1971
If You Saw Thro' My Eyes : Ian Matthews
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イアン・マシューズのソロとしてのファースト・アルバム。
メロディは一貫して流暢で、70年代後期のソロのようなポピュラリティの高さは無いが、その分味わい深さがある。
そしてジャズというフィールドで主に活躍していたにもかかわらず、こうした傑作に参加する機会が与えられ程、当時のティペットが英国音楽シーンで注目を浴びていたことを端的にしめしている。
ティペットが参加しているのはギターとピアノのみの ”
Never Ending ” と、バンド編成の ” Southern Wind
” の2曲で、やはり前者でのギターやヴォーカルと絡むピアノの美しさに惹かれる。 後者も悪くないのだが活躍の場は少ない。
同じバンド編成の楽曲なら、大曲 ” Morgan The Pirate ” で彩りを添えるような演奏をして欲しかった。
(追加:2008年5月10日)
Dedicated To You, But You Weren't Listening : The Keith Tippett Group
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Keith Tippett, Piano/Hohner Electric Piano
Elton Dean, Alto/Saxello
Marc Charig, Cornet
Nick Evans, Trombone
Robert Wyatt, Drums
Bryan Spring, Drums
Phil Howard, Drums
Tony Uta, Drums/Cow Bell
Roy Babbington, Bass/Bass Guitar
Neville Whitehead, Bass
Gary Boyle, Guitar
キース・ティペット・グループの2nd。
Vertigoからのリリース、ロジャー・ディーンによるジャケット等プログレ・アイコンが集まっていることもあり、ソフト・マシーンもカンタベリーもわかっていない私のようなプログレ3級の人間でも知っているポピュラリティの高い作品である。
1曲目から明らかなようにエルトン・ディーン、マーク・チャリグ、ニック・エバンスの3管は強力で、ラッパ嫌い、ジャズ・ロック嫌いの人をも説得するだけの素晴らしい演奏である。 更にその3管の間を縫うように弾きまくるティペットも美しく格好良い。
『 Lizard 』
と同時期のリリースで、レコーディングもほぼ同時期に行われたものと想定されるが、各楽器の音色以外共通点は少ない。 ティペット以外のチャリグ、エバンスがソリストとしての役割を与えられた
『 Lizard 』
と異なり、アンサンブルが強調されていることがその理由と思われる。
ロックだ、ジャズだ、ジャズ・ロックだといったカテゴライズなどどうでも良くなるほどのノン・ジャンルの傑作。
(追加:2002年9月25日)
1969 : Julie Driscoll
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ジュリー・ティペットが、キース・ティペットと結婚する前のジュリー・トリスコール名義で発表したソロ・アルバム。
ジャズ・ロック+ジュリーのヴォーカルによる曲と弾き語りの曲に大別できるのだが、やはり魅力があるのは前者である。 その中でも特に、バックが殆どキース・ティペット・グループのメンバーでしめる ” A New Awakening
” と ” Walk
Down ” の素晴らしさが著しい。
本作品と前後してキース・ティペット・グループは傑作 『 Dedicated To You, But You Weren't
Listening 』 をリリースしており、その勢いがそのまま反映されたものと思われる。
ジュリー・ドリスコールは、後にジュリー・ティペット名義で 『 Sunset Glow 』
をリリースするが、本作と構成が良く似ており、どちらも素晴らしい内容である。
(追加:2017年3月10日)
1972
Blue Print : Keith Tippett
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Producer Robert Fripp
キース・ティペット名義の初アルバムであり、且つこの後の Ovary Lodge
としての活動に繋がっていく作品。
キース・ティペット・グループでは特に管楽器系のアンサンブルに事前の約束事を見出すことができたが、ここで聴くことができる演奏にはその要素を見出すことは難しく、良い意味で整合感が全く無い作品となっている。
しかも出音の静騒とは関係なく、提示されている音は果てしなく過激で、ティペットのピアノ・ソロ・アルバムと同じく聴き終えると疲労感を覚える程の作品である。
プロデューサーとしてのフリップが、この手の音をまとめるのに長けているとは思えず、むしろ本作品から得たものを、この後の 『 Larks'
Tongues In Aspic 』 に活かしていると言って過言ではない。
(追加:2016年5月10日)
1973
Ovary Lodge : Ovary Lodge
