paul Dunmall - tenor and soprano saxes, E♭ clarinet, bagpipes
Paul Rogers - double bass
Recorded at Gateway Studio, Kingston, UK May 18th 1997
Mujician が1997年に行ったライヴを収録した作品。
私は、キース・ティペットの2013年の来日公演を観る機会に恵まれた。
小さなライヴ・ハウスでのピアノ独演は、ティペットとピアノのとの対峙を目の当たりにすることができる素晴らしい機会であった。
あとはもう
Mujician のライヴを観たかった。 ある程度の決め事に基づくだろうインプロがどのような過程で構築されていくのか、その瞬間を目の当たりにしたかった。
大勢の観客数は期待できないと思うので興行的には厳しかったかもしれないが、本作品を聴いていると益々そう思えてくる。
プリペアード・ピアノの活躍度が目立つ作品ではあるが、勿論通常のピアノを弾きまくるティペットを堪能することができる。
(追加:2017年5月25日)
Friday The 13th : Keith Tippett
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Produced by Keith Tippett
Recorded on Friday the 13th, June, 1997 in Sendai Japan
キース・ティペットの初来日コンサートを収録したライヴ・アルバム。
50分弱の楽曲が1曲収録されているだけだが、とにかく凄まじい演奏。 インプロを中心とした50分もの曲を一人で演奏していれば、通常なら中だるみに近いスローなパートが差し込まれるのだろうが、ティペットはただただ、ひたすら弾きまくっている。
50分もの間、たった一人で緊張感を維持しながらこれだけの演奏を続けることができるのか不思議に思えてくる。
木片や石等をピアノの中に入れたプリペアード・ピアノによる偶発的な音や、サスティン・ペダルを踏みっぱなしにすることによる分厚い音などトリッキーな奏法も含まれているが、そのトリッキーさがだけが目立ったりしていないことが、この演奏の素晴らしさを物語っていると思う。
聞き流してしまうことなく、スピーカーの前でティペットに対峙してしまう名盤。
(追加:2003年3月10日)
1998
Mujician I & II Piano Solo : Keith Tippett
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Recorded On December 3rd And 4th, 1981 (Tracks #1,#2
and #5)
And on June 13th, 1986 (Tracks #3 and #4) In Berlin.
本作品はティペットがソロでリリースした「 Mujician
」三部作の最初の2作品を1998年にCD化したもの。 1,2,5が1982年にリリースされた 『 Mujician I 』
から、3,4が1986年にリリースされた 『 Mujician II 』 からで、4,5が短縮化されている。
『 Mujician II 』 のジャケットを、『 Mujician 』 の薄い紺色を使って再現したジャケットには、長めのコートを着たままピアノを演奏するティペットの姿が収められており、唯一無二の彼の演奏と見事にマッチしている。 作品トータルの完成度も非常に高い名盤だと思う。
(追加:2005年2月11日)
(変更:2018年8月25日)
Zen Fish : Dreamtime
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Roberto Bellatalla bass Gary Curson alto & soprano saxophones Nick Evans trombone Jim Le Baique drums Keith Tippett piano, woodblocks & pebbles, piano interior & maracca
Recorded at Gateway Studios, Feb 98.
ドリームタイムにキース・ティペットが参加している2作品目。
ドリームタイムの活動は不定期なものだと思うが、前作 『 Cathanger '86 』 のレコーディングから10年以上を経てるが大きな違いは見られない。
ティペットの活躍度も同じく高くなく、管楽器と絡み合う楽曲の中での演奏や ” Ornett's Nest ”
でのメランコリックなピアノ・ソロもあるのだが、前者では本気の格闘とは思えないし後者はティペットじゃなくてもよい演奏である。
Mujician
としての活動を別にすると、こうしたフォーマットでの演奏に対してのティペットの関心度は、この時期頃低くなっていたのかもしれない。
(追加:2021年2月10日)
1999
Bò kay La Vi-a : Francine Luce
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Francine Luce - voice, water on 5 & 10
Evan
Parker - tenor & soprano saxophones, water on 5
Claude Deppa -trumpet,
flügelhorn, water on 5
Paul Rutherford - trombone
Keith
Tippett - piano, music box
Paul Rogers - double bass
Louis Moholo -
drums, percussion
フランス出身のジャズ・シンガー、フランシース・リュース(多分)のソロ・アルバム。
彼女がどのような経緯でこのソロ・アルバムのリリースにまで至ったのかは判らなが、バックが凄い。
キース・ティペットがいて、ポール・ロジャース(ベースのね)、ルイ・モホロ、そしてエヴァン・パーカーという人選で、ボーカリストのデビュー・アルバムをレコーディングするという発想が出てきたところが凄い。
ただその結果として、リュースのヴォーカル・スタイルが正統派ジャズというよりフリキーなのが、彼女自身の資質なのか、それともこのメンバーに触発されたものなのかは判らなくなっている。
当然ながらキース・ティペットは弾きまくっており、ジュリー・ティペッツ以外のヴォーカリストとの絡みを珍しく堪能できる。
(変更:2019年12月10日)
2000
Two's and Three's : Elton Dean
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エルトン・ディーンが1989年にカセット・テープでリリースした 『 Duos 』 と 『 Trios』 を中心に編集した作品。
ティペットの演奏は、前者には1曲、後者には2曲収録されているが、残念ながら本作品には前者からの1曲、” K.T. ” のみが収録されている。
タイトルがそのまんまの ” K.T. ” は、8曲弱のデュオ演奏。
どちらかと言えばディーンのサックスが主体の楽曲で、その隙間をティペットが埋めていく展開。 ティペット中心に聴こうとすると、物足りなさが残る。
(追加:2017年9月25日)
Viva La Black Live At Ruvo : Keith Tippett, Julie Tippetts, Louis Moholo - Moholo & Canto Generàl
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リリースは2003年 Album
Keith Tippett
piano, conduction
Julie Tippetts Voice
Louis
Moholo - Moholo drums
with
Canto Generàl : Gianna
Montecalvo, Cinzia Eramo, Gabriella Schiavone, Teresa Vallarella, Loredana
Perrini, Maristella Schiavone voices
Vittorino Curci
alto sax
Roberto Ottaviano soprano sax, alto sax
Fabrizio Scrafile tenor sax
Felice Mezzina
tenor sax
Nicola Pisani baritone sax
Marco Sannini,
Luca Calabrese, Vincenzo De Luci, Vito Mitoli trumpets &
flugelhorns
Beppe Caruso, Lauro Rossi, Franco Angiolo, Michele Marzella
trombones
Giorgio Vendola, Francesco Angiuli acoustic
& electric basses
Livio Minafra piano, keyboards
Vincenzo Mazzone drums
Linückea recorded at Gateway Studios Kingston
3-2000.
Let The Music Speak recorded at Gateway Studios for BBC Radio
Mazz On 3
ティペット夫妻とルイ・モホロが南イタリアのイタリアのカント・ジェネラルと共演した作品。
複数のサックス奏者、トランペット&フルーゲルホーン奏者、トロンボーン奏者が在籍するカント・ジェネラルと共演した結果、キース・ティペット・グループやルイ・モホロ・オクテット、センティピード、はてはティペットやモホロが参加しているマーク・チャリグのソロ作品の楽曲が収録されており、キース・ティペットのジャズ・ロックど真ん中の時期の活動が再現されている。
もちろん、ニック・エヴァンス、マーク・チャリグ、ハリー・ミラー、そしてエルトン・ディーンもここにはいないが、それでもジャズ・ロック領域で演奏するティペットの魅力を堪能することができる秀作である。
(追加:2020年10月25日)