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Keith Tippett, Piano ( Zither on Tropic Of Capricorn )
Roy Babbington, Bass
Frank Perry, Percussion ( Piano Interior on Tropic of Capricorn )
Producer Robert Fripp
キース・ティペット名義の 『 Blue Print 』 に続く作品と位置づけられる
オヴァリー・ロッジ名義の作品。
ジャケットにフィーチャーされているフランク・ペリーのパーカッション・セットの圧倒されるほどの物量から想像できる通り、ティペットのピアノとのインタープレイを堪能することができる。
個々の打音の激しさに依存するのではなく、ティペットとペリーが真摯に向き合ったインプロの成果が、凄まじい情報量を提供する作品として提示されている。
そして、ミックスによるものなのか私のオーディオ・システムのプアな再生能力によるものなのか、多分その両方にも問題あると思うのだが、ピアノの音とパーカッションの音が区別つかなくなることがあり、それはそれで本作品の素晴らしさを強調している。
フリップがプロデューサーとして関与しているが、多分名義貸し以上の貢献は全く無いはず。
(追加:2016年5月10日)
1974
Innovation : Amalgam
リリースは1975年
Trevor Watts - alto saxophone
John Stevens - drums
Kent Carter - bass
Lindsay Cooper - bass
Keith Tippett - piano
Terri Quaye - congas
Recorded At Chipping Norton Studios, Oxfordshire 12.11.74.
トレバー・ワッツを中心に活動していたアマルガムの作品に、キース・ティペットが参加している。
1970年代前半におけるティペットのジャズ・ロック・バンドとしての活動は、キース・ティペット・グループ、オヴァリー・ロッジ、そしてエルロン・ディーンズ・ナインセンスがあるのだが、これらのバンドと異なる人脈の中でティペットは演奏していることになる。
サックスのメロディやコンガの使い方にユーモラスを感じる一方、総じて緊張感はない。 勿論ティペット自身はいつも通り弾きまくっているのだが、この人脈での演奏にティペットとして納得感がなかったのか、この後のリリース作品は限られている。
リリースされていないだけのライヴ音源があるのなら、もう少し聴いてみたいとは思う。
(追加:2022年6月10日)
Dance : Arthur Brown
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アーサー・ブラウンが、キングダム・カム解散後に発表したソロ・アルバム。
セールス的には多分殆ど成果を出すことができなかった作品だが、内容は判りやすくプロモーションのやり方次第ではもう少し何とかなったのではないかと思える内容である。
ただ総じてシンセサイザーの音色と音量がバックの演奏と馴染んでおらず、一聴するとそれが面白く感じられるものの、聴き続けていると違和感だけが残ってしまう。
「 t 」 が一文字少なくクレジットされているティペットは、ヴォーカルのバック、インスト・パートと活躍場面が多く与えられている。
特にヴォーカルとの絡みで聴かせる演奏は、「もちろんこんなの簡単にこなせるけど、興味ないだけだよ」という余裕さえ感じさせられる。
(追加:2018年5月10日)
TNT : Stan Tracey & Keith Tippett
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リリースは1976年
Keith Tippett ( Piano ) Left Channel
Stan Tracey (
Piano ) Right Channel
Recorded live in London at The Wigmore Hall 1974 December 21
2013年に亡くなったスタン・トレイシーと、キース・ティペットによるデュオ・アルバム。
左右にはっきりと振り分けられた編集がなされているが、集中して聴いていないとソロ演奏なのか、デュオ音声なのか、それとももっと大勢のピアノ奏者で同時に演奏しているのか判らなくなる程、一枚の音の壁が攻めてくるような印象がある。
お互いの様子を伺っているようには見えないが、相手を無視しての演奏もない。
本作品がリリースされた背景も判らないが、20歳も年が違う2人がライヴ・レコーディング一発で、こうした作品を生み出せるところに只々驚いてしまう。
(追加:2019年3月10日)
1975
Listen / Hear : Nicra
Nick Evans Trombone
Radu Malfatti Trombone
Keith Tippett piano
Buschi Niebergall bass
Makaya Ntshoko drums
This music was recorded by Österreichischer Rundfunk, Innsbruck, Austria on 22 October 1975
後にエルトン・ディーンズ・ナインセンスでも共演することになる、ニック・エバンスとラドゥ・マルファッティによる作品。
トロンボーン奏者2人という編成は、複数種の管楽器がフィーチャーされているエルトン・ディーンズ・ナインセンスと比べると多彩さには欠けるが、単調な所はなく長尺の2曲を一気に聴かせてくれる。 アルバムとしては本作品しかリリースされていないが、ライヴ活動は他に行っていなかったのだろうか? 他にも音源が残っているのなら是非聴いてみたいと思わせるだけの内容である。
ジャズ・ロックの領域でのキース・ティペットの演奏は相変わらず素晴らしく、管楽器と見事に対峙している。 ただ尺の都合上しょうがなかったのかもしれないが、” Listen ” を分割しているのがティペットによるピアノ・ソロの最中ということだけが悔やまれる。
(追加:2021年7月10日)
Which Way Now : Harry Miller's ISIPINGO
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リリースは2006年
Nick Evans trombone
Mongezi Feza trumpet
Harry Miller bass
Louis Moholo drums
Mike Osborne alto sax
Keith Tippett Piano
Recorded at Post-Aula, Bremen, Germany on November 20, 1975.
ハリー・ミラーズ・イシピンゴ名義の作品。
3管+ピアノ+リズム隊という編成はキース・ティペット・グループと同じなのだが、トローンボーン、トランペット、サックスの活躍度が高くティペットのピアノが目立っていないことで、印象は大きく異なる。
長尺ながら勢いがある楽曲ばかりなので、ここにティペットのピアノが縦横無尽に絡んだらとんでもないことになっていたと思えるだけに、そうしなかった理由がよく判らない。
もしかしたら、ピアノの音自体が小さいのもミキシングの問題ではなく、そもそもステージ上の音のバランスが悪いことに起因しているのかもしれない。
(追加:2020年3月10日)
Sunset Glow : Julie Tippetts
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ジュリー・ティペッツがキース・ティペットと結婚後にリリースしたソロ・アルバム。
ジャズ・ロック・バンドをバックに演奏した演奏、弾き語り、そしてティペットとのデュオと、良い意味で想像しうるパターンを全て出している作品。
こういう作品に対して「やはり夫であるティペットとのデュオ ” Shifting Still ” が一番素晴らしい」と言ってしまうのが一番簡単なのかもしれないが、マーク・チャリグ、エルトン・ディーン、ニック・エヴァンスといったホーン・セクションが入った
” Mind Of A Child ” や ” Ocean And Sky ( And Questions Why ? ) ” といった楽曲の方が、素晴らしかったりする。
この辺り、音楽に対する二人のストイックさが現れているのかもしれない。
なんて、結論も安易かもしれないけど...
(追加:2012年7月25日)
Ovary Lodge : Ovary Lodge
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リリースは1976年
Keith Tippett Piano, Harmonium, Recorder, Voice, Maracas
Harry Miller Bass
Frank Perry Percussion, Voice, Hsiao ( Chinese bamboo flute ), Sheng
( Chinese bamboo mouth organ)
Julie Tippetts Voice, Sopranino Recorder, Er-hu ( two-stringed
Chinese violin )
Live recording at Nettlefold Hall, London SE17, 6 August 1975
オヴァリー・ロッジの、前作と同じくバンド名をタイトルにしたライヴ・アルバム。
ライヴ・アルバムであること、ベース奏者がハリー・ミラーに変わったこと、ジュリー・ティペットが参加していることが前作との違いなのだが、キース・ティペットとフランク・ペリーの絡みが作品の根幹を成していることは変わりない。
にもかかわらす、ライヴを収録した本作よりスタジオ作品の前作の方が完成度が高いことが興味深い。
ライヴでのインプロがそのまま収録された本作の方が、緊張感は高いはずなのだが何かが足りない。 勿論これはキース・ティペットの作品に求めるレベルが高すぎることに起因するのだが、一方でインプロであることを徒に礼賛することなく正しく感じた事実である。
(追加:2016年5月10日)
1976
Oh! For The Edge : Elton Dean's Ninesense
Elton Dean - Alto Sax, Saxello.
Alan Skidmore -
Tenor Sax.
Harry Beckett - Trumpet, Flugelhorn.
Mark Charig -
Trumpet, Tenor Horn.
Nick Evans - Trombone.
Keith Tippett - Piano.
Harry Miller - Bass.
Louis Moholo - Drums.
Recorded Live At Grass Roots Jazz Club At The Ido Club, Ido Oxford Street, London W.I. On Monday, March 22 1976.
エルトン・ディーンズ・ナインセンスのファースト・アルバム。
ディーン自らのライナーには、「1969~70年に自分達(キース、チャリグ、ニック、そして自分)が参加していた六重奏団の拡張版で、スピリットは似ている」と記載してあるのだが、この六重奏団というのは当然キース・ティペット・グループということになる。
とういことで本作品は、アンサンブルとソロのぶつかり合いが交差する激しいジャズ・ロックとなっている。
時折差し込まれる判りやすい美メロさえも、毒っけたっぷりで、緊張感を正しく強いられる感じがする。
バンド名に自分の名前が有る無しなど関係なく、キース・ティペットはピアノを弾きまくっている。
ジャズ・ロック系の作品を多く残した70年代の作品の中でも、本作品でのティペットの演奏は秀逸である。
(追加:2018年6月25日)
They All Be On This Old Road : EDQ
リリースは1977年
Elton Dean alto sax, saxello
Keith Tippett piano
Chris Lawrence
bass
Louis Moholo drums
Recorded live at the Seven Dials, Shelton Street, London WC2 on 18 November 1976
エルトン・ディーンが、カルテットで演奏したライヴを収録した作品。
ジョン・コルトレーンの ”
Naima ” や、コルトレーンやソニー・ロリンズも取り上げたジャズのスタンダード( ” Nancy ( With The Laughing
Face ) ” と ” Easy Living ” が演奏していること、そして 「 They All Be On This Road 」
というタイトルから、正統派ジャズ・カルテットを意識した作品と思われる。
そうした趣旨から本作品の中心奏者はエルトン・ディーンとなる。
サックスを主としたカルテットでのピアノ奏者の標準的な演奏というのがどういうものか判らないが、キース・ティペットの演奏は目立たない。
ディーンとティペットの火花を散らすようなソロの応酬が楽しめないのは残念であるが、これはこれで珍しい演奏を楽しむことができる。
(追加:2017年9月25日)
They All Be On This Old Road The Seven Dials Concert : EDQ
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リリースは2021年
Elton Dean alto sax, saxello
Keith Tippett piano
Chris Lawrence
bass
Louis Moholo-Moholo drums
Tracks 3-8 issued on LP in 1977 as OG410.
Tracks 1,2,9 & 10 previously unreleased.
1977年にアナログ・リリースされた EDQ ( Elton Dean Quartet ) の 『 They All Be On This Old Road 』 は、正統派ジャズ・カルテットを意識した作品であった。 一方、当日のライヴ演奏曲を追加収録して2021年にCD化した本作品は、その印象が大きく異なっている。
追加された4曲の中にもジャズ・スタンダードの ” Here's That Rainy Day ” が収録されてはいるのだが、冒頭の ” Edeeupub ” とラストの ” Echoes ” の印象があまりにもジャズ・ロックで作品全体の印象を変えてしまっている。
両曲ともキース・ティペットの活躍度は高く、「ドラムの音の隙間から湧き出てくるようなピアノ」という表現は音楽的には正しくないのだろうが、そうとしか聴こえない演奏を繰り広げている。
(追加:2023年4月25日)
1977
Happy Daze : Elton Dean's Ninesense
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Elton Dean : Alto Sax, Saxello
Alan Skidmore :
Tenor Sax
Harry Beckett : Trumpet, Flugelhorn
Marc Charig : Cornet,
Tenor Horn
Nick Evans : Trombone
Radu Malfatti :
Trombone
Keith Tippett : Piano
Harry Miller : Bass
Louis Moholo :
Drums
Recorded At Redan Recorders London W.2. On July 26. 1977
エルトン・ディーンズ・ナインセンスのセカンド・アルバム。
今回のライナーにもわざわざとナインセンスが、「1969/1970年のキース・ティペット・グループの精神的後継者」と記載されており、実際その音の肌触りは
『 You Are Here ... I Am There 』 や 『 Dedicated To You,
But You Weren't Listening 』 と似ているところがある。
などと簡単に記載してみたが、この2作と似ているということは、それだけで大傑作ということである。
キース・ティペット・グループの作品程のポピュラリティは獲得していないものの、70年台後半においてもこれだけのテンションを保つだけのケミストリーが、このメンバーの間であったものと思わる。
一方このライナーには、本作品が Bracknell Jazz Festival から委託され、The Arts Council Of Great
Britain から基金が提供されたと記載されている。
つまりこれだけの演奏を披露する機会とLPとして発表するためには、金銭的支援が無いと成り立たなかったということである。
ミュージシャンが、所謂ジャズ・ロック、フリー・ジャズを演奏するだけでは生活が成り立たないだけではなく、そもそも演奏する機会に恵まれないことを、本作品は明らかにしている。
70年台後半においてである。 中々考えさせる作品である。
(追加:2018年6月25日)
Cruel But Fair : Hopper / Dean / Tippett / Gallivan
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Hugh Hopper : bass
Elton Dean : alto saxophone & saxello
Keith Tippett : piano
Joe Gallivan : drums, percussion & synthesizer
ヒュー・ホッパー、エルトン・ディーン、キース・ティペット、ジョー・ギャリヴァンのカルテットによる作品。
前3人の名前から思いっきり期待されるジャズ・ロックな楽曲もあるが、もっと混沌として無秩序な音も提示されたりする。
そして凄いのがその「混沌として無秩序」なことが、「勢いだけで制作して未整理」なのではないことである。
ド真ん中のジャズ・ロックが苦手な人にも、本作は好まれるかもしれない。
他流試合にも強いキース・ティペットの凄さは本作でも充分に発揮されているのだが、ギャリヴァンの演奏するシンセサイザーと絡む生ピアノというのも聴きどころである。
(追加:2016年12月25日)
Pipedream : Mark Charig with Keith Tippett, Ann Winter
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Mark Charig cornet, tenor horn
Keith Tippett organ, zither, piano, voice, bell
Ann Winter voice, bell
Recorded on 14 and 15 January 1977 at St. Stephen's Church, Southmead, Bristol
マーク・チャリグ名義の作品。
オルガンを使いたい、というキース・ティペットのアイディアに基づき教会でレコーディングされている。 従ってティペットのメイン楽器もピアノではなくオルガンという珍しい作品となっている。
細かく弾きまくらないオルガンをベースに、教会特有のエコーがかかったコルネットとアルトフォンが絡むという珍しい作品となっている。 勿論ティペットがピアノの連打、弾きまくりを聴きたいという欲求もあるが、唯一無二の世界が展開されておりアルバム全体の味わいは深い。
(追加:2021年7月10日)
Supernova : Stan Tracey - Keith Tippett
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リリースは2008年
Keith Tippett - piano ( right channel )
Stan Tracey
- piano (
left channel )
Recorded live at the ICA, London on 21st August 1977
スタン・トレイシーとキース・ティペットによる2枚目のデュオ・アルバム。
前作での1974年のライヴから3年経ているわけだが、メディア化されていないだけでその間にも二人での演奏の機会はあったものと思われる。
ただそうした経験を重ねたことが演奏に反映しているということはなく、前作同様ガチンゴで演奏に向かい合っている。
クレジットから左右のチャンネルが前作と反対になっていることがわかるが、そもそも二人の演奏が塊になって出てきているので、その差を感じることはない。
デュオでの成果を踏まえ、ティペットは全ての楽器の奏者を2人揃えた、Keith Tippett's ARK による 『 Frames 』
で、スタン・トレイシーに起用することにしたのだと思う。
(追加:2019年3月10日)
1978
In Conference : Harry Miller
Harry Miller bass
Willem Breuker
soprano, tenor saxophones, bass clarinet
Trevor Watts
alto, soprano saxophones
Julie Tippetts voice
Keith Tippett piano
Louis Moholo
drums
Recorded on 27 January 1978 at Redan Recorders, London W2.
ハリー・ミラー名義の作品。
レコーディングは、ルイ・モホロ・オクテット名義の作品 『 Spirits Rejoice ! 』
と同じ1978年1月にロンドンで行われており、一連のイヴェントの中で演奏されたものと思われる。
B面での管楽器とジュリー・ティペッツのヴォーカルのダブル・リードに絡むキース・ティペットのピアノも良いが、アップテンポな ”
Orange Grove ” でリズム隊をバックに演奏するのソロ・パートがとても良い。
ティペットにしては珍しいと言って良いのか判らないが、跳ねるように楽しげに演奏しており、ティペットの柔軟性が見事に表現されている。
(追加:2020年3月10日)
Frames Music for An Imaginary Film : Keith Tippett's Ark
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Keith Tippett - piano, harmonium
Stan Tracey - piano
Elton Dean - alto sax, saxello
Trevor Watts - alto & soprano saxes
Brian Smith - tenor & soprano saxes, alto flute
Larry Stabbins - tenor & soprano saxes, flute
Mark Charig - trumpet, small trumpet, tenor horn, Kenyan thumb piano
Henry Lowther - trumpet
Dave Amis - trombone
Nick Evans - trombone
Maggie Nicols - voice
Julie Tippetts - voice
Steve Levine - violin
Rod Skeaping - violin
Phil Wachsmann - electric violin, violin
Geoffrey Wharton - violin
Alexandra Robinson - 'cello
Tim Kramer - 'cello
Peter Kowald - bass, tuba
Harry Miller - bass
Louis Moholo - drums
Frank Perry - percussion
ティペットによる2枚組ジャズ・オーケストラ。
これだけの大作を作曲・アレンジしたティペットのミュージシャンとしての底力には圧倒される。 似たコンセプトの作品に
Centipede 名義の 『 Septober Energy 』
があるが、破壊力は本作が遙かに上回っている。
大勢の奏者を使ったこうした作品を世に問い続けるには、準備期間を含め相当のお金が必要なはずで、セールス面で成功した経験のないティペットには厳しいのかもしれない。 ピアノ・ソロや小人数の
Mujician
での作品も素晴らしいが、もし金銭面の問題でティペットが本作のような大作をリリースし続けることができないのであれば、とても残念なことである。
どこかに良いスポンサーはいないものだろうか。
(追加:2008年6月10日)
Sprits Rejoice ! : Louis Moholo Octet
Louis Moholo :
Drums
Evan Parker tenor sax
Kenny Wheeler
trumpet
Nick Evans trombone
Radu Malfatti
trombone
Keith Tippett piano
Johnny Dyani
bass
Harry Miller bass
Recorded on 24 January 1978 at Redan Recorders, London W2.
ルイ・モホロによるオクテットでの作品。
殆どの曲が、メイン・テーマ → フリー・パート →
メイン・テーマ、という展開で、全体像が掴みやすい作品である。
キース・ティペットはつくづく自己主張が激しいミュージシャンだと思う。
演奏者が少ない時やソロ作品においてだけでなく、本作品のように演奏者が多い場合でも弾きまくっていることがよく判る。
本作品においては、フリー・パートでは管楽器と激しく渡り合うのも凄いが、メイン・テーマに絡みまくる演奏を聴いていると素晴らしいミュージシャンだなと思わずにはいられない。
(追加:2018年3月25日)
1979
The 100 Club Concert 1979 : Elton Dean's Ninesense
CD One : First Set
CD Two : Second Set - Augmented by Jim Dvorak, trumpet
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リリースは2000年
Elton Dean : alto sax, saxello
Alan Skidmore :
tenor, soprano saxes
Marc Charig : cornet, tenor horn
Harry Beckett
: flugelhorn, trumpet
Nick Evans : trombone
Radu Malfatti : trombone
Keith Tippett
: piano
Harry Miller : bass
Louis Moholo : drums
The 100 Club, 100 Oxford St, London, England ~ March 5th 1979
エルトン・ディーンズ・ナインセンスの1979年のライヴを収録した作品。
同バンドのライヴの全容を捉えた作品は、本作品が初めてということになるのだが、それに寄与しているのが、SONY の
TC-D5M、通称「デンスケ」の導入である。 ライナーの表紙に同機の写真が大きく鎮座している。
ただ、同機なのか使用したマイクロフォンの性能によるのか判らないが、キース・ティペットのピアノの録音状態が良くない。
クレジットにも、ステージの左側、バンド全体から離れた所に位置するピアノの音が非常に遠く感じてしまう。
ソロ回しが1曲毎にクレジットされているのが判りやすいのだが、一方で何だか判らないけど凄くて圧倒されてしまう、という楽しみ方ができなくなるので、私はクレジットを見ないで聴くようにしている。
(追加:2018年6月25日)
On Italian Roads Live In Milan 1979 : Elton Dean Quartet
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Elton Dean - Saxophones
Keith Tippett - piano
Harry Miller - double bass
Louis Moholo-Moholo - drums
Recorded 25th February 1979, Teatro Cristallo, Milan, Italy.
Elton Dean Quartet として1979年にイタリアで行ったライヴを収録した作品。
1976年のライヴ作品 『 They All Be On This Old Road 』 と同じ Elton Dean Quartet 名義ではあるが、もう全く別グループによる演奏と言って良い程の違いがある。
同作と違いジャズ・スタンダートのカヴァーはなく、Elton Dean Quintet の ” Oasis”、Soft Heap の ” Fara ”、Elton Dean Quartet の ” Dede-Bup-Bup ”、複数名義での 『 El Skid 』 の ” That's For Cha ”、そしてElton Dean Ninesense の ” Seven For Lee ” とディーンのオリジナルで構成されているということもあるが、ジャズ・ロックど真ん中の演奏が続く。
発掘音源であるが故に音質的に厳しい部分もあるが、それでもキース・ティペットのピアノは存分に味わうことができる。 好みの問題以外の何物でもないが、『 They All Be On This Old Road 』 よりも本作品の方が楽しめる。
(追加:2023年4月25日)
1980
Boundaries : Elton Dean Quintet
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Elton Dean saxello, alto saxophone
Mark Charig cornet
Keith Tippett piano, marimba, voice, bottle
Louis Moholo drums
( Sonor )
Marcio Mattos bass
Recorded February 1980 at Tonstudio Bauer, Ludwigsburg
エルトン・ディーンが、クインテットで演奏したスタジオ録音作品。
カルテットで演奏した EDQ
では、ジャズのスタンダード曲を取り上げる等エルトン・ディーン流の正当ジャズへの取り組みが試みられていたのに対し、本作品はフリー・ジャズやジャズ・ロック。
つまり、管楽器がエルトン・ディーンのサックスとマーク・チャリグのコルネットの2つだけになったエルトン・ディーン・ナインセンスである。
よってティペットの煽りまくり弾きまくりのピアノを充分に堪能することができる。
更に、スタジオ録音であるということと管楽器が少なくなったことにより、ティペットのピアノが埋もれることなく再現されているのが嬉しい。 また、”
Out Of Bounds ” では、ティペットによるマリンバの演奏と雄叫び(「voice」とはクレジットされているが)を確認することができる。
(追加:2017年9月25日)
No Gossip : Keith Tippett & Louis Moholo
リリースは1982年
Keith Tippett - piano & Louis Moholo - drums
Recorded during the " Workshop Freie Musik " March 20th and 23rd, 1980 at the " Academy of Arts", Berlin
キース・ティペットとルイ・モホロによるデュエット・アルバム。
モホロが南アフリカの出身であることを踏まえると、各曲のタイトルは相当の思いを込めてつけられたものと思われる。
1,4曲目がティペット、2,3曲目がモホロによる楽曲とクレジットされているが、どちらかが主導を取っているということはなく、生ピアノと生ドラムという打楽器同士のぶつかり合いがひたすら続く。
ジャケット裏にステージの写真が掲載されているのだが、お互いを見合えるような近距離にセッティングされており、正にガチンコの勝負であったことがわかる。
本作品は1980年に行われたベルリンでのワークショップ、多分フェスティバルで行われた演奏を収録している。
こうしたフェスティバルでは、メンバーを入れ替えながら多くの演奏が繰り広げられたはずで、そんな中から二人の素晴らしい演奏が作品化されたことは貴重である。
(追加:2018年3月25日)